著者名: | 国立環境研究所地球環境研究センター 編著 |
ISBN: | 978-4-425-55251-1 |
発行年月日: | 2009/3/28 |
サイズ/頁数: | 四六判 202頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,980円(税込) |
テレビや新聞の報道、あるいはインターネットなど、さまざまなメディアで地球温暖化が話題になっています。書店の店頭で見かける温暖化関連の書籍の数も、いまやかなりの数に上っています。
それらの中には「進行する温暖化の危機」といったものがあるかと思えば、「温暖化はウソである」といった調子のものもあります。新しい説が唱えられるたびに、情報が錯綜し、何が本当なのかわからないというのが,大方の人の感想でしょう。温暖化のことを、見聞きする機会は多いものの、正確に理解できているかというと、そうでもないというのが実際のところのようです。
本書は、このような温暖化に関するよくある質問、素朴な疑問に、温暖化を専門に研究している、国立環境研究所地球環境研究センターの第一線の研究者たちがQ&A形式で答えるもの。地球環境研究センターのニュースレターの連載記事から29話を、質問の内容に応じて温暖化の「科学」「影響」「対策」に分類しまとめたものです。地球温暖化問題を正確に理解するために最適なテキストです。
質問には込み入ったものも含まれていて、それに対する懇切丁寧な回答は非常に読み応えがあります。急速に進展する温暖化問題の議論を、冷静な頭で改めて見つめ直すことのできる一冊です。
【はじめに】より
書店に行けば、起こりうる地球温暖化の影響やその対策を論じる書籍に交じって、化石燃料消費など人為起源の温室効果ガス濃度の増加による地球温暖化を疑問視する書籍も多く見られます。むしろ、後者の方が目立っているかもしれません。何が正しいのでしょうか。本当のところがわからなくなってしまいます。
「地球温暖化のことは、見聞きする機会が多いのでよく知っているようでいて、では腑に落ちているかというとそうでもないというのが実際のところのような気がします。地球温暖化にまつわるよくある質問、素朴な疑問に、国立環境研究所で研究に従事する第一線の研究者にズバリ答えてもらいます。」という趣旨で、多くの人がもつ疑問・質問について、国立環境研究所の研究者が毎回激しい議論を積み重ねて、科学的に正確で一般の方にもわかりやすい回答を用意し、「Q&A ココが知りたい温暖化」としてニュースレターやホームページで紹介してきました。
さらに、より多くの方々の目に触れるようにと書籍化を企画し、ニュースレターに連載(2006年11月?2009年1月)しホームページにも転載した54記事のうち、前半29件については『ココが知りたい地球温暖化』と題して2009年3月に刊行しました。
本書は、後半の25件について最新情報に更新し、続編として刊行するものです。これで、これまでに公開したQ&Aのすべてが書籍化されたことになります。『ココが知りたい地球温暖化』『ココが知りたい地球温暖化2』の2冊をひもといていただければ、本当のことを知りたかった多くの疑問に対して、わかりやすい答えが見つかることと思います。
私ども国立環境研究所地球環境研究センターでは、地球温暖化をはじめ地球環境に関するさまざまな研究を進めています。私たちは、研究で得た成果を科学論文として研究者コミュニティに報告するだけでは不十分であり、環境行政に有効に生かされることが極めて重要と考えています。そのため、政策決定者や環境行政担当者に対して、正しい情報を直接的に提供することに努力しています。
それにも増して、一般の国民・市民のみなさまに、科学的に正確な情報を、わかりやすい言葉に翻訳してお伝えすることも重要と考え、さまざまな形で情報の提供を行ってきています。というのも、国の環境政策のかじ取りは政治や行政の役割ですが、その行く先を決める本当の主役は国民・市民だからです。『ココが知りたい地球温暖化』と『ココが知りたい地球温暖化2』が、地球温暖化問題を正しく理解するための一助になることを願っています。
なお、本書でも前編と同様に、通読したときの話のつながりを考慮して、内容から「温暖化の科学」「温暖化の影響」そして「温暖化の対策」に関わるものを大別し、順番を整理し直しました。とはいえ、基本的に1話完結になっていますので、どの記事から読んでいただいても差し支えありません。まずは、目次を拾い読みして、関心のあるページを開いてみてください。日頃の疑問がすっきり氷塊することでしょう。
2010年3年
国立環境研究所地球環境研究センター長
笹野泰弘
【目次】
パート1 温暖化の科学のココが知りたい!
Q1:海と大気による二酸化炭素の交換
大気中の二酸化炭素は、海洋との間で大量に交換されていて、それに比べると化石燃料の燃焼で発生する二酸化炭素の量は桁違いに小さいと聞きました。そのわずかな量が大きな気候変動をもたらすのですか。
Q2:氷床コアからわかること
過去数十万年にわたる南極の氷のサンプルを分析して得られたデータでは、気温上昇が先にあって、それに追随して二酸化炭素などの温室効果ガス濃度が上昇していると聞きました。二酸化炭素が増えて温暖化するのではなかったのですか。
Q3:森林の二酸化炭素吸収量の測定方法
森林の二酸化炭素の吸収量が国全体とか、地球全体とかでどれくらいあるか、どうやって知ることができるのですか。
Q4:地球全体の平均気温の求め方
地球全体の平均気温はどうやって求めるのですか。観測点のない海洋上や陸上奥地などの気温はどうやって推測するのですか。また、観測点の周囲の環境が変われば、気温データにも見かけの変化が出てしまいませんか。
Q5:二酸化炭素の増加が温暖化をまねく証拠
二酸化炭素が増えると地球が温暖化するというはっきりした証拠はあるのですか。
Q6:水蒸気の温室効果
大気中の水蒸気が温室効果ガスとしては最大の寄与があると聞きました。少しくらい二酸化炭素が増えたところで、水蒸気の量に比べれば小さなもので、温暖化が進行するとは思えないのですが、間違っていますか。
Q7:エアロゾルの温暖化抑止効果
化石燃料を燃やしたときに発生する微粒子は、実は温暖化を抑止する効果があると聞きました。そうだとすると、温暖化対策として化石燃料の消費を抑えるという行為は、逆に温暖化を促進することにつながりませんか。
Q8:オゾン層破壊が温暖化の原因?
温暖化の原因は、フロンガスによるオゾン層破壊のために、太陽光が地上を強く照らすようになるためではないのですか。
Q9:コンピュータを使った100年後の地球温暖化予測
コンピュータを使った天気予報で1週間先の天気もあたらないのに、コンピュータを使ったって50年後、100年後のことがわかるはずがないのではありませんか。
Q10:気候変動予測に幅があるのは?
最新のIPCC報告書では、100年後の気温上昇は1.16.4℃と予測されています。これだけ幅があると、何も予測していないのと同じではないですか。逆に、複数のモデルが同じ結果を出したからといって、モデルが正しいともいえませんよね。
Q11:IPCC報告書とは?
温暖化の科学については、IPCCという国連の機関の報告書がいつも引用されますが、一部の科学者の意見をまとめただけで、それが正しいとは限らないのではありませんか。
パート2 温暖化の影響のココが知りたい!
Q12:温暖化と極端な気象現象との関係
猛暑だったり桜の開花が例年より早かったり、ちょっと変わったことがあると何でも地球温暖化のせいみたいな報道がされますが、本当なのですか。
Q13:台風やハリケーンによる被害の増加は温暖化の影響?
最近、台風やハリケーンなどの強い熱帯低気圧による被害が増加する傾向にあると耳にしました。これは、温暖化の影響で強い熱帯低気圧が増えているためでしょうか。
Q14:海面上昇とゼロメートル地帯
温暖化すると北極の氷が融けて海水面が上昇し、海抜ゼロメートル地帯は水没してしまうと聞きましたが、本当ですか。
Q15:海面上昇で消える島国
温暖化を話題にしたテレビ番組で、海に沈む島と称して、大潮のときに海水が地面から湧き出して膝まで浸かっている映像が映されたりします。これは、温暖化による海面上昇の影響がすでに現れているということなのですか。
Q16:温暖化で収穫量は減る?増える?
温暖化によって農業に被害がでると聞きましたが、地域や作物によっては暖かくなることで収穫量が増えることもあるのではないですか。
Q17:温暖化で死亡者が増加する?
温暖化すると暑い日が増えて、暑さのために亡くなる人が増えるとよくいわれていますが、一方で、寒い日が減り、寒さのために亡くなる人が減るはずです。トータルでみればそれほど問題にはならないのではないですか。
Q18:海洋酸性化の影響
今の調子で二酸化炭素の排出が続くと、二酸化炭素が溶け込んで海水が酸性化し、海の環境に大きな影響を与えかねないというのは本当ですか。
Q19:気温上昇抑制の目標
EUは気温上昇を2℃以内に抑えるべきと主張しているそうですが、北海道のように、2℃くらいの上昇であればかえって過ごしやすくなる地域もあると思います。気温上昇抑制の目標はどういう考え方に基づいて決めているのですか。
パート3 温暖化の対策のココが知りたい!
Q20:2050年までに排出量半減とは?
2050年までに世界の温室効果ガス排出量を50%削減することを1007年のG8サミットで議論したそうですが、京都議定書の6%削減(日本)などの数字に比べ、そのような大幅な削減が議論されるようになったのはなぜですか。
Q21:温暖化対策の緊急性
米国は京都議定書から離脱するなど、独自の温暖化対策をとってきました。 自国経済に悪影響というだけでなく、当面研究開発に投資して対策技術で削減を図るということのようですが、それも合理的な考え方ではないですか。
Q22:途上国の温暖化対策は?
中国やその他の多くの途上国は、これから経済発展が進み、ますますエネルギー消費(二酸化炭素の排出)が増えるのではないかと思います。そのままほうっておいて、大丈夫なのでしょうか。
Q23:植林による温暖化対策
成長中の樹木は二酸化炭素を吸収してくれるそうですが、木はいずれ枯れて朽ち果てるもので、そうなれば二酸化炭素を吐き出すことになって、しょせん、植林などは温暖化対策としては一時しのぎではないですか。
Q24:森林減少の防止による温暖化対策
世界の森林は減少傾向にあると聞きます。温暖化対策でいくら化石燃料の消費を減らしても、森林減少が続けば温暖化は進んでしまうのではないですか。また、植林による対策は森林減少に比べると焼け石に水ではないですか。
Q25:二酸化炭素を回収・貯留する技術とは?
空気中の二酸化炭素を回収して地中や海底に貯留する技術が開発されつつあるそうですが、この技術が実用化されれば、温暖化を心配する必要はないのではありませんか。
Q26:「炭素税」は効果がある?
二酸化炭素の排出量を下げる手段としてエネルギーに課税する『炭素税』が提案されているそうですが、本当に効果があるのでしょうか。また、新たな税を課すと経済活動にダメージを与えるのではないでしょうか。
Q27:車のかしこい使い方
私たちにもできる身近な温暖化対策として、車の効率的な使い方があると思います。具体的にはどんな工夫があるのでしょうか。また、どれくらい二酸化炭素削減に貢献できるのでしょうか。
Q28:排出削減目標を達成できない場合
日本が京都議定書で約束した排出削減目標(1990年比で6%減)を達成できなかった場合、どういう問題が発生しますか。
Q29:二酸化炭素の削減と生活の質
二酸化炭素濃度の上昇をどこかで止めるためには、二酸化炭素の排出量を現在の半分以下にまで減らさないといけないと聞きました。よほど生活の質のレベルを落とさない限り、そんなことは不可能ではないですか。
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