自動車リユースとグローバル市場ー中古車・中古部品の国際流通ー


978-4-425-93141-5
著者名:浅妻裕・福田友子・外川健一・岡本勝規 共著
ISBN:978-4-425-93141-5
発行年月日:2017/6/18
サイズ/頁数:A5判 284頁
在庫状況:在庫有り
価格¥3,080円(税込)
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日本国内で使用された中古車・中古部品の国際的なリユースについて、流通面を中心に、その市場の歴史や制度の変遷、環境や産業面での規制、商品調達から輸出入、商品の仕向地の決定要素などを、各国の事例をあげながら、分析解説する。世界中で活躍する日本の中古車の国際市場の動向をまとめた意義ある一冊。

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【まえがき】より

日本は自動車輸出大国であり、諸外国に出向くと多くの国で日本製自動車の活躍を目にすることができる。それは日本から新車で輸出されたものかもしれないし、現地工場で生産されたものかもしれない。あるいは他国の工場で製造されたものが輸入されるケースもあるだろう。
ところが明らかにそれらに当てはまらない自動車を目にする国々がある。たとえば「日本に一番近いヨーロッパ」と言われるロシアのウラジオストクでは、製造後幾年も経っていないトヨタの「プリウス」や、古めかしい1990年代製のセダン、「○○運輸」などの社名が書かれた4 トントラックなど、多種多様な日本車が街中にあふれている。トラックなどは一瞬、現地進出した日本企業のものでは、と思うかもしれない。
実はこれらの多くが日本から輸出された中古車である。その証拠に、検査標章や車庫証明といった公的書類、「トヨタビスタ○○」などといった販売店名が入ったステッカーなどが貼ってある。ロシアと日本で検査標章が共通(しかも日本語で)になったというニュースは聞いたことがない。さらにロシアは右側通行の国であり本来であればハンドルは左側席についているべきである。しかし大半の自動車が日本と同じ右ハンドル車なのである このような状況はロシアに限らない。本章第8 章以降でも紹介されるように、ミャンマーをはじめとした東南アジア諸国、アフリカ諸国、南米諸国、ニュージーランドなど中古車の輸出先は世界中に広がっている。経済のグローバル化が進んだいま、自動車リユースはもはや国内では完結せず、国境を越えグローバル市場を形成している。
国内でも、自動車リユースのさまざまな場面でこのことを実感する。いまや中古車流通の中心はオークションであるといってよい。「一点もの」と言われる中古車であるがゆえに、買い手が望む中古車を希望価格で入手するのは容易ではない。当然、売り手側も同じ状況である。オークションにはその需要と供給をマッチングさせる重要な機能がある。全国各地に中古車オークション会場があるが、そこでは多数の外国人バイヤーを目にすることができる。なかでもムスリム(イスラム教徒)の存在が目立つ。オークション施設内の一室が礼拝施設である「ムサッラー」となっていたり、レストランではムスリム対応の「ハラール」メニューが提供されていたりする。世界中からやってきた外国人バイヤーはこのようなオークション会場で中古車を買い付け、世界各地に輸出するのである。
中古車が輸出されれば、その補修用の自動車中古部品(以下、本書では単に「中古部品」と略する)の海外での需要も高まる。日本のように、「トヨタ部品〇〇共販」といった新品純正部品の供給企業(システム)が発達していない国では新品部品の調達が難しいのは当然だが、そもそも年式が古いものは新品部品が存在しない。そこで、日本で廃車となった自動車の中古部品への需要が発生する。中古部品はおもに日本国内の「廃車処理」を専門とする工場で生産される。これを「自動車解体工場」「自動車解体業(者)」と呼ぶ。このような工場を初めて訪問する人は、何らかの作業をしている多数の外国人の姿に驚くであろう。彼らは東南アジア、中東やアフリカ諸国からやってきた「バイヤー」である。多くの場合、彼らは輸出先国に籍を置く中古部品ディーラーの社員であるが、日本の自動車解体業界では「バイヤー」で通っている。現地から派遣され、解体工場内に数か月住み込み、せっせとオーナーのいる国に日本の自動車解体工場で取り外した多種多様の中古部品をコンテナに積めて送っている。
日本にはこのような自動車解体業者が集積している地域がいくつか存在し、そこでは工場内だけではなく、街中にも独特の雰囲気が漂う。中古車貿易業者の集積地でも同様である。そこでは、自転車に乗ったバイヤーが自動車解体工場のオーナーに道すがら、流暢な日本語で挨拶をしている姿を目にする。このような地域にはタイ料理、インド料理といった「エスニック・レストラン」があり、日本に居ながらにして異国情緒をたっぷりと味わうことができる。
やや専門的な内容もあるが、本書は学生にも読んでいただきたいと思っている。近年の教育界では、キャリア教育との関連で、「グローバル人材」や「グローバルキャリア」といった標語が花盛りである。しかしそこで念頭に置かれる(むしろ、学生が念頭に置いてしまう)「グローバル」とは、どのような世界だろうか。やや画一的なイメージで捉えられてはいないだろうか。
ひるがえって、いわば中小零細企業が多数を占める自動車解体業者が集まる地域では、世界中の多くの地域出身の方と関わることができる。しかも、それは歴史的に脈々と続いてきたものである。実は、足元にある自動車解体工場や中古車オークション会場からグローバル市場が透けて見えるのである。中古車や中古部品のマーケットは格好の教材であり、筆者らはこういう現場を教育と連動させたいと考える。
本書では「モノの行方」という点も意識している。日本の自動車保有台数は世帯数を凌いでおり、非常に身近な乗り物である。しかし多くのユーザーはその自動車を手放したのち、どのように流通しどこに向かうのか、誰の手に渡るのか、ということに関心が高いとはいえないだろう。他者の手に渡った自動車のなかには、国境を越えてもう一働きも二働きもするものも多いということを自動車ユーザーに知ってもらえばと思う。国境を越えた資源循環という点からは、中古車や部品が海外に渡っていることを知るにとどまらず、資源輸入大国である日本が今後資源とどう向き合っていくべきか、あるいは国境を越えたリサイクル・廃棄物処理にどのように向き合っていくべきか、という課題に関するヒントを提供することができればとも考えている。
いまや人やモノ、カネ、情報の流れは、そのブロック化への懸念を潜在的にはらみつつも、ますます活発化し、世界経済のグローバル化のベクトルが大きく変化することは考えにくい。本書ではその動向を読み解くひとつの鍵として、国境を越える自動車リユース、それを支える国際流通をさまざまな観点から紹介する。岡本・浅妻・福田(2013)を原型としつつ、筆者らの国際流通や国際リユースに関するこれまでの断片的な成果を、これらの点を意識しながらまとめた。研究者だけでなく、学生や自動車ユーザー、あるいは自動車流通や自動車リサイクルに携わる実務家の方がたにも関心を持っていただければと、やや専門的な内容を含みつつも、なるべく表現を平易にするなどの工夫を施したつもりである。
課題も多々残されてはいるが、このような切り口の書籍を世に問う意味は大きいと考えている。本書が自動車リユース業界において、これまで蓄積されてきた知識や経験の再評価に多少なりとも寄与できれば幸いである。

2017年5月
著者一同

【目次】

第1章 自動車国際リユースをみる視点  1.1 本テーマの意義に関する多様な視点
 1.2 本書の構成と用語の定義

第2章 越境する自動車リユースの統計分析  2.1 中古車流通量
 2.2 中古部品輸出量
 2.3 輸出量把握の意義と課題

第3章 国際リユースの歴史と制度  3.1 これまでの歴史研究
 3.2 中古車輸出の歴史
 3.3 中古部品輸出
 3.4 中古車や部品流通に関わる制度について
 3.5 輸出入制度の国際流通への影響
 3.6 極立つ国際リユースの特徴

第4章 中古車輸出の地域特性  4.1 本章の目的
 4.2 日本からの中古車輸出にみる地域別・港湾別特徴
 4.3 地域別・港湾別にみる中古車貿易業とエスニック・ビジネスの展開
 4.4 結論―太平洋側と日本海側の差異―

第5章 中古車の仕入れと輸出  5.1 ユーザーから輸出に至るまで
 5.2 中古車の仕入れ
 5.3 中古車輸出をめぐる貿易制度の変化
 5.4 輸出に向けた輸送手続きと荷物の流れ
 5.5 商品代金回収のための手続き
 5.6 税等の還付手続き
 5.7 輸出手続きが与えるビジネス収益への影響

第6章 中古部品の集荷と輸出  6.1 使用済自動車の発生と中古部品の生産、それを担う解体業者
 6.2 中古部品の輸出ルート
 6.3 中古部品輸出の新展開
 6.4 補論―中古エアバッグのインターネット販売問題

第7章 移民企業家と中古車・中古部品貿易業  7.1 移民とエスニック・ビジネス
 7.2 トランスナショナリズムと社会関係資本
 7.3 エスニック・ビジネス研究
 7.4 パキスタン人とアフガニスタン人の世界的なビジネス展開

第8章 ロシア  8.1 統計からみるロシア向け中古車・中古部品輸出
 8.2 ロシアとの中古車貿易の歴史
 8.3 ロシアにおける中古車販売市場の成立
 8.4 近年の市場の状況
 8.5 ロシア市場の今後と対応

第9章 タイ・ミャンマー・マレーシア  9.1 各国別流通量の把握
 9.2 タイ市場
 9.3 ミャンマー市場
 9.4 マレーシア市場
 9.5 各国市場の比較

第10章 アラブ首長国連邦(UAE)  10.1 UAE における中古車市場の形成と担い手
 10.2 中古車流通量について
 10.3 現地中古部品市場の流通構造
 10.4 UAE 市場の特殊性

第11章 ニュージーランドと太平洋島嶼地域  11.1 ニュージーランドの中古車市場
 11.2 オークランドの中古車市場
 11.3 ニュージーランドと太平洋島嶼地域の廃車処理
 11.4 事例から見えてきたこと

第12章 チリとその周辺国  12.1 中継貿易拠点としてのチリ
 12.2 車両カテゴリー別の再輸出傾向
 12.3 チリの中継貿易機能
 12.4 ZOFRI における中古車・中古部品貿易業の歴史

第13章 研究の到達点と課題  13.1 自動車リユースに関わる多様なテーマ
 13.2 各国市場の比較
 13.3 本書に残された課題



この書籍の解説

私(担当M)は鉄道が好きなので、海外の映像などで「日本出身」の鉄道車両を見ると、「元気でやっているな」と思います。車好きの方は、海外で昔の型の日本車を見かけたとき、同じような気持ちになるのでしょうか?
海外で新車の日本車が走っていれば、新車が輸出されたものか、現地工場で作られたものかな、と思うかもしれません。2022年は半導体不足により輸出台数が減っていますが、日本は自動車輸出大国なのです。しかし、ロシアや東南アジア、アフリカや南米で、その国仕様でもない日本車が、しかも日本の車検シールをつけたまま走っている場面を見たらどうでしょう?これ、新車じゃありませんよね?
実はこれらは、日本から輸出された中古車なのです。日本の中古車輸出ルートは今や世界中に広がって、グローバル市場を形成しています。その中心はオークションで、希望の中古車を手に入れるため世界中のバイヤーが集結しています。
今回ご紹介する『自動車リユースとグローバル市場』は、日本の中古車が集められ、所定の手続きを経て輸出され、現地で販売されるまでを段階別に詳細に解説します。機械が取引されれば、部品の市場も形成されます。こうした中古部品の調達経路についても、詳しく解説しています。アウトローもののドラマや映画で出てくる自動車解体工場は、実は重要な生産拠点でした。こうした解体業者が集まる地域独特の課題についても触れられています。
大事に乗ってきた車は、手放したあとどこへ行くのか?もしかしたら海外バイヤーの目に留まって外国へ渡り、新オーナーのもとでもうひと働きしているかもしれません。そのルートに光を当てることで、取引の正当性についてもチェックの目が届き、より適正なリサイクル・廃棄物処理が進む可能性も高くなるでしょう。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『自動車リユースとグローバル市場』はこんな方におすすめ!

  • 中古車販売業、自動車リサイクル業に従事する方
  • 自動車流通を研究する方
  • 自動車輸出の窓口となる港の自治体の方

『自動車リユースとグローバル市場』から抜粋して3つご紹介

『自動車リユースとグローバル市場』からいくつか抜粋してご紹介します。日本国内で使用された中古車・中古部品の国際的なリユースについて、流通面を中心に、その市場の歴史や制度の変遷、環境や産業面での規制、商品調達から輸出入、商品の仕向地の決定要素などを、各国の事例をあげながら、分析解説します。

中古車輸出の地域特性(日本海側)

日本海側のビジネススタイルは、ロシア向けへの依存に起因する国内での拠点形成が特徴です。伏木富山港周辺、新潟東港周辺、小樽港周辺の日本海沿岸地域には、パキスタン人企業家をはじめとする中古車貿易業者の集積地域が形成されました。

ロシア向けの中古車輸出はロシア船員に有利な仕組みのもと外国人には複雑な手続きを課していたため、パキスタン人企業家は1995年の規制緩和までロシア向け市場には参入できませんでした。規制緩和に伴ってパキスタン人は日本海沿岸の主要貿易港周辺に集積しはじめ、店舗を設置するようになりました。この傾向は、特に富山県で顕著でした。パキスタン人をはじめとする外国人企業家とロシア人企業家 (船員)による協力関係のため、集積が必要だったのです。

富山県の場合、移民企業家の集積拠点は射水市と富山市、特に国道8号線沿いです。港が近く、ロシアも近いという理由でこの場所が選ばれ、1996年以降パキスタン人企業家が急増し、最盛期の2008年頃には250店舗程に増えました。こうした企業家の中には、日本人と結婚して在留資格を持つ人も多くなっています。

新潟港では1989年以降中古車輸出が始まりました。入港したロシア船の船員数と中古車輸出台数がほぼ同数であることが指摘されており、ロシア向け中古車輸出が船員ありきのビジネスであることが裏付けられています。

北海道の小樽港の場合、パキスタン人企業家の初期参入が遅く、日本人、ロシア人に続いて1994年頃ようやくパキスタン人の初期参入者が登場しています。2000年代に入り、日本海沿岸の中古車貿易業に2つの転機が訪れました。第一の転機は2005年7月、日本政府が旅具通関による中古車輸出を停止したことです。この制度変更によってロシア人企業家が船員として来日する必要性がなくなり、ビジネススタイルが変わりました。店頭展示販売をして現金決済していたものが、インターネット経由でのオークション仕入発注が可能になり、店舗が不要になったのです。

第二の転機は、2009年1月、ロシア政府が中古車の輸入規制を大幅に強化したことです。この結果、日本海沿岸に店舗を設置していた中古車貿易業者は大打撃を受け、日本海沿岸の集積地域から徐々に撤退しました。しかし一部のパキスタン人中古車貿易業者は日本海沿岸地域に拠点を残し、小規模な事務所と郊外の在庫保管スペースを持つ業態で経営を維持しました。

太平洋側と日本海側では、中古車輸出ビジネスに異なった特徴があります。日本海側が対ロシアの輸出に依存してきた一方、太平洋側では特定の地域への依存度が低い港も多くなっています。相手国の規制等の影響を受けて輸出量が減った港の在庫が別の港に流れる現象が起こり、国内で競合が起こることがあります。
ロシアによるウクライナ侵攻後は、ロシア国内の自動車需要が急上昇したため、伏木富山港には輸出を待つ中古車が捌ききれないほど集まっています。

中古車の仕入れと輸出

輸出される中古車は、きちんと国内流通や輸出のための手続きを経ています。国内ユーザーが手放した自動車は、リユース、リサイクルのいずれかへ流通します。さらにリユースは国内流通と国外流通に分かれます。手放された車の引き取り手は、新車ディーラー、中古車ディーラー、自動車整備工場、事故時ならば保険会社等です。現在これらの流通の中心になっているのは中古車オークションです。

《オークションの仕組み》
貿易業者の多くは、オークションから中古車を仕入れています。会場の受付で手続きを済ませ、すり鉢状の段差のついた競り会場に入ります。正面の巨大モニターに映し出される中古車を確認し、手元のボタンを押して入札します。1台10秒程度の高速で競りは進みます。しかし、現在ではインターネットを用いたオークションが主流となっています。貿易業者には外国人が多いのですが、日本のオークション会員資格を得るのは保証人等のハードルがあります。

《修繕》
仕入れた中古車は、必要なら修繕してから輸出します。修理業者の選定においては、技術よりコストの安さを重要視することが多いようです。部品はメーカーの純正部品会社から購入することもありますが、コスト面から解体業者から購入することが多くなっています。修理業者・解体業者ともに、多くの外国人が参入しています。

《輸送段階と輸送手段》
中古車の輸送手段は、コンテナを使うか使わないか、そのコンテナが1本単位で借りたもの(FCL)か、他社の荷物との相乗り(LCL)か、FCLの場合はバンニング(詰め込み)を輸出者自らが行うのか等によっても異なってきます。
FCLでバンニングを輸出者が行う場合は、輸出者は船社からコンテナを借り、荷物を詰めます。シールを施したあと船積港の保税地域に送ります。コンテナを使わない場合や、LCLの場合は、車両運搬車か自走によって運びます。

運び込まれた中古車は、コンテナを使わない場合はRo-Ro船に積み込まれたり、在来船の甲板にクレーンで積み込まれたりします。コンテナの場合はガントリークレーン等でコンテナ船に積み込まれて輸送されます。コンテナがRo-Ro船で運ばれることもあります。
中古車輸出のコンテナ化率は年々上昇しており、2010年代冒頭には4割程度に達しています。特にUAE、南アフリカ共和国、パキスタンなどへの輸出では8~9割程度になっています。
また、内陸の仕出地から内陸の仕向地までの陸送と海上輸送を組み合わせた複合一貫輸送サービスを行う業者も多くなっています。このサービスは、特にアジアやアフリカの内陸国向け輸送において有力な選択肢です。

SNSを眺めていると、「車が盗まれてしまった!」というオーナーの嘆きを目にすることがあります。こうした盗難車が輸出されてしまうことを防ぐため、様々な方策が講じられてきました。ロシア向け中古車輸出が最多だった伏木富山港では、2002年以降積み出し埠頭の制限や、検数人によるチェックなどの措置がとられるようになり。「富山方式」として他の港湾でも導入されるようになりました。

マレーシアの中古車市場

マレーシアは、シンガポール、インドネシア同様、日本と同じ右ハンドル標準の国であり、日本からの中古車や中古部品の輸出がみられます。またマレーシアは、ドバイと並ぶ二大中古部品輸出拠点となっています。

中古部品の国際的な流通ルートを持っているのは華僑とパキスタン人、アフガニスタン人バイヤーだといわれますが、前者の拠点がマレーシアで、後者の拠点はドバイをはじめとするUAE諸国であると考えられています。

マレーシア自動車工業会の資料によると、マレーシアの自動車メーカー別の新車販売台数(2013年)における日本メーカーのシェアは20%を割っています。マレーシアはアセアン諸国の中では最もモータリゼーションが進んだ国です。しかしマレーシアにおける中古車の輸入は、国内自動車メーカー2社(プロドゥーア、プロトン)の保護のため、輸入許可証を取得した者以外は一切行えません。輸入許可証も非商業目的での使用や官公庁、王族等による利用に限られています。その他、マレーシアにおいて製造困難とされる特殊車両(救急車等)は輸入許可の取得が可能な場合があります。なおマレーシアでの輸入自動車(2013年)のうち、日本からの輸入が全体の60%以上を占めています。

中古部品市場(使用済自動車解体含む)について、マレーシアの中古部品市場で流通する日本製中古部品の推定割合は90%にも上るといわれます。このことは二大国産車メーカーのシェアが高いこの国において、日本発の中古部品は国内需用ではなく、海外への再輸出用となっていることを示しています。主たる輸出先はアフリカや中東で、アセアン諸国への輸出の割合は低いそうです。日本から輸入された中古部品を求めて世界中のバイヤーがマレーシアへと入国していますが、実は日本の自動車解体業者・中古部品業者も、売れ筋の中古部品を求めてマレーシアへ渡航しているのです。これは海外バイヤーの中古部品需要にこたえる目的や、グローバルな経営基盤を指向する目的が考えられます。日本人の中古部品ディーラーが、ニュージーランドで日本製の中古部品を調達し、マレーシアの市場へ供給するケースも確認されています。

著名な中古部品市場集積地としては、クアラルンプール郊外のクランやケポンがあります。マレーシアの中古部品販売業者は5,000社以上存在するといわれています。マレーシアには自動車に特化した解体業者は存在せず、解体ビジネスはおもに中古部品販売業者がサイドビジネスで行っています。日本の自動車解体業がマレーシアへ進出し、中古部品販売を主としたビジネスを展開している例もあります。

東南アジアの他の国とは違い、マレーシアは世界的な流通のハブとしての地位を確立しています。また、マレーシアでの中古部品市場には華人系ディーラーが多くを占めていますが、中古車ディーラーは政府の規制によりマレー系に限定されています。国内メーカー・自国民の保護政策が、マレーシアの独特な市場を形成したのかもしれませんね。

『自動車リユースとグローバル市場』内容紹介まとめ

日本から世界中へ輸出されている中古車。中古車は仕入れから輸出までどのようなルートを辿るのか?これまでの歴史や制度の検証、現状の統計分析とともに、地域特性や移民起業家との関係についても解説します。併せて中古部品市場についても紹介。後半では、国別の現況について述べています。

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カテゴリー:物流 
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