観測・実験・モデルで伝える気象教育 気象ブックス048


978-4-425-55471-3
著者名:榊原 保志 著
ISBN:978-4-425-55471-3
発行年月日:2023/12/18
サイズ/頁数:A5判 224頁
在庫状況:在庫有り
価格¥2,420円(税込)
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日常もっとも身近な自然現象でもある「気象」の教育について、観察や実験の方法、有用性を紹介するとともに、実施例、実際の児童・生徒・学生の反応などをまとめています。気象教育に携わる教師、志す教職課程の学生等にとって、児童・生徒の興味を喚起し学びを深めさせるための手引きとなる実用書です。



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【はじめに】

近年、自然災害が毎年のように起こっている。火山の噴火、地震・津波、台風などの地学的自然現象によるものである。自然現象の仕組みを理解することは、自然災害から身を守る基礎になる。特に、気象は火山噴火や地震発生と比べ、予測精度が高いので、天気予報・気象警報を上手に利用し、自分の身を守るという防災・減災が可能といえる。その基礎となるのが気象の知識である。人間を含む生物の地球環境とのかかわりを考える時にも、気象の知識は不可欠である。
本書は、教育学部や教職課程に在籍する学生や教育現場の教師を対象として、気象の授業をいかに魅力的にするかについて書いた。学校教育では、理科の科学的見方、考え方を働かせ、身近な気象の観察などを行い、その観測記録や資料を基に気象要素と天気の変化に着目しながら天気変化や日本の天気の特徴を、大気中の水の状態変化や大気の動きと関連付けて理解させる。さらに、観察、実験などに関する技能を身に付けさせ、思考力、判断力、表現力を育成することがねらいである。
児童・生徒に理科が好きな理由を尋ねると、観察、実験があるから、と答えることが多い。観察、実験などの活動は児童・生徒が自ら目的、問題意識をもって意図的に自然の事象に働きかけていく活動である。そこで得られた結果を比較することで、問題を見いだしたり、既習内容と関連付けて根拠を示すことで課題の解決につなげたり、原因と結果の関係といった観点から探究の過程を振り返ったりすることが考えられる。そこで、気温、湿度、風向・風速(風力)、気圧などの気象観測の授業について取り扱った。気象は、児童・生徒の観測記録だけでは調べられないスケールが大きい現象が多い。モデル実験で調べる授業についても取り上げた。また、気象災害を取り扱った授業も取り上げた。防災教育は社会科、保健体育、家庭科などでも取り組まれているが、本書では、気象災害に限定し自然災害の仕組みを理解させるという視点で取り扱った授業を紹介する。
一方、観察、実験の器具が十分に揃っていない学校が多い。教育現場は予算が十分にあるわけではないので、本書で紹介した教材は身近に手に入るものを利用した自作教材である。教材の作り方、教材を利用した授業展開の例などを紹介した。小中学校の気象学習を念頭に書いたが、高等学校地学の探求学習に役立つ内容も含まれている。
本書が読者の興味を引き、授業づくりの参考になれば幸いである。

2023年10月
榊原 保志

【目次】

第1章 学校における気象教育  1.1 気象教育の目的と目標
 1.2 小中学校で学ぶ気象の内容
 1.3 小中学校における気象単元の実験
 1.4 気象観測の目的と課題
 1.5 地学教育の指導の実情と課題

第2章 気象観測(気温・湿度)  2.1 気温観測の準備と方法
 [実験装置・モデルの作り方1]放射除け
  コラム1:水銀温度計、標準温度計の使用について
  コラム2:温度計の検定:Excel グラフの作成の仕方と回帰線
 2.2 校舎内の鉛直気温分布の実態
 2.3 校舎内の鉛直気温分布を調べる授業(中・高・大)
 2.4 地域の気温分布を調べる実習(中・高・大)
 2.5 乾湿計で湿度を観測する授業(中・高・大)

第3章 気象観測(風向・風速(風力)・気圧)  3.1 吹き流しや線香の煙を利用した風向・風力の観測準備と方法
 [実験装置・モデルの作り方2]吹き流し風向風力計
  コラム3:吹き流しと線香の煙のたなびき方と風速
 3.2 校庭で風向・風力を調べる授業(中・高・大)
 3.3 校舎内の気圧の鉛直分布の特徴の研究
 3.4 簡易気圧計を用いて気圧の変化を調べる授業の準備
  コラム4:気圧・気温の変化に伴う簡易気圧計の水面差
 [実験装置・モデルの作り方3]簡易気圧計
 3.5 気圧の変化を調べる授業(中・高・大)

第4章 気象観測(雲)  4.1 雲の観察
 4.2 雲の観察の実習方法(小・中・高・大)
 4.3 心得ておきたい雲に関する内容
 [実験装置・モデルの作り方4]雲のでき方の実験装置
 4.4 雲の野外学習を補足する授業(小・中・高・大)
 [実験装置・モデルの作り方5]雲模型
  コラム5:山で雲の観察をする実習

第5章 雲の発生モデル実験  5.1 日本の気象に関わりのある海洋
 5.2 冬季季節風と日本周辺海上に発生する筋状雲
 5.3 筋状雲を発生させるモデル実験
 [実験装置・モデルの作り方6]筋状雲の実験装置
 5.4 日本海と大陸を再現したモデルで雲を観察する授業(中・高・大)
  コラム7:凝結核

第6章 教えにくい単元「大気中の水蒸気の変化」  6.1 気温と飽和水蒸気量の関係
 6.2 気温と飽和水蒸気量の関係を調べる授業(中・高・大)
  コラム89:コルクボーラーの使い方
 6.3 ピンポン球を用いて気温と飽和水蒸気量の関係を理解するモデル
 [実験装置・モデルの作り方7]水蒸気柱モデル
 6.4 気温変化に伴う水蒸気から水滴への状態変化を考える授業(中・高・大)
 6.5 カードゲームを用いて水循環を理解する授業(小・中・高・大)

第7章 気象災害と防災教育  7.1 防災情報
  コラム9:スマホで気象情報・防災情報を調べよう
 7.2 気象災害と台風
 7.3 台風の学習
 7.4 台風と高潮
 7.5 台風の進行に伴う風向変化を表す教材
 [実験装置・モデルの作り方8]風向磁針モデル
 [実験装置・モデルの作り方9]台風モデル
 7.6 台風通過に伴う高潮発生の仕組みを理解する授業(高・大)
  コラム10:線状降水帯とは
 7.7 ネパールで見られる自然災害~氷河湖決壊洪水
 [実験装置・モデルの作り方10]氷河湖決壊洪水モデル
 7.8ネパールの中等学校での氷河湖決壊洪水の仕組みを理解する授業(中・高・大)
  コラム11:授業以外での学びの博物館の利用



この書籍の解説

義務教育での理科の授業で楽しかったのは、何といっても実験や観察です。試験管やビーカーで色々なものを混ぜてみたり、校庭の草花や虫を観察したり、屋上で雲を眺めたりと、「覚えなければならないこと」から少し離れた楽しい時間は、子ども時代の好奇心を育ててくれたように思います。こうした授業を成立させるために、学校の先生たちが様々な努力を重ねていたことを知ったのは、だいぶ大きくなってからでした。
当社は気象関係の書籍を出していますので、気象に関する授業に注目してみることにします。一定以上の年齢の方がまず思い浮かべるは、学校の片隅の芝生エリアにある百葉箱ではないでしょうか。中には温度計や湿度計が入っていて、屋根には風速計がついていましたが、理科の授業で中身を見るまでは、何に使うのか知りませんでした。今でも現役で使われていますが、百葉箱がない学校も増えているそうですね。
こうした計測機器や、先生手作りの実験道具・観測道具を使って、児童・生徒たちは気象について学んできました。今回ご紹介する『観測・実験・モデルで伝える 気象教育』は、地球規模のスケールである気象現象を、観測データから傾向をつかんだり、日常で出会うある場面から切り取ったり、実験器具の中で起こる現象から想像したり、様々な方向から子どもたちに理解してもらえるよう、経験豊かな著者が工夫を凝らしました。気温・風・雲の観測と、雲の実験、大気中の水蒸気の変化や防災教育など、次の授業から使えそうなヒントが満載です。
教職を目指す学生をはじめ、現役の教師の方々、教育を支援する方々におすすめの書籍です。学習指導要領に従い各段階で教えるべき事項を押さえつつ、子どもたちに気象をどう楽しんで学んでもらうかが、先生たちの腕の見せどころです。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『観測・実験・モデルで伝える気象教育』はこんな方におすすめ!

  • 小学校・中学校・高校の理科教師の方
  • 理科系の教職員を目指す方
  • 理科系の教職員を目指す方

『観測・実験・モデルで伝える気象教育』から抜粋して3つご紹介

『観測・実験・モデルで伝える気象教育』からいくつか抜粋してご紹介します。身近な自然現象でもある「気象」の教育について、観察や実験の方法、有用性を紹介するとともに、実施例、実際の児童・生徒・学生の反応などをまとめています。気象教育に携わる教師、志す教職課程の学生等にとって、児童・生徒の興味を喚起し学びを深めさせるための手引きとなる実用書です。

校舎内の鉛直気温分布を調べる授業

校舎の鉛直気温を調べる実習事例を紹介します。この実習の重要な目的は、上の階がなぜ高温になるかという結果を考えることを通して自分の考えを観測事実に基づき変容させる、または確信する科学的プロセスを体験することです。「校舎内の気温はどこでも同じだろうか」という課題から、実際に観測を行い、結果を考える実習です。
この実習は比較的簡単に実施可能で、興味を持たせやすいものです。暗記中心になりがちな地学分野の授業において、予想を立てて気象観測を体験できる実習です。しかもあまり環境を選びません。

(1)授業の導入
教師は「校舎内の気温はどこでも同じだろうか」と質問しました。エアコンや窓の開閉などの影響を受けると回答があったので、エアコンは使わず窓を閉めていた場合とし、さらに、どのように調べたらよいかと尋ねました。

(2)気温の観測方法を考える
まず、生徒に気温の測定方法を説明します。実際に生徒の代表に温度計を読ませて温度計の目盛りの読み方を確認したのち、すべての班に温度計を配布します。再び代表の学生が測定を行いましたが、気温は前回の測定値より高くなりました。その理由を、学生は身体からの熱を指摘しました。野外の観測では太陽の放射の影響を受けるので、放射除けが必要であると説明しました。

(3)校舎の鉛直気温の予想
「校舎内の気温はどこでも同じか」に対する学生の予想の多くは、温度は異なるというものでした。どのように異なるのかについては、上階ほど高温になると考える学生と、低くなると考える学生が半々でした。その理由をワークシートに記入してもらいます。
最も回答が多かったのは、「6階ぐらいの高さでは、温度の差異は見られない」というものです。気温が高くなるとした理由では、「暖かい空気は上に運ばれるから」というものがありました。低くなるとした回答は「登山をすると山の上は涼しいから」でした。上の階ほど高温だとする予想と低温だとする予想が半々になったということは、観測をして確かめてみたいという動機付けにつながります。相反する意見を主張させることで、観測の目的をしっかり持たせることができるのです。

(4)観測の実施と観測値の共有
どこから観測するかと移動ルートについては、各班の判断に任せました。観測の時間は13時30分から14時、交代で観測を行うこと、観測終了後は黒板の表に結果を記入することとその共有を指示し、生徒たちを観測場所に向かわせます。
観測終了後の実験に関するレポートの章立ては「観測結果の予想とその理由・観測の方法・結果(グラフなどで工夫すること)・考察(結果をどのように考えるか)・おわりに」とすることを指示しました。

(5)観測データのグラフ化
観測校舎ごとに各階の平均気温を求め、縦軸を高さ(階)、横軸を気温として、グラフで示しました。その結果、どちらの校舎も階が高くなればなるほど気温は高くなることがわかりました。

(6)学生の感想
実習後の学生の感想は、・放射除けの製作を学生自身が行うことで気象観測に対しより積極的に取り組める、・観測を行う前に予想させ、そう思う理由を述べることは大切、・この実習は小学生でも興味を引く、・小学生でもわかる気温の測り方である、というものがありました。

何かを調べるときに大切なことは、「予想してみること」です。観測や実験によって、その予想に対して結果がどうだったか、を目の当たりにすれば、科学的事実を納得することができます。加えて教育の現場では、「予想をみんなの前で発表し、みんなはそれを馬鹿にしないで検討すること」も大切です。「間違っていたらどうしよう?」「笑われるかもしれない」という気持ちは誰もが抱くものですが、科学的態度を身につける妨げになってしまいます。

「大気中の水蒸気の変化」をどう教えるか:ペットボトルの実験

《気温と飽和水蒸気量の関係》
生徒は身近な飽和現象として「結露」を知っていて、温度と結露の関係についてある程度理解しています。しかし、多くの生徒が飽和水蒸気量へと学習が進む段階で躓いてしまいます。「飽和」の概念が定着する前に気温と飽和水蒸気量の学習が始まってしまうことが原因と考えられます。
従来の取り組みでは、温度が上昇すると飽和水蒸気量も増えることを理解させる実習はありませんでした。ここでは、身近にあるペットボトルを用いて気温と飽和水蒸気量の関係を調べる教材を紹介します。

(1)水蒸気量の測定準備と方法
少量の水滴を入れたペットボトルに温度計付きゴム栓で栓をした装置を作ります。この温度計付きゴム栓も自作します。このペットボトルをドライヤーで加熱し、水滴を蒸発させた後、徐々にペットボトルを冷ましていくと、ペットボトルは曇り始めます。加えた水滴の質量がわかっていれば、曇り始めたときの温度においての一定体積の空気が含む最大の水蒸気の量を調べることができます。ペットボトルに入れる水滴数を変えれば、温度と飽和水蒸気量の関係に気づくことができるでしょう。
実験では、5lのペットボトル、棒状温度計、ドライヤー、ゴム栓、スポイト、ビニールテープを使います。ペットボトルは大きいものを使います。温風加熱器として、ここではファンヒーターを用いました。ペットボトルに入れる水の量は、スポイトの水滴数で決めました。1滴の水の質量は、電子天秤とティッシュペーパーを用いて測っておきます。
この実験ではペットボトルの内壁に結露が生じます。まず、ペットボトル中央の気温とペットボトル外壁の表面温度との関係を調べます。ペットボトル中央の気温と表面温度が55℃以上になるまで暖め、加熱後は自然冷却します。ペットボトル中央の気温は棒状温度計、表面温度は赤外放射温度計を用いて計測しました。室温の影響も考えて、室温を変えて計4回実験を行いました。
実験の結果、やはり室温の影響は大きいことがわかりました。しかし、同一室温ならばペットボトル中央の気温と外壁の表面温度の間には非常によい対応が見られたのです。

(2) ペットボトルに入れた水滴数と表面が曇り始めた温度との関係
実験は3日に分けて計12回行い、ペットボトルが曇り始める温度を測定しました。その結果、どの日においても温度が上昇するにつれて飽和水蒸気量が増加する傾向が読み取れました。
《気温と飽和水蒸気量の関係を調べる授業》
露点について学んだ生徒が、一定体積中に含まれる水蒸気量と露点の関係を調べる実験によって、温度が高くなるほど飽和水蒸気量が多くなることに気づくことがねらいです。

①導入
乾燥させたままで栓をしたフラスコと、息を吹き込んで水蒸気量を調整しておいたフラスコを用意し、これらを水槽の中に入れます。すると片方のフラスコだけが曇り始めます。「どうしてこのようなことが生じたのか」と生徒に質問します。その理由として、内部の空気が露点に達して水分が凝結したことを確認し、「含まれている水蒸気量の違う空気が、どのくらいの温度で露点に達するか調べてみよう」という学習課題を示します。
次に5lペットボトルを示し、「それぞれの容器の中に異なる量の水を入れます。これを加熱して水蒸気を蒸発させた後ゆっくり冷やすと、何℃くらいで凝結するか確かめてみましょう」と尋ねました。生徒の予想は、「水滴をたくさん入れると早く曇り始める」というものや、「入れた水滴の量によって露点は変わっていく」というものでした。

②展開
ペットボトルを冷却させて露点を測る実験を行います。水滴をペットボトルに入れた後、ゴム栓をビニールテープで密封します。水滴がついているペットボトルの壁面に温風を当て、水滴が蒸発するのを待ちます。

③まとめ
露点を測定できた班から黒板の表に数値を書き入れ、グラフに点を打っていきます。同じ水滴数であってもペットボトルが曇り始めた温度にかなりばらつきが見られました。しかし全体的傾向から判断して、「入れた水滴が多いほど曇り始める温度が高い」「温度が高ければ同じ量の空気に含むことのできる水蒸気量は多くなる」という意見が生徒から出ました。

最後に、授業導入時に見せた2つのフラスコを、再び水槽の中に沈めるという演示実験を行いました。ただし、今度は水槽に氷を入れて水温を下げてあります。どちらのフラスコも曇ることを確認し、ここで気温と飽和水蒸気量の関係を説明して、授業のまとめを行いました。

「外が寒くなると窓の内側に結露ができる」ことは知っていても、温度と「空気中に含むことのできる水蒸気量」の関係に自然に気付くのはなかなか難しいものです。生活の中で「なんとなく」見ていた現象を、厳密な実験に基づいて再現してみることで、生徒たちは科学的な理解を深めることができるでしょう。もたついて結果が出ないことや、失敗して先生の手を借りることも、「科学」への姿勢を養います。

台風の進行に伴う風向変化を表す教材

(1)風向変化のきまり
地表付近の風は、気圧傾度力とコリオリカ、地表面の摩擦力が働くため、台風の中心に向かって右へ約60度の方向に吹きます。
磁石のS極を台風の中心に見立てると、方位磁針のN極が指し示す方向が、気圧傾度力の方向(台風の中心)です。方位磁針を加工して、磁針のN極が示す方向から右へ約60度向いた矢印をつければ、台風中心方向と風向の関係を方位磁針と棒磁石で再現することができます。

(2)台風の風向モデルと移動モデルの製作と使用
教材は、台風の進行方向に向かって右側と左側とで風向の時間変化が異なる様子を表します。低気圧周辺の風向を表現する風向磁針モデルと、台風の地図上での移動の様子を再現する台風モデルの2つを用います。

【風向磁針モデルの作り方】
用意するもの:円形の紙、方位磁針、マジックペン、糊、棒磁石
《制作手順》
① 円形の紙に矢印を描き、中心に小さな穴を開ける。この穴を方位磁針中央の突起に刺して紙を固定する
② 方位磁針の磁針を取り出す
③ 磁針に糊を付けて矢印を描いた紙を重ね、矢印の向きがN極から右へ約60度回転するように貼りつける
④ 台風中心に見立てた棒磁石のS極を置くと、方位磁針のN極が台風の中心方向を指し、紙に描いた矢印が台風により引き起こされる風の向きを示す

【台風モデルの作り方】
用意するもの:地図、クリアボックス、透明TPシート、サークルカッター、両面テープ、円盤型磁石、マジックペン(赤)、棒磁石
《製作手順》
① 気象庁ホームページを参考に、台風の進路を想定した地図を作成する
② 透明TPシートをサークルカッターで円形に切り抜き、台風の強風域を表す
③ 円の中央部に、小型の円盤型磁石を上がS種となるようにして両面テープで貼る
④ 透明TPシートの外縁に、暴風域を示すため赤いマジックで色を付ける
④ これをクリアボックスの中に入れる

下に手の通せる台の上に台風モデルのクリアボックスを置き、その上に風向磁針モデル2つを台風の進行方向に向かって右側と左側に置きます。クリアボックスの下から棒磁石のS極が上になるように当ててゆっくり移動させると、円盤型磁石を取り付けた台風モデルが動き出します。クリアボックスの上に置いた風向磁針モデルも、合わせて回転します。

(3)台風の進路と風向モデルの動き
台風の進行方向に向かって観測地点が左にあるとした場合、風向磁針モデルを台紙の上に置き、棒磁石のS極(=台風の中心)を矢印に沿って北上させると、方位磁針のN極が棒磁石のS極を追いかけるように動き、磁針の動きに連動して磁針に付した風向の矢印が反時計回りに変化します。また、風向磁針を矢印の近くと遠くの2カ所に置くと、風向の時間変化は、観測点が進路に近いと大きく、遠いと小さくなる様子を再現できます。

(4)台風の中心と暴風雨域を表すモデル
台風の周囲に吹く風の向きと関連させて、台風の進行方向に向かって右側と左側で風向の変化の仕方が異なることを理解させるのが授業の目的です。
台風の進路方向の左側の風向は反時計回り、右側は時計回りに変化しています。透明の円盤の上に脱脂綿で台風周辺の雲の分布を表現し、棒磁石をゆっくり反時計回りに回転させながら移動させると、リアルに見えるでしょう。

気象庁のサイトやニュースサイトなどで台風が動いていく様子を見ていると、雲の動く方向がわかります。台風の風は反時計回りに吹いていて、台風の進行方向右側では、台風を運んでいる風と台風に吹き込んでいる風の方向が一緒になるので、右側は危険といわれています。今の子どもたちは動画を見慣れているかもしれませんが、手作りの教材を「自分で動かす」ことで、大きなスケールのこともより身近に理解できるようになるかもしれませんね。

『観測・実験・モデルで伝える気象教育』内容紹介まとめ

学校の理科教育において、「気象」はどのように教えられているのでしょう?身近に起こる様々な現象を、「楽しく・わかりやすく」生徒たちに理解させるためには、どんな工夫が必要なのか?気象教育について、観察・実験方法を紹介し、実際の実施例を生徒たちの反応とともに取り上げました。理科教育に携わる方、教職課程の学生におすすめです。

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気象を学ぼう! おすすめ3選

『気象学の教科書 気象ブックス047』
気象に興味を持った人が最初に読んで欲しい1冊です。気象学を学ぶ大学生や気象予報士を目指している人のために、平易な説明と多くの事例、日頃役立つ天気のコラムなどを盛り込んで、わかりやすく解説しています。

『新 百万人の天気教室(2訂版)』
『気象学の教科書』が物足りなく感じてきたら、この本へステップアップ!
「天気」と「気象予報」の概要を、できるだけ数式を使わずわかりやすく解説しています。3部構成で、気象のABCを段階的に解説。複雑な天気現象を基礎から応用までわかりやすく解説しています。この本を理解できたら、気象予報士試験合格はすぐそこです!

『気象予報士のしごと-未来の空を予想して-』
ニュースの天気予報で活躍する片山美紀さんが、天気に興味のある方や気象予報士を目指している人に向けて案内する、気象の世界への入口です。前半では合格体験記とご本人おすすめの勉強法、気象キャスターの仕事について語りました。後半は四季や天気についての様々なトピックについて、プロの立場から解説します。


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