著者名: | 坪井 潤一 著 |
ISBN: | 978-4-425-85411-0 |
発行年月日: | 2013/3/25 |
サイズ/頁数: | 四六判 150頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,980円(税込) |
カワウを悪者にする水産資源管理はもうやめよう!
元来、カワウは″水に潜って魚を食べる鳥″。魚や鳥の暮らす水辺環境をヒトの都合だけで管理してはならない。カワウの生態や取り巻く環境を理解すれば、やるべきことは見えてくる。
著者が試行錯誤を重ねてきた対策方法やカワウから教わったことが満載の本書を読んで、できることから始めよう!
【はじめに】より
筆者とカワウとの出会いは、母校北海道大学水産学部での講義だった。小城春雄先生が静かな語り口で説明する。
「最近、本州の河川ではカワウという鳥が急激に増えていて、水産被害や森林枯死が深刻な問題になっています」。
2000年、当時22歳の筆者は、自分がカワウを研究対象とし、ましてやカワウの本を書くなどということは想像もしていなかった。しかし、講義を聴くうちに、カワウ問題自体が河川・湖沼といった陸水域のいびつになってしまった生態系の象徴している、ということは、何となく理解できた。
山梨県水産技術センターに就職して1年が経った2003年春、“カワウ担当”を任された。水産職で就職したにもかかわらず、初めての主担当が魚類ではなかったショックは相当なものだった。水産試験場に鳥類を専門とする研究員などいるはずもなく、カワウ担当は誰もが敬遠する「専門外の仕事」だった。しかし、イワナやヤマメといった渓流魚をこよなく愛する筆者は、好きな魚の研究を堂々と行うためには、まずは鳥の研究で結果を出すしかない、そう決心しカワウと向き合い始めた。
当時、山梨県水産技術センターでは個体数カウントなど基礎的な調査が始まったばかりで、漁業協同組合でも被害対策に手をこまねいている状態だった。それでは、と文献をあさってみたものの、カワウによる水産被害、被害対策に関する報告書やカワウの生態に関する論文はあったが、個体数が増えすぎて厄介者になりつつあったカワウとどう付き合っていけば良いか、そのヒントになりそうな書籍は皆無であった。残念ながら、それは現在も変わっていない。
そこで、本書はでは、水産試験場でカワウ担当、アユ養殖担当であり、アユ釣り大好き人間でもある筆者が、カワウと喧々諤々で向き合ってきた実体験に基づき、カワウやその生息環境、被害の真相とその解決策、カワウと人との理想的な付き合い方について紹介したい。読者の皆さんと水辺の住人カワウとの関係がより親密になれば幸いである。
平成25年3月
筆者
【目次】
第1章 水辺の住人カワウ
1-1 カワウの暮らし
1-2 水陸空の覇者
1-3 新天地を求めて500km
1-4 カワウは川の豊かさのバロメーター
第2章 カワウはなぜ急に増えたか
2-1 つい最近までは絶滅危惧種
2-2 養殖魚の放流とカワウの大増殖
2-3 カワウ急増による一番の被害者
2-4 カワウ急増による魚類資源の減少
2-5 カワウ急増による魚類の小型化
2-6 カワウ急増による水生昆虫の急増?
第3章 カワウによる被害
3-1 水産被害
3-2 アユのはなし
3-3 黒い鳥の白い糞
3-4 国土の喪失? 島での大繁殖
第4章 カワウ被害対策
4-1 世界中で展開されるカワウ対策の実態
4-2 カワウの押し付け合いを避けるために
4-3 個体群管理と個体数管理
4-4 対策は科学的に計画的に
4-5 魚のにぎわいを取り戻せ!
4-6 カワウに強い川づくり
第5章 カワウを利用する
5-1 食するより愛でるべし
5-2 カワウを使った伝統漁法
5-3 糞は宝の山
5-4 うまい作戦
第6章 カワウと付き合う
6-1 カワウ問題の解決に向けて
6-2 末永いお付き合いを
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