著者名: | 北窓時男 著 |
ISBN: | 978-4-425-85051-8 |
発行年月日: | 2001/8/8 |
サイズ/頁数: | 四六判 194頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,760円(税込) |
スラウェシ島、カリマンタン島、小スンダ列島…。インドネシアの島々を中心に、各地の漁具・漁法・歴史を訪ねる。
見知らぬ人々との生活・ふれあい、自然を求め、熱帯アジアの海を歩いてみよう。
【はじめに】より
熱帯アジアの海を歩こう。
ジーパンとTシャツにスニーカーをはき、小さめのバックパックに少しばかりの着替えとポケットサイズの辞書を入れよう。方にはカメラバッグ。そこにノートと筆記道具をしのばせる。長袖の上着も一枚用意しておこう。これにパスポートと往復の航空チケットがあれば、準備は万端だ。
6時間あまりの空の旅、降り立ったそこはもう熱帯だ。蒼く透き抜けるサンゴ礁の海。泥砂とマングローブの海、赤く変色する都市の海、人びとが生活する海の姿がそこにある。さあ、どこへ行こうか。それはあなた次第だ。
ここで紹介する海の旅はスラウェシ島とその周辺だ。そこをウォーレシアと呼ぶ人たちもいる。私が歩いてきた熱帯アジアのなかでも、とっておきの世界だ。東南アジアの多島海を帆走船を操って縦横に駆け巡るブギス・マカッサルの人びとがいる。小舟でナマコや貝類を採取しながら海を移動するバジャウもいる。カツオ釣りに長けたサンギヘ・シアウの人びとや、島から島へ移動するマルクの人びとの姿もある。
これまで知らなかった人たちや自然との出会い、それが旅するということだ。
私が熱帯アジアの海とかかわって二十数年がたった。ボランティアとして、企業の駐在員として、あるいは研究者として、さまざまな立場でかかわってきた。もしも、そこに一貫したものがあるとすれば、現在という時を共有する一人の人間としてかかわってきたという想いである。
当初は、海を移動する舟、魚を獲る道具、海の幸である魚、そういったモノが関心の対象だった。舟や網をみてスケッチし、計測し、使い方を聞くという旅のスタイルだ。今から思えば「木をみて森を見ず」の感がなかったわけではない。モノにこだわるあまり、それを生み、使う人びとの姿を見ていなかったのだ。
そうしたモノの後ろに隠れていた人びとの息づかいや生活が、人びとへの共感とともに、徐々に私の目の前に現れてくるようになる。それはまさに新たな発見だった。今まで気づかなかった広く深い世界がそこにあるのではないか。私がこの本を書こうと思いたったのは、この喜びと興奮を若い人たちに、いくらかでも伝えたいと思ったからだ。なぜそうした変化が現れてきたのか、それは本書を読んでいただく以外にない。
とはいえ、この本を読んで何を感じるか、それはあなた次第だ。100人いれば100とおりの読書のスタイルがあるように、旅のスタイルも人それぞれだ。願わくば、この本がひとつのきっかけとなり、新たな旅立ちが訪れることがあれば幸いである。
さあ、あなた自身の新たな旅へでかけよう。
2001年7月
北窓時男
【目次】
第1章 南スラウェシ半島?地域の多様性をみる
1-1 不思議の島,スラウェシ
1-2 南スラウェシ半島のヒトと食文化
1-3 マカッサルからパレパレへ
1-4 大地から海へ向かう生業形態
1-5 パレパレからマジェネへの遠い道のり
1-6 ジャラ漁が盛んなマジェネ
1-7 マンダール人の想いがこもる舟
1-8 マジェネからパロポへ
1-9 バガンの変遷と漁場生態
1-10 バガン船に乗船する
1-11 ボネ湾沿いを南下する
1-12 移動するバカン漁民
1-13 マグロを釣る海民気質
1-14 世界一のカニ産地へ
第2章 カリマンタン東岸?フロンティア空間をあるく
2-1 ブギス人の離散移住
2-2 マカッサル海峡を渡る
2-3 粗放的エビ養殖の村,ムアラ・バダック
2-4 燃えるブキット・スハルト
2-5 エビ獲りの村,マンガール
2-6 半集約的エビ養殖の村,ムアラ・テラケ
2-7 町の生活と村の生活
2-8 ヒトが移動しない理由
2-9 ピニシ造船の町,バトゥリチン
2-10 古いブギス人の町,パガタン
2-11 コタバルの日系エビ加工会社
2-12 かつて大火災があった
2-13 環境にやさしいエビの生産と消費とは
第3章 小スンダ列島?人びとの移動の歴史をしる
3-1 ウォーレスがみた海
3-2 小スンダ列島の自然と歴史
3-3 バリ島のジュクン
3-4 舟の形態変化をバトゥナンパールにみる
3-5 歴史の構図をタンジュンルアールにみる
3-6 アラス海峡の周辺をめぐる
3-7 大物をねらうスンバワの漁夫
3-8 スンバワ島の北岸をゆく
3-9 お化け海峡を渡る
3-10 機動力を求めるバカンの形態
3-11 海域圏というとらえ方
第4章 サンギヘ諸島?人と人のかかわりを思う
4-1 マナドの旅立ち
4-2 マニク一家を訪れる
4-3 上ティドレ地区の巨大な魚かご
4-4 シアウ島へ行こう
4-5 プンギナパン・セルイという宿屋
4-6 ジョセフ・カウォカさんとの出会い
4-7 シアウ島のカツオ一本釣り漁
第5章 マルク諸島?ネットワーク社会をかんがえる
5-1 分散し,移動しながら結びつく社会
5-2 新規参入が容易な風土
5-3 生活のネットワーク
5-4 トロヌオ島のカツオ漁伝承
5-5 AはBを完全にはコントロールできない
5-6 カツオ漁に参加する
5-7 穏やかなダルバの町並
5-8 カツオの流通ネットワーク
5-9 窮屈なキジャンでの聞き取り
5-10 ティドレ島の博物館を訪れる
5-11 ティドレ漁民たちの活躍
5-12 文化伝播のネットワーク
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