グローバル・ロジスティクスの基礎


978-4-425-93291-7
著者名:魚住和宏・石原伸志・合田浩之・石原祐介 編著
ISBN:978-4-425-93291-7
発行年月日:2024/10/28
サイズ/頁数:A5判 336頁
在庫状況:予約
価格¥3,520円(税込)
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近年における国際物流の在り方、変容を取り上げた入門書。図やデータを豊富にしよして解説。国内物流および国際物流、グローバル・ロジスティクス、サプライチェーン(供給網)等がこの一冊で体系的に学べます。「物流危機」や「サプライチェーンの重要性」が注目される現在、国内・海外の物流やロジスティクスを学び、自社のグローバル・ロジスティクスやサプライチェーンの一層の強靭化に取り組むために、最適な一冊です。

【はじめに】 本書の特徴は、国内物流および国際物流、グローバル・ロジスティクス、サプライチェーン(供給網)等がこの本一冊で同時に学べることである。また、本書出版の目的は、現在、国際ビジネスに従事している方々、国際物流を勉学中の方々等がグローバル・ロジスティクスやサプライチェーンを管理するサプライチェーンマネジメント(SCM)を実践していく上で必要とされる一連の知識をこの一冊で身に付けられるように具体的な事例や実体験も加味し、体系的にまとめたことにある。
本書では、まず、国内・国際に関する物流やロジスティクス、サプライチェーンなどの定義や発展の経緯について、具体的事例を含めて詳細に説明している。物流には「国際物流」と「国内物流」があるが、その主たる違いは、①輸出入通関の有無、②輸送方法と輸送日数、③国際物流では国内物流より豊富で幅広い知識が求められていること、等である。国内物流にはなく、国際物流で求められる幅広い知識とは、貿易実務、海上・航空輸送、通関、海外の物流インフラや経済状況、FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)、国際条約、海外の法令・商慣習、産業・業界別物流事情、情報システム、語学力などであるが、語学力を除き、本書で可能な限り取り上げたつもりである。
一方、物流とロジスティクスおよびサプライチェーンの最も大きな違いは、物流のビジネスモデルは輸配送・保管・荷役など汎用性があるが、ロジスティクスやサプライチェーンは企業ごとに最適な原材料調達・生産・マーケティング・物流等の組合わせを設計する「戦略論」であることから、その構築から管理・運営は、産業別・企業別・国(地域)別に異なり、すべて手づくり(オーダーメイド)になることである。そこで本書では、ASEAN・中国・米国・欧州の物流の現況について現役の駐在員らが詳細に報告し、さらに、食品・衣料品・家電・自動車などの産業別のロジスティクスについてもそれぞれの分野の専門家が詳しく解説している。
また、ロジスティクスやサプライチェーンは高度な物流を活用して調達から消費者に至るプロセス全体の最適化を図るものであるが、これらを構築・管理・運営していく際のキーワードは「人材育成」と「管理会計の仕組み」である。筆者が常日頃不満に思っていることは、国内物流に関する書籍類は多々あるが、国際物流やグローバル・ロジスティクスに関する実務書は、インターネットや書店等で探してみても、貿易実務関連を除くとほとんどないことである。これが、本書の出版を思い立った理由のひとつでもあるが、執筆に関しては、以下の点に注意を払った。

① 国際物流業務やグローバル・ロジスティクス、SCM 等に従事する際に必要となる知識全般が管理会計を含め、この一冊で体系的に学べること。
② 執筆陣は、現在第一線で活躍中の国際物流やロジスティクスの研究者および実務従事者であること。
③ グローバル・ロジスティクスやサプライチェーンの現況を的確に理解するために、基礎(定義)、現在に至るまでの経緯(歴史)を含めて、理論だけでなく具体的な事例や経験も含めて、わかりやすく解説すること。
④ 読者は国際物流やグローバル・ロジスティクスの実務経験5~6年の社会人や現在、それらを勉学中の学生や初学者を対象とすること。

話は変わるが、連日、マスコミや雑誌などで「物流危機」や「サプライチェーンの重要性」が報じられている。また、国土交通省が発表した「第六次総合施策大綱」(2021年度~ 2025年度)の中では、物流危機を乗り切る手立ての一環として「高度物流人材の育成」が提唱されている。一方で荷主企業は、コロナ禍でのサプライチェーンの寸断を経験し、グローバルサプライチェーンの強靱化に取り組み、物流事業者はサードパーティ・ロジスティクス(3PL)等の機能を強化して荷主のサプライチェーンを支えるサービスを提供することで差別化する動きを見せている。それがために今では「企業の優劣はロジスティクス、またはサプライチェーンの優劣で決まる」とまで言われている。この場合にキーワードとなるのは、やはり「高度なロジスティクスの構築」および「人材育成」である。政府は2024年2月に「総合物流効率化法」を閣議決定し、特定荷主企業3,000社にロジスティクスやサプライチェーンの統括責任者であるCLO(Chief Logistics Officer)の設置を義務付けている。この点からしても、政府としてもロジスティクスやサプライチェーンをいかに重視するようになっているかがわかる。しかし、CLOひとりでは何もできない。実務に精通したロジスティクス人材の育成が各企業において急務である。その点においても本書は、CLOおよびCLOの片腕となるべき方々が、国内・海外の物流やロジスティクスを学び、自社のグローバル・ロジスティクスやサプライチェーンの一層の強靱化に取り組み始めるのに最適な入門書である、と自負している。
本書が日本国全体で、ロジスティクス人材育成の機運が高まる一端・一灯になれば執筆者一同にとってこの上ない喜びである。

2024年9月
魚住 和宏

【目次】
第1章 貿易とグローバル・ロジスティクス
 1.1 貿易の基本的な仕組み
 1.2 貿易とグローバル・ロジスティクスを巡る変化
 1.3 日本の貿易環境の変化と国際物流
 1.4 コンテナ船の超大型化がもたらすサプライチェーンの変化

第2章 国際物流とグローバル・ロジスティクス  2.1 物流、ロジスティクス、サプライチェーンの違い
 2.2 わが国の物流発展の歴史
 2.3 物流の発展過程別の考え方
 2.4 物流およびロジスティクスに対する考え方
 2.5 スマイルカーブにみる物流の位置付け
 2.6 海上コンテナがグローバル・ロジスティクスに与えた影響
 2.7 海上コンテナの定義
 2.8 海上コンテナの種類とディメンション
 2.9 国際物流と国内物流の違い
 2.10 CLOとロジスティクスの将来

第3章 海上輸送  3.1 海上輸送の概要
 3.2 海上輸送の仕組み
 3.3 船荷証券と海上運送状(電子化を含む)
 3.4 海上輸送に関する国際条約・国内法
 3.5 コンテナターミナルの概況

第4章 主要コンテナ航路の現状  4.1 北米、欧州、アジア域内航路
 4.2 コンテナ船の将来

第5章 航空輸送  5.1 航空輸送の概要
 5.2 航空輸送の仕組み
 5.3 航空運送状と運送約款
 5.4 航空輸送に関する国際条約

第6章 フレイト・フォワーダーとグローバル・ロジスティクス  6.1 フレイト・フォワーダーの歴史
 6.2 フォワーダーと貨物利用運送(NVOCC)事業法
 6.3 フォワーダーの業務
 6.4 最近の物流コスト削減に対する考え方
 6.5 荷主企業とフォワーダー(物流事業者)の同期化

第7章 フレイト・フォワーダーと国際複合一貫輸送  7.1 国際複合一貫輸送
 7.2 国際複合運送の仕組み
 7.3 国際複合運送証券の責任体系
 7.4 国際複合運送に関する主な国際条約
 7.5 わが国からの国際複合一貫輸送

第8章 各国・地域の物流事情  8.1 GMS域内の物流事情
 8.2 中国の交通物流
 8.3 米国の国内貨物運送
 8.4 欧州の物流事情

第9章 サードパーティ・ロジスティクス  9.1 サードパーティ・ロジスティクスとは何か
 9.2 わが国の3PL普及の背景
 9.3 3PLに対する基本的な考え方
 9.4 3PLの発展過程とその業務内容
 9.5 3PLのメリットとデメリット
 9.6 3PL導入時の課題と考え方
 9.7 3PL契約書の作成事例
 9.8 わが国の物流を巡る今後の課題
 9.9 3PLの将来

第10章 グローバルサプライチェーンの強靱化  10.1 混沌とする世界経済
 10.2 日本企業の現状と課題
 10.3 グローバルサプライチェーンの強靱化策
 10.4 グローバルサプライチェーン強靱化に向けて

第11章 物流事業者とサービス・マーケティング  11.1 マーケティングの定義
 11.2 マーケティングとは何か
 11.3 マーケティング・コンセプト
 11.4 マーケティングの発展経緯
 11.5 荷主と物流事業者の考え方の違い
 11.6 サービス財の特徴の違い
 11.7 サービス・マーケティングの考え方
 11.8 SWOT分析
 11.9 サービス・マーケティングの目的

第12章 標準化のグローバル展開とデジタル化動向  12.1 標準化のグローバル展開
 12.2 国際間貨物輸送のデジタル化動向

第13章 グローバル・ロジスティクスにおける管理会計の重要性  13.1 企業価値を高めるためのロジスティクス管理
 13.2 在庫管理のポイント
 13.3 原材料調達管理手法
 13.4 管理会計の重要性

第14章 産業別グローバル・ロジスティクス  14.1 食品産業
 14.2 衣料品(アパレル)産業
 14.3 PC・家電産業のサプライチェーン
 14.4 自動車産業のロジスティクス

第15章 FTA・EPAとグローバル・ロジスティクス  15.1 FTA・EPAとは何か
 15.2 わが国のFTA・EPAの締結状況
 15.3 FTA・EPAの特恵関税
 15.4 輸入通関と原産地証明
 15.5 円滑な国際物流のために


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カテゴリー:物流 
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