著者名: | 吉野秀男 著/布目明弘 増補改訂協力 |
ISBN: | 978-4-425-00095-1 |
発行年月日: | 2023/1/28 |
サイズ/頁数: | B5判 124頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥2,530円(税込) |
コースラインを引けますか?小型船舶の海図問題の解き方を順序立てて、航海計画の立て方、三角定規、デバイダーの使い方、線の引き方など基本に忠実に解説。
【新訂版発行にあたって】
私が海図の存在を初めて知ったのは中学生の頃、海賊をモチーフにしたある有名な漫画で、航海士のキャラクターが敵対する海賊団から特殊海域の海図を盗み出すシーンを見たときでした。航海に海図が必要不可欠なものであることを知ると同時に、「普通の地図とは何が違うのだろう?」と疑問を抱いたことを覚えています。その後、学校で船について学び、航海士の実務に就いて海図に深く関わる中で、海図の持つ面白さに魅了されていきました。
海図も近年のDX の流れの中にあります。大型船の多くは電子海図情報表示装置(ECDIS) の搭載が義務付けられ、紙海図を搭載しない船も多くなっています。私自身、船員として働き始めて間もない頃、ECDIS が新たに搭載され、先輩船員らと一緒に試行錯誤しながら使い方を身につけた思い出があります。本改訂ではその経験を活かし、電子海図(ENC) に関する記述を追記しました。電子海図には紙海図よりも便利な点がある一方、電子海図ならではの注意点も存在します。本書ではその概要に触れるだけに留めますが、電子海図をご存知ではなかった方には、まずは実際に電子海図に触れていただきたいと思います。
初めて航行する海域を、海図なしで航行することは大変危険です。海図を正しく利用することは、船を操る人にとっての必修科目です。つまり、海図に関する専門的な知識や技能を確実に身につけていただく必要があります。小型船舶操縦士の試験で出題される問題については、原著者の吉野秀男さんによる素晴らしい図解と説明で、確実に解けるようになっていただけるかと思います。本改訂ではさらに、免許取得の過程を通して身についた知識・技能を実際の安全な航海に結びつけていただくため、海図の最新維持、具体的な位置確認の方法といった運用面について加筆いたしました。
本書が海を利活用する皆様の一助になれば幸いです。
最後に、本書の改訂に携わる機会をくださった、成山堂書店の皆様、そして富山高等専門学校校長 國枝佳明船長に深く感謝申し上げます。
2022年12月
布目明弘
【まえがき】より
船に乗って海洋レジャーを楽しむのも、陸上の観光地に旅行するのも全く同じことです。その目的は、決められた時間内に楽しく、有意義に過ごし、型にはまった日頃の生活から飛び出して心身をリフレッシュし、明日への活力をはぐくむことでしょう。
しかし、ともすると無理な計画であったり、天候や自然の力を軽視する余り、障害事故や人身事故に至ることもあります。
特に、海洋レジャーの場合、海(湖沼)は日常生活の場ではありませんので、そこで起こるいろいろな現象についての知識も少なく、不慣れであるために、海上での事故は残念ながら陸上のそれより高い頻度で発生しています。
これから小型船舶の操縦者免許を取得して、海洋レジャーを楽しみたいと思われる方々は、海、船、機関、気象や関係法規の知識をしっかりと習得したうえで、まず船の操縦に慣れることが必要です。しかし、慣れてくればとかく単独で行動したくなるもので、そんな時が最も危険です。
どんな短時間の航海でも。必ず航海計画を立てて行動してください。
航海は気象と海象の状態がよいことが前提条件ですが、自分の乗る船の性能(速力、燃料消費、堪航性能等)やその海域のその時の海潮流等を調査したうえで、風向、流向流速等を勘案して、往航と復航の針路と所要時間を海図に記入し、航海計画を検討のうえ決定する必要があります。
海図を使いこなすこと(チャートワーク)はそう難しいことではありませんが、ともするとよく分からないといって敬遠する人がいます。これは、普段の生活の中では使ったこともない、三角定規やデバイダーが出てきたり、コンパスだマイルだノットだと言う聞き慣れない言葉も出てくることが原因だと思います。
確かに取りつきにくい作業でしょうが、わずかな基本を知って、その作業に慣れることがポイントです。分かってくれば航海計画を立てることによって、航海に出る前からその航海を楽しむこともできるようになります。
本書は、私が永年行った小型船舶の実技と学科の教習の経験から、初めて海図に接する方々のためにできるだけ分かりやすいように、手順を図解してみました。皆さんの海図作業の参考になれば幸いです。
どうか確かな航海計画を立てて、安全な航海を楽しんでください。
【目次】
1.航海計画って何?
1−1 航海計画
1−2 海図
1 縮尺による海図の種類
2 図法による種類
3 ヨット・モーターボート用参考図
4 航海用電子海図(ENC)
1−3 水路書誌
1 水路誌
2 特殊書誌
3 プレジャーボート・小型船舶用港湾案内
2.航海計画を立てよう!
2−1 出港前の準備
1 航海計画を立てる前の準備と心得
2 情報の収集
2−2 出港前の整備・点検と搭載品
1 船体・機関の整備と点検
2 積み込み品の確認
3 天気予報とその傾向の把握
2−3 航路の選定
1 安全な離岸距離と変針点
2 航海距離と所要時間
3 狭い水道や危険水域の航行
4 避難港の選定と錨泊の注意
3.海図って何?−海図の基礎知識−
3−1 平面図と漸長図
1 平面図
2 漸長図
3−2 漸長図の緯度と経度
1 緯度と緯度目盛
2 経度と経度目盛
3 緯度と経度の表示
3−3 海図の緯度と経度の表示について
1 緯度
2 経度
3 海図作業(チャートワーク)上の注意事項
3−4 コンパスカードとコンパス図
1 コンパスの目盛
2 真方位
3 磁針方位と偏差
4 偏差の修正
5 コンパス方位と自差
6 自差の修正
7 コンパス誤差とその修正
8 方位の読み方
3−5 海図図式
3−6 航路標識と灯質
1 主な浮標式
2 灯質
3−7 海図用具とその使い方
1 鉛筆と消しゴム
2 三角定規
(1)A定規
(2)B定規
(3)A定規とB定規の組み合わせ使用法
3 デバイダー
4.航海計画を海図に記入しよう!(チャートワーク)
4−1 海図に船位を入れる
1 方位線と距離で入れる
2 方位線と方位線で入れる
3 重視線と方位線で入れる
4 緯度と経度で入れる
5 緯度と経度を読む
4−2 針路と変針点
1 コンパス針路(方位)と磁針路(方位)
2 正横と変針
4−3 レーダーの測定方位を使って位置を記入する
1 レーダーの真方位指示と相対方位指示
2 コンパス針路と相対方位指示による方位と距離
4−4 重視線とコンパス方位線
1 重視線を使って自差を出す
2 その自差を使ってコンパス方位を修正する
3 重視線と磁針方位線で位置を記入する
4−5 潮流がある時の航法(流潮航法)
1 流向と流速
2 実航針路と実航速力を出す
3 流向と流速を加味して磁針路を出す
4 推測位置と実測位置から流向と流速を出す
5.例題(海図問題)を解いてみよう!
5−1 全航程を出す
5−2 所要時間を出す
5−3 クロス方位法により位置(緯度、経度)を出す
5−4 レーダーの方位と距離から位置(緯度、経度)を出す
5−5 重視線から自差を出して、方位線で位置(緯度、経度)を出す
5−6 実航磁針路と実航速力を出す
5−7 潮流の流向・流速を出す
5−8 磁針路を出す
6 海図の最新維持
6-1 紙海図の改補
1 事前準備
2 水路通報
3 小改正
4 新版・改訂
6-2 電子海図のアップデート
1.インターネットからダウンロードする方法
2.CD を郵送で受け取る方法
7 安全な航海のために
7-1 海図は「読む」もの
7-2 位置の確認
1 方位の測り方(磁気コンパスの使い方)
2 距離の測り方(レーダーの使い方)
3 水深の測り方
7-3 避険
1 方位による避険線
2 距離による避険線
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