著者名: | 鴨川 仁・吉田 智・森本健志 共著 |
ISBN: | 978-4-425-98391-9 |
発行年月日: | 2021/8/28 |
サイズ/頁数: | 四六判 240頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥1,980円(税込) |
「ゴロゴロ」と雷鳴轟き、「ピカッ」と稲光でお馴染みの雷に関する56のクエスチョンに、雷研究の最前線にいる3 名がわかりやすく回答します。雷の性質や特徴、その多様さから、体・モノを守る手段や利用する技術、文化的なアプローチまで、雷のすべてがわかります。
本書において下記のとおり、誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。
*巻頭カラー口絵5 ページ「口絵10」のキャプション
(誤) 上:夏 6 ~ 8 月・下:冬 11 ~ 1 月(2018~2020 年のデータを使用)
(正) 上:冬 11 ~ 1 月・下:夏 6 ~ 8 月(2018~2020 年のデータを使用)
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【はしがき】
空に突如として現れる数km 以上にわたって広がる明るい光とゴロゴロという大きな音が聞こえてくるもの,それが雷です。
雷は世界の多くの場所で発生する身近な自然現象で,その明るく激しい光(稲光),ゴロゴロという大きな音(雷鳴),そしてその美しさから,遥か昔から世界中の人々を魅了し,地域文化に根付いてきました。古代ギリシャでは,雷は全能の神ゼウスの怒りとされ,また日本でも風神と雷神は風水害除けや五穀豊穣の祈りを込められて祀られています。
雷が科学的な研究対象となるのは今からおよそ270 年前の1750 年頃からです。アメリカ独立にも大きな貢献をしたベンジャミン・フランクリンは,雷が電気現象であることを発見しました。それ以降,多くの科学者が雷の正体を解き明かすべく,野外観測・室内実験・理論研究を進め多くの謎を解いてきました。しかしながら,雷の謎はまだまだたくさん残っています。
例えば,どうやって雷雲内に電気がたまるのか,何がきっかけとなって雷が始まるのか,など極めて基本的な謎でさえ,まだ完全には理解できていません。近年は観測技術の発展により,1回の雷で水平方向に数百km にも達する,従来では想像できない巨大な雷(メガフラッシュ)が観測されるなど新たな発見が続いており,さらに雷の謎が深まっています。私たちにとって非常に身近な存在の雷ですが,まだまだ分からないことがたくさんあります。
一方,落雷は数十kA(キロアンペア)に達するような大電流を伴うため,落雷した人や地上建造物に大きな被害をもたらします。このため,いかにして落雷に遭わないようにするか,または落雷した場合に被害をいかに最小限に抑えるかという知識と技術も重要で,防災や耐雷の一分野としても雷の研究も進められています。雷の理解は科学的な興味もさることながら,防災や耐雷は生きていくため,経済活動のために重要です。さらに雷は冒頭に挙げた文化的な社会との繋がりも欠かせません。
このように一口雷といっても多種多様な切り口・興味があります。
本書では,雷に関する56の疑問をいろんな分野からピックアップし,その疑問に対して一つ一つ説明しました。(なおこの56の疑問の56は雷鳴のゴロゴロから来た語呂合わせです。)本書は疑問を大きく6章に分けています。Section1「 雷」の正体,Section2 「雷」の特徴,Section3 各地のさまざまな「雷」,Section4「 雷」から身を守る,モノを守る,Section5「 雷」に関するいろいろな技術,Section6「雷」にまつわる歴史と文化,となっています。本書を通して雷や自然科学に対して理解や興味を深めるとともに,防災の知識を実生活に活用していただければ幸いです。
気象や電力関連の専門家や雷研究をされている学生の方々にもご興味いただけるように,一般向けの雷の書籍にはまず取り上げられないけれども,研究者だからこそ知っている興味深い最新のトピックを積極的に盛り込みました。その一方で,科学に興味がある一般の高校生にもご理解いただけるようにできるだけ文を平易し,全体的に読みやすく仕上げました。本書をお読み頂いたのちに,読者の皆様の雷に対する見方や考え方が大きく変わることを期待しています。
なお,本書ではどこから読み始めても理解できるように配慮しました。例えば,(Q2)とある場合, Q2 に詳しい説明がある,と言う意味で,そちらもご覧いただけるとより一層理解が深まります。本書の用語は,研究者で使っている普段用語ではなく,できるだけ一般の方が使用されている用語に合わせました。
2021年6月
筆者を代表して気象研究所 吉田 智 識す
【目次】
Section 1「雷」の正体
Question1 雷って何?
Question2 雷雲はどうやって発生するの?
Question3 雷雲にはどうやって電気がたまっていくの?
Question4 雷は何がきっかけで始まるの?
Question5 雷にはどんな種類があるの?
Question6 雷の光っている場所はどうなっているの?
Question7 雷はどうやって雲から地上までやってくるの?
Question8 落雷はどうやって雲の中の電気を中和するの?
Question9 雷はなぜジグザグになるの?
Question10 地面から雷雲にむかって進む雷があるって本当?
column1 世界最大の雷:Mega Flash
Section 2「雷」の特徴
Question11 どんな時に雷雲は発生しやすいの?
Question12 どうして落雷と雲放電の違いがあるの?
Question13 何が雷の種類を決めているの?
Question14 稲光って何色?
Question15 雷のゴロゴロはどうやって聞こえるの?
Question16 雷から大気汚染物質が発生しているって本当?
Question17 雷の電気はどこへ行くの?
Question18 地上に雷が落ちると,その痕跡は残る?
Question19 雷から放射線が出るのは本当ですか?
Question20 大気中の放射性物質が増えると雷が多くなるというのは本当?
column2 雷のギネス記録
Section 3 各地のさまざまな「雷」
Question21 世界の雷分布は?
Question22 世界一雷が発生するのはどこ?
Question23 日本では年間に雷はどれくらい発生しているの?
Question24 雷が起こる季節は?
Question25 夏の雷と冬の雷,違いはあるの?
Question26 雷は昔に比べて増えている?減っている?
Question27 南極では雷が発生しないって本当?
Question28 火山噴火と一緒に雷が発生しているって本当?
Question29 地震と雷は関係あるの?
Question30 火の玉は実在するの?
Question31 世界の雷活動と地表の静電気はつながっているの?
Question32 宇宙に雷はあるの?
Question33 雷は地球以外の惑星でも発生するの?
Question34 生命の起源には雷が関係しているの?
column3 雷の口笛
Section 4 「雷」から身を守る,モノを守る
Question35 落雷しやすい場所は?
Question36 雷に撃たれたらどうなるの?
Question37 建物や車は落雷しても安全なの?
Question38 飛行機は落雷しても安全なの?
Question39 遠くで雷鳴。避難のタイミングは?
Question40 近くに逃げ込める場所がない時はどうすればいいの?
Question41 落雷による被災者数や被害額は?
Question42 避雷針の仕組みや効果は?
Question43 雷サージって何?
Question44 電力,通信,鉄道などインフラの雷対策は?
Question45 家庭やオフィスの電化製品に有効な雷対策は?
column4 日本最古の避雷針
Section 5 「雷」に関するいろいろな技術
Question46 落雷の場所はどうやってわかるの?
Question47 雷は宇宙からも観測されているの?
Question48 雷の発生予測はできるの?
Question49 雷から気象災害予報はできるの?
Question50 雷を狙った場所に落とせるの?
Question51 雷は人工的に作れるの?
Question52 雷のエネルギーをためて使えるの?
Section 6 「雷」にまつわる歴史と文化
Question53 昔はどのように雷の研究を進めていたの?
Question54 雷を含むことわざはどういうものがあるの?
Question55 雷が多いと豊作になるというのは本当?
Question56 雷をきれいに撮りたい!
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