金属材料の腐食と防食の基礎


978-4-425-69071-8
著者名:世利修美 著
ISBN:978-4-425-69071-8
発行年月日:2006/3/28
サイズ/頁数:A5判 208頁
在庫状況:品切れ
価格¥3,080円(税込)
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金属の腐食解明と防食対策に取り組む際に必要な概念や用語等の基礎知識を数式もまじえて、丁寧にわかりやすく解説した入門書。

【序文】より  本書は「腐食はどうもわからん!」と思っている方のために書かれた本である。特に、材料学や化学が得意でない技術者のために書かれたものである。
 著者自身、企業の技術者として腐食防食の問題に直面し、困って独学した経験がある。アノードとカソード、陽極と陰極、正極と負極、電位と電極電位・・・等の専門用語に悩まされ、『電位の低い電極から高い電極へ腐食電流は流れる』と言った記述に「逆ではないのか?」と混乱した経験がある。会社の研究所に相談したり学協会の講習会に参加したりして勉強したが、学際分野である腐食・防食学は、現象的には記述されていたにもかかわらず、まだ体系だって整理はされていなかった。最近は専門的な参考書が出版され、随分改善されてきてはいる。しかし改めて仔細に読んでみると初学者や専門以外の方にはやはりとっつき難く必須な概念を基礎的に解説している参考書は極めて少ないことに気がついた。かつての著者のような苦労をされている技術者がたくさんおられるだろうと推察した。
 本書はこれから本格的に腐食防食問題に取り組む方あるいは研究開発をする方のために必要な基礎概念や用語を解説したものである。腐食の解明や防食対策に立ち向かう際に必要な武器を取り揃え、それらを分かりやすく説明した。その際実際に適用できるように定性的な表現は極力避け、定量的な表現にするよう心がけた。入門書にしては数式が多いのはその所以である。
 21世紀に入り循環型社会への構築が進められ、これからの社会は「作る時代」から「使う時代」へ移行すると言われている。地球上の有限な資源やエネルギーの浪費は許されない時代になりつつある。一度金属にした金属材料は大事に、大事に使用する科学的知識や技術的知恵が求められるようになってきた。これからは腐食防食に関する知識は技術者の誰もが知っておくべき学問分野の一つとなるであろう。
 本書が腐食防食の問題にかかわり、腐食現象の解析と対策に直面している技術者、研究者あるいは学生にとってお役に立てば著者の望外の幸せである。なお本書を上梓するに当たり沢山の書籍、論文を参考にさせて頂いた。ここに感謝の意を表する。

2006年2月
北の街から
世利修美

【目次】
第1章 腐食について

 1.1 腐食の形態
 1.2 代表的な用語の説明
 1.3 腐食による経済損

第2章 材料学と化学の基礎
 2.1 物質の構造
  2.1.1 原子と電子構造
  2.1.2 周期律表と化学結合
  2.1.3 結晶構造と表面酸化皮膜
 2.2 物質の変化
  2.2.1 化学方程式
  2.2.2 化学熱力学と化学平衡
  2.2.3 腐食に関係する化学反応
 2.3 物質の性質
  2.3.1 平衡状態図
  2.3.2 水
  2.3.3 酸素および二酸化炭素
  2.3.4 鉄、アルミニウム、銅

第3章 腐食・防食学の基礎
 3.1 腐食現象
 3.2 電極電位
  3.2.1 界面電位
  3.2.2 電極電位
 3.3 局部電池
  3.3.1 ボルタの電池
  3.3.2 局部電池の電気回路
  3.3.3 見かけの電流密度と局部電流
 3.4 ファラデーの法則
  3.4.1 腐食速度と電流密度
  3.4.2 腐食速度の表示
 3.5 電解質溶液
  3.5.1 電解質溶液内のオームの法則
  3.5.2 溶液電位とラプラスの式
 3.6 腐食反応の平衡論
  3.6.1 電極反応とネルンストの式
  3.6.2 電位-ph図
 3.7 腐食反応の速度論
  3.7.1 電荷移動過程
  3.7.2 拡散過程
  3.7.3 電荷移動過程と拡散過程下の分極曲線
 3.8 分極曲線
  3.8.1 単一電極系
  3.8.2 混成電極系
  3.8.3 複合電極系
  3.8.4 実験式と直線近似
 3.9 局部腐食
  3.9.1 局部腐食のメカニズム
  3.9.2 すき間腐食
  3.9.3 孔食
  3.9.4 腐食電位の分布と局部腐食

第4章 腐食試験
 4.1 表面元素分析(EPMA)と表面観察(SEM)
 4.2 電気化学的測定
 4.3 腐食データの確率統計処理
  4.3.1 極地統計
  4.3.2 極地統計の方法
  4.3.3 グンベル(Gumbel)分布
  4.3.4 グンベル分布例

第5章 金属の腐食・防食各論
 5.1 アルミニウムの腐食・防食
  5.1.1 アルミニウム合金の種類と特徴
  5.1.2 アルミニウムとアルミニウム合金の腐食挙動
  5.1.3 防食対策
 5.2 銅の腐食・防食
  5.2.1 淡水中の純銅の腐食
  5.2.2 純銅の孔食過程
 5.3 鉄の腐食・防食
  5.3.1 炭素鋼
  5.3.2 低合金鋼
  5.3.3 ステンレンス鋼

第6章 応力腐食割れの基礎と防食設計
 6.1 弾性力学と応力拡大係数
  6.1.1 弾性問題における基礎方程式
  6.1.2 平面弾性問題
  6.1.3 亀裂尖端の応力状態と応力拡大係数
 6.2 応力腐食割れ
  6.2.1 応力腐食割れの特徴
  6.2.2 応力腐食割れ試験
 6.3 防食設計
  6.3.1 防食設計とは
  6.3.2 防食構造設計の例

(海事図書)



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カテゴリー:造船 
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