著者名: | 盛田 元彰 著 |
ISBN: | 978-4-425-69007-7 |
発行年月日: | 2023/10/8 |
サイズ/頁数: | A5判 272頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥4,400円(税込) |
船舶乗組員・舶用機器メーカーを目指す学生を対象に、金属材料の利用方法から実際に作成することまで幅広く習得できるようにまとめたテキスト。金属に関連する各種の加工、腐食と防食、表面処理、非破壊検査、JIS・NKなどの諸規則までわかりやすく解説。
【まえがき】
本書は2001 年に出版された「新訂 金属材料の基礎」の改訂新版である。本書は将来上級の海技従事者や船舶乗組員を志す学生や、舶用機器メーカー等に勤めることを希望する学生を念頭に置き、金属材料の利用方法から実際に金属材料を作成することまで考え幅広く修得できるように編集した。
金属材料は最も利用されている材料の1 つである。その理由としては、世界規模で流通量が多く、容易に入手でき、さらに材料費も安いにも関わらず、さまざまな特性を与えることができるためである。そのため、身の回りのものの多くが金属で構成されている。例えば、ミクロレベルで金属材料の構造をいじることで、非常に強い鉄鋼材料を作り人命を守る自動車の骨格部分等に使用できたり、アルミ缶のように缶形状へと加工し易くできたりする。また、金属材料はリサイクル性に優れ、作った製品からまた新しい製品へと生まれ変わることができる。
金属材料製造に関する日本の技術力はかなり高く、国内には世界最大規模の製鉄所メーカーがあり、工場もある。給料を十分に得られる業界にも関わらず、金属材料の学問に触れる機会が少なく、また、実際にどのように知識が活かせるかイメージがわかないことから、金属材料工学の知識を修得しようとする学生はそこまで多くなく、後世を担う人材育成が課題となっている。材料メーカーのみならず、機器メーカーでも金属材料関係の課題やトラブルは多く、実際に著者へもメーカーや卒業して就職した学生からの相談が多いのが実情である。
少なくとも金属材料を学習して無駄だったとなることはないだろう。多くの人に金属材料に関する知識を習得してもらい、ぜひ、みなさんのキャリアアップにつながるように、実用書として一生涯利用してもらえるような教科書になればと考えている。
2023年8月
【目次】
第1章 金属材料を学ぶ意義
1. 1 機器を設計するため
1. 2 海技士(機関)の国家資格を取得するため
1. 3 船舶、舶用機器や艤装の設計や、点検・メンテナンスを適切に行うため
1. 4 使用する単位
1. 5 各種金属の特性
1. 6 金属の特性をコントロールする=料理の味を良くする
第2章 金属の組織
2. 1 組織・相・結晶粒・結晶粒界
2. 2 組織観察:エッチング法
2. 3 結晶質と非晶質
2. 4 結晶構造
2. 5 合金
2. 5. 1 合金とは
2. 5. 2 組成
2. 5. 3 固溶体、金属間化合物
第3章 金属の基本的な性質と試験法
3. 1 金属の強さと伸びやすさ:強度と延性
3. 1. 1 引張試験(静的試験)
3. 1. 2 応力―ひずみ曲線、応力―ひずみ線図(stress-strain curve, stress-strain diagram)
3. 2 金属の硬さ
3. 2. 1 ビッカース硬さ試験(HV)
3. 2. 2 ブリネル硬さ試験(HB)
3. 2. 3 ロックウェル硬さ試験(HR)
3. 2. 4 ショア硬さ試験(HS)
3. 3 金属の耐衝撃性
3. 3. 1 靭性
3. 3. 2 シャルピー衝撃試験
3. 3. 3 延性破壊と脆性破壊
3. 3. 4 延性脆性遷移温度(DBTT)
3. 4 金属の疲れ:金属疲労
3. 4. 1 繰返し応力
3. 4. 2 S–N 線図
3. 4. 3 疲労の素過程
3. 4. 4 疲労に及ぼす因子
3. 5 金属の粘り強さ:破壊靭性
3. 5. 1 CTOD 試験(Crack Tip Opening Displacement Testing)
3. 5. 2 ESSO(エッソ)試験
3. 6 金属の我慢強さ:クリープ特性
3. 6. 1 クリープ
3. 6. 2 クリープ試験機
3. 6. 3 クリープ曲線
3. 6. 4 耐クリープ材として使用される材料
3. 7 金属のやけど:腐食と高温酸化
3. 7. 1 腐食
3. 7. 2 海水中での腐食試験
3. 7. 3 高温環境での腐食試験
3. 8 金属の2 つのいやなことが重なった時の弱さ:環境脆化
3. 8. 1 応力腐食割れ(SCC)
3. 8. 2 SCC試験
3. 9 金属の耐水素性:水素脆化・遅れ破壊
3. 10 金属上の摩擦:耐摩耗性・摺動性
3. 10. 1 摩耗
3. 10. 2 摩耗試験
第4章 各種加工
4. 1 熱間加工と冷間加工
4. 2 さまざまな加工方法
4. 2. 1 圧延
4. 2. 2 引抜き加工
4. 2. 3 押出加工
4. 2. 4 プレス成形
4. 2. 5 鋳造
4. 2. 6 鍛造
第5章 金属の変形、軟化と硬化:すべり変形
5. 1 すべり変形
5. 2 転位から説明する加工硬化
5. 3 熱処理による加工の影響のリセット:回復・再結晶
5. 3. 1 加工の影響
5. 3. 2 回復および再結晶
5. 3. 3 回復・再結晶とそれぞれの特性の変化
5. 4 金属の高強度化(低温域)と燃費向上
5. 5. 金属の高強度化
5. 5. 1 高強度化するための基本的な考え方
5. 5. 2 ホールペッチの関係
第6章 合金設計:平衡状態図・相図
6. 1 変態・相変態
6. 1. 1 凝固点・融点・変態点
6. 1. 2 冷却曲線
6. 1. 3 結晶の核生成と成長
6. 1. 4 過冷却
6. 1. 5 核の発生と結晶成長を利用した結晶粒の微細化技術
6. 2 平衡状態図の読み方・考え方
6. 2. 1 合金の設計図:平衡状態図(Equilibrium diagram, Phase diagram)
6. 2. 2 てこの原理(lever rule)
6. 2. 3 相律(自由度)
6. 3 さまざまな平衡状態図と組織変化
6. 3. 1 全率固溶型平衡状態図
6. 3. 2 共晶型平衡状態図
6. 3. 3 共析型平衡状態図
6. 3. 4 包晶型平衡状態図
6. 4 溶体化処理、過飽和固溶体、時効
第7章 炭素鋼
7. 1 鉄と鋼
7. 2 製銑・製鋼・鋳造
7. 3 鋼塊
7. 4 鉄鋼材料の相と平衡状態図
7. 5 鋼の熱処理
7. 5. 1 焼入れ
7. 5. 2 鋼の恒温(等温)変態
7. 5. 3 焼戻し(焼もどし、tempering)
7. 5. 4 焼なまし、焼ならし
7. 5. 5 鋼の加工
7. 5. 6 鋼の高温特性
第8章 鋳鉄および合金鋼
8. 1 鋳鉄
8. 1. 1 鋳鉄の組織
8. 1. 2 鋳鉄の性質
8. 1. 3 鋳鉄の熱処理
8. 1. 4 鋳鉄の種類
8. 2. 合金鋼
8. 2. 1 溶接用鋼材
8. 2. 2 高張力鋼
8. 2. 3 機械構造用合金鋼鋼材
8. 2. 4 ボイラ用圧延鋼材・鋼管
8. 2. 5 ばね鋼
8. 2. 6 工具鋼
8. 2. 7 ステンレス鋼
8. 2. 8 耐熱鋼
8. 2. 9 磁性鋼
8. 2. 10 耐候性鋼
第9章 銅とアルミニウム
9. 1 銅および銅合金
9. 1. 1 銅の概略
9. 1. 2 純銅
9. 1. 3 黄銅(真鍮)
9. 1. 4 耐海水用特殊黄銅
9. 1. 5 青銅
9. 1. 6 アルミニウム青銅
9. 1. 7 白銅
9. 2 アルミニウム・アルミニウム合金
9. 2. 1 概略
9. 2. 2 純アルミニウム
9. 2. 3 アルミニウム合金の分類と状態図
9. 2. 4 舶用Al 合金の展伸材
9. 2. 5 舶用Al 合金の鋳造材
9. 2. 6 舶用Al 合金の鍛造材
9. 2. 7 Al およびAl 合金の船舶への適用例
第10章 軸受合金・ニッケル・マグネシウム・チタン・FRP
10. 1 軸受合金
10. 1. 1 軸受の構造
10. 1. 2 軸受合金
10. 1. 3 軸受合金に使用される主な合金元素(亜鉛・すず・鉛)
10. 1. 4 軸受合金に要求される性質
10. 1. 5 ホワイトメタル系軸受合金
10. 1. 6 銅系軸受合金
10. 1. 7 アルミニウム系軸受合金
10. 1. 8 各種軸受合金の特徴
10. 2 ニッケル・ニッケル合金・超合金
10. 2. 1 ニッケル
10. 2. 2 Ni–Cu 系合金
10. 2. 3 Ni–Cr系合金
10. 2. 4 超合金(Ni 基超合金・Co 基超合金)
10. 2. 5 アルメルとクロメル
10. 3 マグネシウム・マグネシウム合金
10. 3. 1 マグネシウム
10. 3. 2 マグネシウム合金
10. 4 チタン・チタン合金
10. 4. 1 チタン
10. 4. 2 チタン合金
10. 5 F R P
第11章 接合・切断
11. 1 リベット接合
11. 2 ボルト接合
11. 3 溶接接合
11. 3. 1 アーク接合
11. 3. 2 TIG 溶接・MIG 溶接
11. 3. 3 溶接と組織
11. 3. 4 溶接入熱・パス間温度・予熱
11. 3. 5 ろう付け
11. 4 切断
11. 4. 1 機械的切断
11. 4. 2 ガス切断
11. 4. 3 レーザー切断
第12章 腐食と防食
12. 1 腐食とは
12. 2 海洋環境での腐食
12. 2. 1 湿式腐食:海水中での鉄鋼の腐食反応
12. 2. 2 異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)
12. 2. 3 通気差電池腐食
12. 2. 4 温度の影響
12. 2. 5 押さえておくべきポイント
12. 3 全面腐食と局部腐食
12. 3. 1 孔食
12. 3. 2 組織由来の腐食(選択腐食、粒界腐食)
12. 3. 3 すきま腐食
12. 3. 4 乾式腐食
12. 4 高温腐食、高温酸化
12. 5 低温腐食・露点腐食
12. 6 応力腐食割れ
12. 7 エロージョン
12. 8 電位とイオン化傾向
12. 9 大気腐食
12. 10 防食
12. 10. 1 耐食性金属
12. 10. 2 表面処理による防食
12. 10. 3 電気防食(流電陽極方式・犠牲陽極方式)
12. 10. 4 電気防食(外部電源方式)
12. 11 船舶において考慮するべき腐食の外的要因
第13章 表面処理・改質
13. 1 表面硬化処理・改質
13. 1. 1 高周波熱処理
13. 1. 2 ショットピーニング
13. 1. 3 ローラ加工
13. 2 めっき
13. 2. 1 電解めっき(電気めっき)
13. 2. 2 無電解めっき
13. 2. 3 気相めっき
13. 2. 4 溶融めっき
13. 3 溶射法
13. 4 化成処理
13. 5 肉盛り・フェーシング・クラッド
13. 6 アルマイト処理(陽極酸化皮膜法)
第14章 非破壊検査
14. 1 肉眼検査
14. 2 打診検査
14. 3 浸透探傷試験(カラーチェック)
14. 3. 1 染色試験探傷法
14. 3. 2 蛍光浸透探傷法
14. 3. 3 油浸透探傷法
14. 4 超音波探傷試験
14. 5 放射線探傷試験
14. 6 電気的探傷法
14. 6. 1 磁粉探傷法
14. 6. 2 渦電流探傷法
14. 7 NK の非破壊試験における検査
第15章 規格
15. 1 規格はなぜ必要か。
15. 2 日本産業規格・JIS 規格
15. 2. 1 分野・分類の記号
15. 2. 2 各種材料の記号
15. 2. 3 ステンレス鋼の記号
15. 2. 4 どのように入手するか
15. 2. 5 国際規格との対応
15. 3 船級
15. 3. 1 NK における規則
15. 3. 2 材料記号の例:圧延鋼材(軟鋼)
15. 3. 3 その他鋼材の記号例
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