なぜ海外においてLCCが成長しているのか、日本ではなぜ新規航空会社が成長できずにいたのかについてその要因を考察し、今後我が国で海外のようにLCCが成長する可能性やそのために必要な要件を探る。
【はじめに】より 980円、780円、250円。 2011年後半から2012年にかけて販売された国内航空券の片道運賃である。座席数限定のキャンペーン運賃ではあるものの、低運賃を武器にした国産のLCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)の設立が相次ぎ、いよいよLCC後進国といわれた日本におけるLCC時代の到来を感じる。日本の空が大きく変わる、そんな潮目の時期である。 2010〜2011年にかけて、航空をとりまく状況は大きく、そして急激に変化した。国の成長戦略において、LCCの就航促進やオープンスカイ政策が重要課題とされ、海外からは有力LCCが続々と日本への就航を果たし、JAL、ANAは相次いで系列LCCを設立した。スカイマークが価格競争の先鋒となりインパクトのあるキャンペーン運賃を提供し、そしてついに2012年には日本版のLCCが離陸する。 海外ではLCCが、これまで航空を利用していなかった層や、まったく旅行をしていなかった層を取り込んで大きく成長している。またLCCの躍進に伴い、それまで旅客取扱の少なかった(あるいはほとんど利用されていなかった)空港がLCC受入空港として成長し、地域活性化に寄与している。LCCの参入と航空会社間の競争激化により航空運賃は値下がりし、消費者は移動のための多様な選択肢を享受できるようになっている。そうした変化が日本でも生じるのだろうか。 本書では、なぜ海外においてLCCが成長しているのか、他方我が国ではなぜ新規航空会社が成長できずにいたのかについて、その要因を考察し、今後我が国で海外のようにLCCが成長する可能性やそのために必要な要件について検討する。これまでにもLCCについて多くの研究や紹介がなされているが、その多くは、経済学や公共政策、交通工学などの学術的観点によるものか、LCCの特徴や利用方法を紹介する「ハウツー本」である。本書では、経営学や競争におけるイノベーション戦略の視点に軸を置き、伝統企業が新興企業に顧客を奪われるまでを説いたクリステンセンのイノベーションの理論を用いて、既存の航空会社とLCCの競争戦略やビジネスモデルの違いおよび両者の競争の帰結について論じる。さらに、このイノベーションの理論を踏まえて、今後の日本におけるLCC成長のための要件を検討する。航空運賃が高止まりし、LCC後進国であった日本であるが、にわかにLCCへの認知や関心が高まり、LCCビジネス拡大の機運が高まっている。2012年、国産LCCが就航し日本がLCC元年を迎えるにあたり、本書がLCCビジネスおよび航空産業全般の理解の一助になれば幸いである。
【読者からの声】 ●K様 29歳 「LCCについて、色々な角度から書かれており、グラフ等も多数用いていたので、とても分かりやすかった。他のLCCの本は、著者の意見が主に書かれているが、当本は事実が主に書かれていたため、とても参考になりました」
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