津波ー脅威、メカニズム、防災と備えー


978-4-425-51462-5
著者名:今村文彦 著
ISBN:978-4-425-51462-5
発行年月日:2025/3/28
サイズ/頁数:A5判 184頁
在庫状況:予約
価格¥2,640円(税込)
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「津波警報・津波注意報」がでたらどうする?
すぐに、命を守る行動を!
● 海岸や河口の近くにいるときは、すぐに離れて!
● 浸水エリア内にいるときは、すぐに高台や周辺の津波緊急避難場所や避難ビルに移動して!
● 車で逃げないで、徒歩で!
● 警報・注意報の解除まで、地震・津波情報、避難指示など情報確認を続けて!
津波は、繰り返し襲ってきます。ほんの数十センチメートルの高さの津波でも、
強大な力で流される危険があります。津波に備えて、命を守る行動をとってください。

東日本大震災以来、注目されることの多い津波、そのメカニズムから脅威、津波全般に関しての防災・減災の考え方や取り組みをまとめている。<基礎編><応用編><対策編>の3部構成。事例は、著者の活動が東日本大震災の被災地東北:仙台を拠点としているため、大震災時の津波事例が多いが、その他や海外の事例も随所に取り上げ解説。

【はじめに】 2020(令和2)年3月に『逆流する津波 ―河川津波のメカニズム・脅威と防災』というタイトルで初版を発行いたしました。この初版を発行した後も、国内外で津波が発生しています。これらの津波からも新しい状況や知見が得られましたので、この度、「津波 ―脅威、メカニズム、防災と備え」と新たなタイトルで改訂版として出版できることになりました。初版でご紹介した事例に加えて、改訂版では新たに、2024年に起きた能登半島地震についても触れています。
日本は、過去から津波の被害を受け、得られた貴重な経験と教訓から地域の復興を遂げてきました。この中で、東日本大震災など最近の津波災害で注目されているのが「河川津波」です。この津波は海域から伝播し陸地に来襲しますが、いち早く河口などから入り、河川や運河・水路に沿って内陸奧深くまで遡上してきます。津波の遡上が河口から約50㎞でも記録されていました。
さらに、河岸堤防を越えて市街地などに浸入し、思わぬ方向や経路から来襲してくるのです。津波が船舶や木材等の漂流物を巻き込みながら河川を遡上する場合もあり、橋でせき止められて水位が増したり、これら漂流物が橋に衝突して落橋や橋桁を損傷させたりしています。都市化に伴ってビル等の間から浸入する津波は、より加速しスピードを増します。突然、マンホール等から吹き出す津波も報告されています。
2024年の新年は、令和6年能登半島地震による大災害で明けてしまいました。日本海域での最大クラスの直下型地震による強震、土砂災害、液状化、さらに、断層の一部が海域に拡大したために津波が生じ、一時期には大津波警報が発表されました。特に、この震災が発生したのが元旦の夕方であり、コロナ禍が明けた中で帰省された家族や旅行客が、被災されており、災害対応も手薄であった異例の災害であったのです。
また、2024年8月には、宮崎県日向灘沖でのマグニチュード7.1の地震の後に津波注意報が発表され、その後、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。各地で1週間にわたり緊迫した状況下で、地震や津波への備えの再点検や避難への確認が求められました。今後もこのような情報が発表されることになります。このような経験と教訓を改訂版の中に詳しく紹介してみました。自然災害は、常に進化すると言われています。本書により、新しい津波の姿を知っていただきたいと思います。

2025年3月
今村 文彦

【目次】
〈基礎編〉
第1章 津波とは?  1.1 歴史に残された津波
 1.2 世界語になった「Tsunami」(津波)
 1.3 津波の発生メカニズム
 (1) 海底地震による発生
 (2) 地震以外での発生
 1.4 2018年インドネシアで発生した津波の事例
 1.5 国境を越えて伝わる津波 ― 太平洋国際津波警報センターの設立
  コラム1 エイプリルフールに発生した津波
 1.6 深海から浅海へ伝わる津波 ― 津波の速さ
 1.7 津波はなぜ大きくなるのか?
 1.8 どのような地形と現象で津波は大きくなるのか?
 1.9 津波は何度も押し寄せる
  コラム2 稲むらの火 濱口悟陵の偉業をしのぶ
 1.10 陸上と河川の遡上とは?
 1.11 津波の規模の尺度は? ― 津波強度
 1.12 津波の特性を表す指標や用語

第2章 津波のメカニズム  2.1 河川津波とは?
 2.2 河川を遡上する津波の代表事例(日本/世界)
 (1) 2003年十勝沖地震津波
 (2) 2011年東日本大震災
 (3) 2004年スマトラ沖地震インド洋津波:スリランカ
 2.3 巨大津波を引き起こした地震
 2.4 東日本大震災:新北上川河口付近 ―大川小学校への影響
 2.5 東日本大震災:多賀城市砂押川 ―都市型河川津波の恐怖
 2.6 観測された津波の姿
 2.7 黒い津波の実態

〈応用編〉
第3章 河川津波による被害
 3.1 陸と海への影響と被害
 3.2 津波の伝播過程
 3.3 津波の脅威 写真に残された陸上遡上と引き波の姿
 3.4 津波による犠牲がなぜ繰り返されるのか?
 3.5 建物等への被害 ― 浸水深、流速、浸食
 3.6 津波による流体力と漂流物
 3.7 越流による被害 ― 裏側の洗掘
 3.8 河口部での被害
 3.9 蛇行部での被害
 3.10 複合災害と連鎖 ― 女川での事例
 3.11 能登半島地震による津波 複合災害

第4章 津波の観測と予測  4.1 予報・予測の重要性
 4.2 数値シミュレーションによる津波予測
 4.3 予測結果の利用
 4.4 南海トラフ巨大地震津波で想定される脅威
 4.5 南海トラフ地震臨時情報と事前避難について
 4.6 陸上での浸水を予測する
 4.7 土砂移動とその予測シミュレーション

〈対策編〉
第5章 津波からの防災・減災、そして身を守る
 5.1 津波に対する防災対策
 5.2 安全に避難するまでのプロセス
  コラム3 8つの生きる力 – 災害を生き抜くために必要な力とは?
 5.3 危険を知らせる情報 – いかに危険性を察知できるか?
  コラム4 インド洋大津波から命を救った少女の話
 5.4 津波からの生還例 – 高速道路(高台)へ避難
 5.5 車避難は必要か?
 5.6 そのとき、逃げ場は! – 認知マップの修正と活用
 5.7 オレンジフラッグの活動
 5.8 津波緊急避難ビルについて
 5.9 防災施設である防潮堤・防波堤の役割
 5.10 安全な沿岸地域づくりを – 「津波防災地域づくりに関する法律」と地域的な備え
 5.11 今できる備えとは何か? – まずは避難訓練をしてみませんか?
 5.12 震災伝承の取り組み
 5.13 津波防災への対応レベルの導入
 5.14 津波の語源について
  コラム5 津波ものがたり – じぶん防災プロジェクト

【著者紹介】 1961年、山梨県生まれ。
工学博士。東北大学教授、東北大学災害科学国際研究所・所長。
専門は津波工学および海岸工学。
津波工学の最先端の研究教育と地域の防災・減災力の向上に努めている。
自然災害学会会長、内閣府中央防災会議専門調査会委員など各種委員も歴任。
津波工学者


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カテゴリー:気象・海洋 タグ:気象 防災 
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