詳説 航海計器 2訂版


978-4-425-43183-0
著者名:若林伸和 著
ISBN:978-4-425-43183-0
発行年月日:2024/8/28
サイズ/頁数:A5判 432頁
在庫状況:在庫有り
価格¥4,950円(税込)
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現在の船舶で使用される航海計器全般を網羅した教科書。双眼鏡や六分儀などの基礎的なものから、AIS、ECDISといった最新機器まで21種の機材を取り上げる。それぞれの計器について、その概要、構成、実際の使用法など、順を追って説明しており、試験対策から実務まで役立つ内容。

【はじめに】 人類が船を利用するようになったのはいつごろのことでしょうか。おそらく川、湖や海岸付近などで短距離を移動するために使われたのがはじまりで、最初は板きれのようなものを水の上に浮かべたものであったと考えられます。それがいつごろのことかは特定することができないほど大昔のことでしょう。その歴史から考えればほんの最近のことかもしれませんが、今から数百年前、産業革命より少し前の、いわゆる「大航海時代」とよばれる頃、帆船による大洋航海が行われるようになりました。それは現在の感覚からすれば宇宙旅行にも匹敵するような、未知の世界に漕ぎ出す、半ば冒険のようなものであったかもしれません。すなわち、船で海へ出て、陸岸が見えるような沿岸を航行しているうちはよいものの、周りに何も見えない大洋では、航海し続ければ「そのうちどこかに着くであろう」というような危険な航海であったはずです。そこで、確実に大洋を航海するための技術として、地上の目標物がない場所でも確実に航海するための技術として、星の位置と時間から自船の位置を決める天測(天文測位)の技術に代表される航海術が開発されました。これは天文学の進歩と正確な時計の開発という技術にもとづいたものです。この他にも大航海時代以降、航海に関連する様々な近代化技術が実用化され、それらの成果は今日の航海技術に通ずるものも多く、船舶運航に携わる読者のみなさんはすでにいろいろと学んでおられることと思います.
時代が進んで、産業革命により発明された動力機関は、陸上において工場の機械を動かすための原動力や蒸気機関車などの交通機械の動力としての利用だけでなく、海上を航行する船舶の動力としても用いられるようになりました。
蒸気船が実用化されてから現在まで200年も過ぎたかどうかというところです。そして20世紀(1901年〜2000年)に入ってからは、電波を利用した技術、すなわち無線通信技術を含む、電気電子工学を応用した多くの航海機器、航海計器が開発され実用化されました。さらに20世紀の後半にはコンピュータの普及により情報処理技術を利用した機器が船舶運航においても用いられるようになって、21世紀(2001年〜)に入った今日では、最新のコンピュータ技術応用のシステムが利用されています。本書では、GPS やTT レーダー等の今日の船舶運航ではごく一般的に用いられるようになっている機器や、AIS、ECDIS そしてVDR など、現時点での新しい航海計器、機器について説明し、また、コンパスやログなどの20世紀から定着して現代の船舶運航にも必須の機器についても概要を説明します。航海士をはじめ船舶運航に携わることを目指して学んでいる人達を対象に航海計器に関連する必要な知識が広く得られることを目的としています。本書がみなさんの参考となり。それら知識が利用されることで安全かつ効率的な航海につながることを願っています。
本書は,第1部「21世紀に活用される航海計器」、第2部「20世紀に開発され現在も活用される航海計器」の2部構成となっています。第1部は比較的新しいものを中心に、第2部はすでに実用化されてから十分な時間が経っているものの現在でも不可欠なものを中心にまとめています。しかし、第1部にもレーダーなど十分に技術として定着しているものが含まれていますし、第2部にも海底探査のための最新システムの紹介も含んでいます。基本的には技術的な関連性を中心に章立てを行いました。
なお,本書の内容は、拙著「舶用電気・情報概論―航海・機関計測の基礎知識―」成山堂書店(2011.4)の続編として位置づけられるものであり、基礎的な内容についてはその理解を仮定しています。必要に応じて参照ください。

著者

【2訂版発行にあたって】 船舶運航技術や航海計器航海機器の技術進歩は目を見張るものがあります。初版から約6 年が経ちましたが,その間には船舶の自動運航,自律運航,遠隔運航などの新しい話題が多くなりました。現時点ではまだ実用化されていないと理解しますが,それも時間の問題でさらに技術開発と実用化が今後加速するでしょう。
今回,2度目の改訂を行いました。百数十年前から今日に至るまで様々な計器,機器が開発され実用化されてきましたが,技術は日進月歩で現在でも新しいものが開発されています。それを本書のように教科書として書籍メディアで追い続けるには難しいものがあります。読者の皆さんには必要に応じて新しい情報を入手されることを期待します。

2024年6月
著者

【目次】
第1部 21世紀に活用される航海計器
 第1章 現代の航海計器
  1.1  方位(コンパスによる方位測定)
  1.2  速力(ログによる速力計測)
  1.3  位置の測定
  1.4  周囲状況の探知
  1.5  ナビゲーション システム
  1.6  デジタル航海データ

 第2章 GPS   2.1  電波航法システムの発展
  2.2  GPS の概要
  2.3  GPS 衛星と電波
  2.4  位置の計算(測位の原理)
  2.5  GPS の測位誤差
  2.6  測地系
  2.7  ディファレンシャルGPS(D−GPS)とSBAS
  2.8  GPS 受信機とその使用
  2.9  その他の測位システム
  2.10 GPS コンパス
  2.11 関係法規
  2.12 データ転送フォーマット(GPS・GPS コンパス)

 第3章 レーダー・TT   3.1  物標の探知
  3.2  レーダーの構成
  3.3  表示方式
  3.4  レーダーの性能
  3.5  レーダー使用の実際
  3.6  TT(Target Tracking)
  3.7  AIS ターゲット重畳表示機能
  3.8  レーダー波浪解析装置
  3.9  関係法規
  3.10 データ入出力

 第4章 AIS   4.1  AIS の概要
  4.2  AIS のメッセージ(送信情報)
  4.3  AIS の機器構成
  4.4  AIS 他船情報の表示
  4.5  AIS 使用の実際
  4.6  パイロット プラグ(パイロット ポート)
  4.7  クラスB AIS(簡易型AIS)
  4.8  その他のAIS 関連システム
  4.9  関係法規
  4.10 AIS データ形式
  4.11 VDESと衛星VDES

 第5章 ECDIS   5.1  ECDIS の概要
  5.2  電子海図
  5.3  ECDIS の構成と接続
  5.4  ECDIS 使用の実際
  5.5  ECDIS トレーニング
  5.6 ブリッジアラートマネジメント(BAM)

 第6章 VDR・BNWAS   6.1  VDR
  6.2  BNWAS

第2部 20 世紀に開発され現在も利用される航海計器
 第7章 コンパスとオートパイロット
  7.1  磁気コンパス
  7.2  ジャイロコンパス
  7.3  オートパイロット
  7.4  関係法規
  7.5  データ転送フォーマット(コンパス関係)

 第8章 ログ   8.1  船速と航程
  8.2  電磁ログ(EM ログ)
  8.3  ドップラー ソナー(ドップラー ログ)
  8.4  サテライト ログ
  8.5  データ転送フォーマット

 第9章 音響による計器   9.1  音響測深機
  9.2  潮流計(ADCP)
  9.3  海底観測機器

 第10章 その他の計器・機器   10.1 気象観測
  10.2 コース レコーダー
  10.3 海図プロッター
  10.4 無線方位測定機
  10.5 傾斜計と慣性計測装置
  10.6 時計
  10.7 六分儀
  10.8 双眼鏡
   A1. NMEA0183 フォーマット
   A2. データ収集記録システム
   A3. AIS データ解析


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カテゴリー:船舶(航海・機関・運用) 
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