コラム
2013年1月23日
巻頭インタビュー 篠原正人・春山利廣両氏に聞く「本書の製作意図」
あなたの倉庫を黒字に導くノウハウを体系化して整理!これで現場の問題を解消してください。
安定的な経営が難しい港湾倉庫。景気の波をダイレクトに受け、読み違いや無駄が発生しやすい。「港湾倉庫の黒字化」、このテーマに正面から取り組んだのが本書である。監修者の篠原氏・著者の春山氏は、この問題をどう捉え、どうアプローチしたのであろうか。
安定的な経営が難しい港湾倉庫。景気の波をダイレクトに受け、読み違いや無駄が発生しやすい。「港湾倉庫の黒字化」、このテーマに正面から取り組んだのが本書である。監修者の篠原氏・著者の春山氏は、この問題をどう捉え、どうアプローチしたのであろうか。
知見は現場にあり。日本の現場にある「濃密なノウハウ」
――あらゆる業種業態で利益を上げる経営の方法論は一つしかありません。コストを最小、効果を最大にすることです。こうした中で、あえてなぜ「港湾倉庫黒字化」という極めて専門的にしぼったテーマを書籍にまとめようと考えたのでしょうか。
篠 原正人(以下、篠原):
私はオランダの大学で「西洋と日本のロジスティクス・パラダイム比較」という研究を行いました。そこで到達した結論は、「西洋流のロジスティクスが常に先端的だと思われている中で、日本人が培ってきたロジスティクスの手法には大変価値のある部分がある」というものです。それを広く実務者に認識してもらう必要があると考えました。知見は現場にあり。日本の現場には、西洋流の方法論に勝るとも劣らないノウハウがあると思うのです。
春山さんは東海大学海洋学部国際物流専攻で、数年前から「上屋の採算向上」というテーマで講義をしています。この講義内容は、私の研究成果を実証しているものだと思いました。したがって、学生だけでなく、港湾物流に携わる実務者にも企業の体質強化や国際競争力向上など多くの点で役に立つと思い、世に出すことをお勧めました。
春山利廣(以下、春山):
リーマンショックの影響で、多くの企業の港湾倉庫部門は大きな赤字に転落しました。しかしながら、私企業では黒字経営しなければ倒産。赤字対策について篠原教授と意見を交わす中で“港湾倉庫黒字化”の方法論を整理して体系化したいと考えました。
――いつこのテーマを意識されましたか。
篠原:
2年程前です。
春山:
おぼろげな意識をもったのは3 年前ですが、書籍にすることを意識したのは1年半ほど前です。
――本を読めば詳細が記載されていますが、ダイジェストでわかりやすく言うと、この命題をどういう形で解消しようとされたのですか。
篠原:
日本の港湾サービスは「非効率」で「高コスト」であると常に言われ続けています。そして、決して収益率の高い業種と言うこともできません。では、これをどのように解消するのかと言うと、西洋的な考えでは、大規模化して機械化を進めろ、ということになります。しかしながら、日本的なきめ細かい運営をすれば、顧客満足度が高く、効率も良い、日本人ならではの素晴らしい港湾倉庫サービスが実現できるのです。
春山:
ですから、日本国中にある利益の上がる事例を整理し、現場で起こりうるケースを整理しました。
港湾倉庫は労働集約型の産業ではないので、知識こそが黒字化の源です。また、荷主の求める物流を的確に、かつ、適正なコストで提供すれば黒字化が達成できます。こう言うと簡単に聞こえるかもしれませんが、現場における様々な突発的な案件を引き受けつつ、あらゆる事案を黒字で展開するのは、決して容易ではありません。このことは、読者の皆さんが一番ご存知のことだと思います。
ジャパンエキスプレスでは,様々な荷主の要望に合わせたオーダーメードサービスを提供し、健全な港湾倉庫運営を実現しています。これを可能にするには、自社の強みをしっかり把握するとともに、物流に関する幅広い知識とこれを組み合わせるノウハウが必須となります。そして、そのうえで「黒字にするためのフォーマットや筋道」をしっかり意識する。これが黒字化への第一歩でしょう。
篠 原正人(以下、篠原):
私はオランダの大学で「西洋と日本のロジスティクス・パラダイム比較」という研究を行いました。そこで到達した結論は、「西洋流のロジスティクスが常に先端的だと思われている中で、日本人が培ってきたロジスティクスの手法には大変価値のある部分がある」というものです。それを広く実務者に認識してもらう必要があると考えました。知見は現場にあり。日本の現場には、西洋流の方法論に勝るとも劣らないノウハウがあると思うのです。
春山さんは東海大学海洋学部国際物流専攻で、数年前から「上屋の採算向上」というテーマで講義をしています。この講義内容は、私の研究成果を実証しているものだと思いました。したがって、学生だけでなく、港湾物流に携わる実務者にも企業の体質強化や国際競争力向上など多くの点で役に立つと思い、世に出すことをお勧めました。
春山利廣(以下、春山):
リーマンショックの影響で、多くの企業の港湾倉庫部門は大きな赤字に転落しました。しかしながら、私企業では黒字経営しなければ倒産。赤字対策について篠原教授と意見を交わす中で“港湾倉庫黒字化”の方法論を整理して体系化したいと考えました。
――いつこのテーマを意識されましたか。
篠原:
2年程前です。
春山:
おぼろげな意識をもったのは3 年前ですが、書籍にすることを意識したのは1年半ほど前です。
――本を読めば詳細が記載されていますが、ダイジェストでわかりやすく言うと、この命題をどういう形で解消しようとされたのですか。
篠原:
日本の港湾サービスは「非効率」で「高コスト」であると常に言われ続けています。そして、決して収益率の高い業種と言うこともできません。では、これをどのように解消するのかと言うと、西洋的な考えでは、大規模化して機械化を進めろ、ということになります。しかしながら、日本的なきめ細かい運営をすれば、顧客満足度が高く、効率も良い、日本人ならではの素晴らしい港湾倉庫サービスが実現できるのです。
春山:
ですから、日本国中にある利益の上がる事例を整理し、現場で起こりうるケースを整理しました。
港湾倉庫は労働集約型の産業ではないので、知識こそが黒字化の源です。また、荷主の求める物流を的確に、かつ、適正なコストで提供すれば黒字化が達成できます。こう言うと簡単に聞こえるかもしれませんが、現場における様々な突発的な案件を引き受けつつ、あらゆる事案を黒字で展開するのは、決して容易ではありません。このことは、読者の皆さんが一番ご存知のことだと思います。
ジャパンエキスプレスでは,様々な荷主の要望に合わせたオーダーメードサービスを提供し、健全な港湾倉庫運営を実現しています。これを可能にするには、自社の強みをしっかり把握するとともに、物流に関する幅広い知識とこれを組み合わせるノウハウが必須となります。そして、そのうえで「黒字にするためのフォーマットや筋道」をしっかり意識する。これが黒字化への第一歩でしょう。
失礼ながら,勉強不足の人が多い。ならば…。
――では,どんな読者に活用してもらいたいですか。
篠原:
まずは港湾倉庫で働く実務者です。さらには荷主、そして物流研究者や学生も対象としています。
春山:
同感です。
――具体的な読者の活用イメージは?
篠原:
第一線で働く実務者は、昔からあまり勉強する時間を確保できていません。それではこれから厳しい国際競争に勝ち残ることはできません。この本には、個々の企業を黒字に導くパターンをたくさん用意しています。港湾倉庫の若い実務者には、日々の仕事と本書を突き合わせ、自分の現場に置き換えながら精読していただきたい。管理職にある人たちには、企業の収益性を高めるための経営書として読んでいただきたいと思います。荷主に当たる人たちには、港湾倉庫の合理的な活用法を考える糧として利
用していただけます。大学などの研究者には、本書が扱っている事柄から現場ならではの多くの貴重な知見が読みとれると思いますので、その中から自身の研究テーマを探し出すという目的にも活用していただきたい。
春山:
端折らずに、まずは通読していただきたいと思います。この本に整理されている「あなたの会社を黒字に導くパターン」を意識すれば、日々の業務を論理的に体系的に捉えられるようになります。そして、個別の問題に直面した時は、関連の章を目次から抜き出して読み直すことです。大多数の人は、問題に直面すると思考パターンが固定化します。本書では様々な問題と解決法を掲載していますので、柔軟で最適な解決策が得られるでしょう。
篠原:
まずは港湾倉庫で働く実務者です。さらには荷主、そして物流研究者や学生も対象としています。
春山:
同感です。
――具体的な読者の活用イメージは?
篠原:
第一線で働く実務者は、昔からあまり勉強する時間を確保できていません。それではこれから厳しい国際競争に勝ち残ることはできません。この本には、個々の企業を黒字に導くパターンをたくさん用意しています。港湾倉庫の若い実務者には、日々の仕事と本書を突き合わせ、自分の現場に置き換えながら精読していただきたい。管理職にある人たちには、企業の収益性を高めるための経営書として読んでいただきたいと思います。荷主に当たる人たちには、港湾倉庫の合理的な活用法を考える糧として利
用していただけます。大学などの研究者には、本書が扱っている事柄から現場ならではの多くの貴重な知見が読みとれると思いますので、その中から自身の研究テーマを探し出すという目的にも活用していただきたい。
春山:
端折らずに、まずは通読していただきたいと思います。この本に整理されている「あなたの会社を黒字に導くパターン」を意識すれば、日々の業務を論理的に体系的に捉えられるようになります。そして、個別の問題に直面した時は、関連の章を目次から抜き出して読み直すことです。大多数の人は、問題に直面すると思考パターンが固定化します。本書では様々な問題と解決法を掲載していますので、柔軟で最適な解決策が得られるでしょう。
あらゆる読者を「業務改善の旗頭」にしたい
――本の制作の苦労話を聞かせてください。
春山:
東海大学の学生を対象にした講義の資料、港湾倉庫の運営技術や運営実績、会社の経営実務と経営理論など本の基になるデータは多くありましたので、これらを文章化し、章立てし、体系的に整理をしてコンパクトにまとめるのに多くの時間を要しました。例えば、講義ではパワーポイントで口頭説明している部分を文章化すると、文字の量が非常に多くなり、整理に苦労しました。最終的には元の講義資料などの半分以上を切り捨てました。それでも、一つ一つのノウハウは現場の様々な問題に直結する、現場の状況に合うフォーマットを、後半部に整理しました。
――作業着手は、いつですか。
春山:2011 年の冬です。
――考えを文章にまとめる時、どういう点で苦労しましたか。
春山:
本の執筆は初めてなので、あらゆる点で手探りでした。まずは、講義資料など基になるデータから自分の考えをまとめ直して文章に変え、相互の関連を見て齟齬がないか確認しながら体裁を整えました。問題は次の工程です。読者の視点で、あらゆるテキストを洗い直し、現場の状況に即して、しかもわかりやすい表現で伝えなければなりません。現場の状況をイメージするとつい長文になってしまうのです(笑)。バランスを取るのが大変でした。
――原稿作成上、工夫した点は?
春山:
読者の視点に立った本の構成と文章です。事象を上手にパターン化できました。実務書は、読者に利用していただくのが目的ですから、読者の視点は重要なポイントです。
――最後に、読者へのメッセージ、エールをお願いします。
篠原:
日本式のロジスティクスは西洋式にはない多くの利点を持っています。その中の特筆すべき知識、ノウハウがどのようなものなのか、それをどうすれば個々の企業の状況に連動させることができるか。あらゆる読者に、本を精読することによって、“企業内で業務改善の旗頭”となっていただきたいですね。
春山:
物流は知識集約型の産業です。幅広い知識と経験をパターン化し、より多くの現場に即した解消策を持つことこそが港湾倉庫を黒字化する原動力です。本書を参考に必要な知識の習得に努め、日本式ロジスティクスを極め、健全な港湾倉庫運営を実現してください。
(平成24年11月、聞き手:成山堂書店・小野哲史。文中敬称略)
春山:
東海大学の学生を対象にした講義の資料、港湾倉庫の運営技術や運営実績、会社の経営実務と経営理論など本の基になるデータは多くありましたので、これらを文章化し、章立てし、体系的に整理をしてコンパクトにまとめるのに多くの時間を要しました。例えば、講義ではパワーポイントで口頭説明している部分を文章化すると、文字の量が非常に多くなり、整理に苦労しました。最終的には元の講義資料などの半分以上を切り捨てました。それでも、一つ一つのノウハウは現場の様々な問題に直結する、現場の状況に合うフォーマットを、後半部に整理しました。
――作業着手は、いつですか。
春山:2011 年の冬です。
――考えを文章にまとめる時、どういう点で苦労しましたか。
春山:
本の執筆は初めてなので、あらゆる点で手探りでした。まずは、講義資料など基になるデータから自分の考えをまとめ直して文章に変え、相互の関連を見て齟齬がないか確認しながら体裁を整えました。問題は次の工程です。読者の視点で、あらゆるテキストを洗い直し、現場の状況に即して、しかもわかりやすい表現で伝えなければなりません。現場の状況をイメージするとつい長文になってしまうのです(笑)。バランスを取るのが大変でした。
――原稿作成上、工夫した点は?
春山:
読者の視点に立った本の構成と文章です。事象を上手にパターン化できました。実務書は、読者に利用していただくのが目的ですから、読者の視点は重要なポイントです。
――最後に、読者へのメッセージ、エールをお願いします。
篠原:
日本式のロジスティクスは西洋式にはない多くの利点を持っています。その中の特筆すべき知識、ノウハウがどのようなものなのか、それをどうすれば個々の企業の状況に連動させることができるか。あらゆる読者に、本を精読することによって、“企業内で業務改善の旗頭”となっていただきたいですね。
春山:
物流は知識集約型の産業です。幅広い知識と経験をパターン化し、より多くの現場に即した解消策を持つことこそが港湾倉庫を黒字化する原動力です。本書を参考に必要な知識の習得に努め、日本式ロジスティクスを極め、健全な港湾倉庫運営を実現してください。
(平成24年11月、聞き手:成山堂書店・小野哲史。文中敬称略)