著者名: | 一般財団法人 みなと総合研究所クルーズ総合研究財団 監修 |
ISBN: | 978-4-425-39491-3 |
発行年月日: | 2018/8/28 |
サイズ/頁数: | A5判 232頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥2,860円(税込) |
現在、クルーズ人口は増加の一途を辿っており、国は「2020年にクルーズ訪日旅客数500万人達成」を目標として掲げている。それを踏まえ2017年10月に実施された「クルーズポート・セミナー」の講演内容(海事関係団体、大学、官公庁や自治体など各界の識者6人が演者)を第1章のベースとして書き起こし、クルーズの歴史に始まり各港の取り組みや国内外の現状や課題までを概説している。それらを補完するものとして、2章以降に国交省港湾局の出したクルーズ船受け入れのための「ガイドライン」、クルーズポートに関する基礎知識を整理した「関係用語集」と「Q&A」、総括として国交省発表の最新データを掲載して「現状と将来展望」をまとめあげている。
【はじめに】
近年、クルーズ人口は増加の一途をたどっております。2018年6月12日に国土交通省より、「2017 年の日本人のクルーズ人口が31.5万人になり、過去最多となった(前年比6.7万人増加、27.0%増)」との発表がありました。
また、「我が国港湾へのクルーズ船の寄港回数は、日本船・外国船合わせて過去最多の2,764回(前年比37.0%増)であった。また、我が国にクルーズ船により入国した外国人旅客数は過去最多の252.9万人(前年比27.0%増)であった」との発表がなされました。
日本人のクルーズ人口が過去最多を更新、さらにはクルーズ船で日本を訪れる外国人観光客数が急激に増加するなど、「観光立国」を目指す我が国にとってクルーズ産業の重要性はますます高くなっております。「2020年にはクルーズ船による訪日旅客数を500 万人に伸ばす」という国の目標が掲げられ、国、地方、民間などが協力してその目標達成に取り組んでおります。
このような取り組みに対してこれまで以上に積極的にサポートするため、みなと総研(一般財団法人みなと総合研究財団)では、2017年4月1日に財団内にクルーズ総合研究所を設置しました。クルーズ総合研究所は、クルーズを冠した我が国初の研究所です。
クルーズ総合研究所の主な役割・活動は次の通りです。
1.クルーズに関する受託調査研究
2. クルーズに関するアドバイザー業務
3. クルーズポート・マスター制度の推進
4. 最新テーマに関する自主調査研究
5. クルーズに関する情報収集
6. 各種セミナー等への講師派遣、書籍出版 など
このうち、クルーズポート・マスター制度では、「クルーズポート・セミナー」や「クルーズサロン」「乗船研修」を定期的に開催、実施し、クルーズ関係者の知識向上を継続的に図っております。中でも、毎年1回開催される「クルーズポート・セミナー」は規模の大きなセミナーで、全国から港湾管理者・自治体関係者・港湾や観光の振興団体関係者など、クルーズ業務に携わる多くの関係者が参加しております。「クルーズポート・セミナー」では、これらクルーズ業務関係者がクルーズに関する知識を短期間で習得できるよう、各界の第一線で活躍する講師の方々より、様々な角度から講演をしていただいております。
本書の第1章では、2017年10月に開催された「クルーズポート・セミナー」の講演内容を中心に取りまとめ、紹介しております。講演内容は、多岐に渡っております。例えば、クルーズの歴史、クルーズマーケットの現状と将来、クルーズ産業の仕組み、クルーズ500万人時代に向けた取り組み、クルーズ船入出港における安全、クルーズ船の受け入れの実際、観光立国ニッポンとクルーズ、などです。クルーズに関する多くの事項が網羅されており、クルーズ業務未経験の方にとっても興味深い内容になっていると思います。
第2章では、国土交通省港湾局が2017年3月に提示した「物流ターミナル等における訪日クルーズ旅客の安全かつ円滑な受入に関するガイドライン」を紹介しております。このガイドラインでは、客船ターミナルのような本格的なクルーズ船受入設備を持たない港湾が、既存の物流岸壁などを利用しながらいかに安全に、かつ円滑にクルーズ船を受け入れることができるのか、が提示されております。また、客船誘致からクルーズ船の実際の受入までに為すべき一連の業務が示されております。外国船のみならず日本船の誘致や受入の実務にお役立ていただけると思います。
第3章では、主なクルーズ関係用語やQ&A を掲載しております。基礎的な内容が中心ですが、クルーズ業務学習の一助になればと思います。また、これらを通じて、クルーズにより親しみを感じていただきたいと思います。
第4章では、2018年6月12日に国土交通省から発表された、我が国のクルーズ動向に関する最新データを掲載しました。我が国のクルーズ人口、国内港湾へのクルーズ寄港回数、訪日クルーズ旅客数などについての最も新しい情報です。また、この章では、クルーズが今後さらなる発展を遂げて行くための提言をいくつか述べさせて頂きました。また、世界のクルーズの大きなトレンドについても紹介させて頂きました。ご参考になるのであれば幸いです。
本書のタイトルにある「クルーズポート」は、日本ではまだなじみが薄い言葉かもしれませんが、日本の港湾の全ては「クルーズポート=クルーズ船の寄港する港」になる可能性を秘めています。
本書を通じてクルーズに対する理解が少しでも深まり、また、本書が関係者の皆様の業務遂行の手助けになるのであれば幸いです。「2020年に訪日クルーズ旅客数500万人」達成に向けて、関係者の皆様と共に歩んで参りたいと思います。
2018年8月
一般財団法人みなと総合研究財団
クルーズ総合研究所
所長 山本三夫
【目次】
第1章 クルーズポート・セミナー (講演記録より)
1-1 クルーズ発展の歴史およびクルーズ市場の現状と将来
1-1-1 クルーズ発展の歴史
1-1-2 クルーズ産業の現状
1-1-3 クルーズ産業の将来
1-1-4 アジアのクルーズ概観
1-1-5 日本のクルーズ概観
1-1-6 クルーズが寄港地に求めるもの
1-1-7 クルーズ船寄港の効果
1-1-8 クルーズ船が港に求める運航上のポイント
1-1-9 船社が寄港地を選ぶ時のポイント
1-1-10 客船誘致に向けた施策
1-2 「観光立国ニッポン」とクルーズ観光
1-2-1 国際観光の活発化と「観光立国ニッポン」の現況
1-2-2 訪日外国人旅行者数急増の要因と中身
1-2-3 国際観光と「観光立国ニッポン」が日本の官・産・学・民に与えたインパクトについて
1-2-4 大目標達成に向けて取り組むべき方向性
1-3 「クルーズ500万人時代」に向けた取り組みの現状と今後
1-3-1 クルーズ船の寄港動向(現状と見通し)
1-3-2 急増するクルーズ需要に対応するための受入環境の整備
1-3-3 官民連携による国際クルーズ拠点の形成
1-3-4 クルーズ船の寄港がもたらす効果
1-4 クルーズ産業界の現状と業界の仕組み
1-4-1 現代クルーズの発生と広がり
1-4-2 世界のクルーズ人口の推移
1-4-3 日本のクルーズ人口の推移
1-4-4 アジアへのクルーズ船寄港数
1-4-5 日本への寄港数と訪日クルーズ旅客数
1-4-6 日本はクルーズポート大国
1-4-7 クルーズ船建造計画とクルーズ人口増加(推算)
1-4-8 クルーズ船の誘致活動
1-4-9 クルーズクラスターの形成
1-5 クルーズ船受け入れの実際
1-5-1 清水港客船誘致委員会の概要
1-5-2 清水港への外国船寄港実績
1-5-3 歓送迎イベント運営の成功例と問題点
1-5-4 課題解決とクルーズ振興で地域を活性化させるための施策
1-5-5 拠点港としての役割と港周辺の今後について
1-6 クルーズ船入出港における安全について
1-6-1 クルーズ船の操船性
1-6-2 クルーズ船に要求される操船性
1-6-3 港湾施設の技術上の基準との整合性
1-6-4 航行安全委員会による審議
1-6-5 クルーズ船受け入れと安全性の確保
第2章 物流ターミナル等における訪日クルーズ旅客の安全かつ円滑な受入に関するガイドライン
2-1 クルーズ船受入計画
2-1-1 誘致活動(誘致の場・方法、魅力ある寄港地観光、観光部門との連携等)
2-1-2 必要となる水域施設、係留施設等(技術基準、各種施設諸元等)
2-1-3 関係者との調整(物流関係者、海保、CIQ 官署等)
2-1-4 工程計画
2-2 クルーズ旅客受入計画
2-2-1 必要となる機能施設(施設概要、必要面積、数量等)
2-2-2 臨時免税店(制度、手続きの概要等)
2-2-3 機能施設、賑わい空間、免税店等の配置・導線計画
2-2-4 埠頭外の関係機関との連携(観光先における交通対策等)
2-2-5 工程計画
2-3 運営体制(関係機関と役割)
第3章 クルーズポートの基礎知識
3-1 クルーズ関係用語集
3-2 クルーズとクルーズポートのQ&A
第4章 クルーズおよびクルーズポートの現状と将来展望
4-1 日本のクルーズ動向に関する国土交通省発表最新データ
資料1 2017 年の我が国のクルーズ等の動向について
資料2 2017 年の我が国港湾へのクルーズ船の寄港回数及び訪日クルーズ旅客数について
4-2 クルーズおよびクルーズポートの将来展望
4-2-1 クルーズターミナルの整備
4-2-2 クルーズ関係者の連携強化
4-2-3 日本クルーズ海域の提案・紹介
4-2-4 世界のクルーズのトレンド
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