著者名: | 饒村 曜 著 |
ISBN: | 978-4-425-55121-7 |
発行年月日: | 2002/10/8 |
サイズ/頁数: | 四六判 162頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,980円(税込) |
日本の台風災害の軽減に多大な貢献をした定点観測船の活躍を中心に描く。苛酷な環境下の興味深いエピソードや貴重な資料を交えて綴る。
【まえがき】より
一九一二年(明治四五年)四月一〇日に北西大西洋で起こったタイタニック号の海難は、一四九〇名が亡くなったことが強調して語られている。しかし、全員が死亡していたかもしれないところを、積んでいた最新機器の無線通信機によって、七一一名が救助されている。このため、無線通信機を積む船が増え、船で観測したデータをすばやく気象台等に送り、逆に気象台等から危険な状態にあう可能性があるかどうかの情報をすばやく受けるという気象事業が世界的に急速に発展している。日本でも、一九二〇年に海洋気象台ができ、それまでの陸上に加えて、海上の予報にも力が入れられた。その後、日米間に暗雲が立ちこめるなか、三陸沖で日本海軍が台風に巻き込まれた。このときに得られた知識は隠され、南の島々で気象観測が始められ、日米開戦を迎える。
戦後の日本は、荒れた国土を次々に台風が襲ったため、防災対策が次々にとられていくが、そのためには台風の様子を正確に把握することが急務であった。精度のよい予報も正確な観測のうえに成り立っている。
このときに切り札となったのが、日本を襲う台風の通り道に船を浮かべて定常的に観測を行うという定点観測船で、幾多の困難を越えて三〇年以上継続されてきた。この定点観測船が、気象衛星「ひまわり」等の登場によってその役目を終えたとはいえ、日本の防災活動に画期的な貢献をしたことには違いない。本書は、この定点観測船を中心に台風と闘った観測船についてまとめたものである。
二〇〇二年九月
饒村 曜
【目次】
第一章 それはタイタニックから始まった
第二章 三陸沖台風と第四象限
一 海運業者の寄付でできた海洋気象台
二 「春風丸」の活躍
三 三陸沖で台風を突っきって大演習
三陸沖台風
台風を突っきって演習
軍事機密となった第四象限
一九三八年の海軍による大海洋観測
四 凌風丸誕生のきっかけとなった室戸台風と東北地方の冷害
五 戦争中の海上気象観測
戦争中に九〇〇hPa以下を観測した「第四海洋丸」
戦火をかいくぐった凌風丸
戦争が進むにつれ減った台風
六 本当に吹いた神風
レイテ島戦と神風
沖縄戦と神風
第三章 定点観測船
一 敗戦国日本の生きる道は海の活用
要望したが命令でしかたなくスタートした定点観測
海防艦を用いたゆえの苦労
定点観測員の日常生活
二 一般国民の知らない南の海で奮闘
南方定点観測の開始
二つの定点を襲ったパトリシア
観測強化で通年観測となる
鯨と衝突
火山灰・軽石を採取
最後の日米行政協定による定点観測
三 日本の独立と新しい定点観測業務
海上保安庁船と漁船救助
セントエルモの火
おだやかな天気と台風で大荒れの天気
続々と大型台風が襲来
四 定点観測の充実
新しい観測船「のじま」と「おじか」
小型台風の目に入る
ウンカの大群
長寿台風に翻弄
「ひまわり」の登場
南方定点の気温と風
五 苦労して続けられた定点観測の終了
横浜沖で気圧計のチェック
船体の動揺や天候に左右される高層気象観測
定点への行き帰りで黒潮を観測
定点での生物観測
最後の定点観測とその後の観測船
第四章 今も船からの観測が重要
一 長風丸の人命救助と海の測候所の誕生
二 最後の「死者が三桁の台風」
三 台風の姿から強さを読み取る
四 台風の中心では船の観測がなくなる
五 新しい通信システムでタイタニックで普及したSOSも終焉
六 最後
(気象図書)
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