著者名: | 竹村 暘 著 |
ISBN: | 978-4-425-85201-7 |
発行年月日: | 2005/4/8 |
サイズ/頁数: | 四六判 202頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,760円(税込) |
音を出すのはイルカやクジラだけではない。威嚇や求愛など様々な場面で色々な音を出す、
水生動物の巧みな音の利用法に迫る。音から学ぶ水中の生態学。
【はじめに】
最近いろいろな動物の世界を紹介するテレビ番組をよく目にするようになった。以前もドキュメンタリー番組はあったが、動物が番組の中心になったものを見た記憶はあまりない。ここ十数年のうちに急速に増えてきたようである。人間社会の複雑な関係と異なり、こうした番組は安心して見ていられる。見知らぬ国の動物の思わぬ行動に目を奪われた方も多いことと思う。
しかし、こうした番組を見ていると、陸上動物を対象にした番組の場合、映像とともにそこに生活する動物の音声が頻繁に聞こえてくるのに、水中の動物となると、映像ばかりでほとんど音声が聞こえてこない。バックグラウンドに流れる音楽とナレーションのみのこともある。
水生動物には音を発するものが多いにもかかわらず、静かに見えるのは、その動物がしゃべることができないせいで、そこではそのような動物の生活が営まれているのだろうと勝手に想像して分かったような気持ちになっている。おそらく、直接現場の環境の中で行動を見、音を聞き、匂いをかぎ、触って触感を確かめると、異なった気持ちになると思う。ところが現場にいても、水中音の場合、何らかの装置を用いないと陸上から体験することは難しいものであり、水生動物の実体を知るのは容易ではない。水生動物の不可思議な行動には陸上からは聞こえない音が影響しているのかもしれない。映像に音が加わることによって、それらの動物の行動が容易に理解されるようになるだろう。
幸い、最近の番組では、時折水中映像にも水中音が放送されるようになってきた。一般の方には、日頃水中の音を聞く機会が乏しいため、水中音があろうとなかろうとあまり気にならないかも知れないが、映像とともに水中の音を聞いていると、それがどのような環境のところか想像でき、番組に引き込まれるような感じになる。
益々こうした情報が同時に提供されるようになることを願っている。そして本書が少しでも水中の音、並びにそこで生活する動物の音響生態への関心を高めるきっかけになれば幸いである。
2005年3月
竹村 暘
【目次】
第1章 静寂の海
1-1 海は本当に静寂か
1-2 海中にある音
1-3 身近になった水中音
第2章 水の中は騒々しい環境
2-1 水中での音
2-2 騒音
(1)自然騒音(台風)
(2)人工騒音
(3)水中生物騒音
2-3 水生動物の音響生態
第3章 無脊椎動物の音
3-1 無脊椎動物の発音
(1)打撃
(2)摩擦による発音
(3)付随的な発音
3-2 水生無脊椎動物の音の利用
(1)無脊椎動物の音の世界
(2)圧力波と振動
第4章 魚類の発音
4-1 魚のおしゃべり
(1)筋肉で鳴く
(2)音を作る摩擦
(3)泳ぐことによっても音が出る
(4)鰾の役割
4-2 魚類の音の世界
4-3 水面での跳躍
4-4 遊泳音
4-5 魚のもえる季節・もえる時
4-6 魚の耳
4-7 魚に音で方位が分かる?
第5章 海の哺乳類
5-1 イルカには3種の鳴き声
5-2 どのように音を聞いているか
5-3 音で周囲を見る
5-4 イルカとの異種間コミュニケーションは可能か?
5-5 イルカのサイン
5-6 ものまね
5-7 飼育に伴う鳴音の変化
5-8 歌を歌うクジラ
5-9 鯨の座礁
5-10 鳴き声で子探し
5-11 男はつらいよ(ハーレムブルの奮闘)
第6章 海の中の騒音公害
6-1 沿岸の工場からの騒音
6-2 沿岸での工事に伴う騒音
6-3 陸上交通機関による騒音
6-4 漁船騒音と漁業
第7章 水中音の利用
7-1 魚は摂餌音の何に惹きつけられるのか
7-2 海中の状況を聞く
7-3 音で脅す
7-4 海洋牧場
7-5 音響漁法
(1)脅して捕獲
(2)魚を失神させる
(3)魚をおびき寄せる
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