著者名: | 大島商船高専マリンエンジニア育成会 編 |
ISBN: | 978-4-425-61373-1 |
発行年月日: | 2024/4/28 |
サイズ/頁数: | A5判 240頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥2,860円(税込) |
船舶や機関の基礎知識を丁寧に解説。章末に練習問題を掲載し、機関士を目指す初学者向きのテキスト。機関全般に共通の知識の習得に最適。
■本書の目的
機関学を専門的に学習する人にとって、高度な知識への橋渡しになる役目になること。すなわち、機関学の良き入門書になること
航海士を目指す人にとって、機関全体の知識を得ることは船舶の安全運航上、重要である。航海士を目指す若者や乗船経験の浅い航海士のために機関学の知識を提供すること。
確証の要所に例題を配置し、基礎学力を身に着けながら読み進むことができ、章末の演習問題でその理解力をチェックすることができる構成となっている。
■改訂のポイント
・法令改正に伴う見直し
・船内装置、技術の更新
・図表と説明の追加
【2訂増補版の執筆にあたって】
初版が平成18年に刊行されてから18年,改訂版も平成26年に発行されてから10年が経ち,この間に船舶の取り巻く環境は大きく変化した。特に環境問題への対応は著しく,IMOにおいて2050年頃までには船舶からの温室効果ガスの排出ゼロを目標に,従来の石油燃料からゼロエミッション燃料へと大きく変わろうとする中,マリンエンジニアもまた新しい技術への対応が迫られる。しかしながら,船舶に搭載される機器は進化するものの根本的な原理は大きく変わらない。本書で舶用機関の概略と原理について理解し,マリンエンジニアとしての基礎を身に着けてもらいたい。
本書は機関学初学者に対しスムーズに機関学の導入部分を理解させ,将来,本格的に機関学を学習する際の橋渡し役となることという目的で執筆されたが,そのコンセプトはそのままに,今回の改訂では,法改正がされたところについての見直し,現在では使われなくなった装置の削除,反対に一般化された技術についての追加を行った。また,図表を多く取り入れることにより読者にとって視認しやすくした。しかし,あくまで本書は入門書であり,舶用機関に関するすべての内容は網羅しきれていない。そのため,読者が本書をステップとしてより高度な知識と技術を身につけ,次世代のマリンエンジニアとして活躍されることを切に願う。
正直なことを申せば,舶用機関の知識を習得するには実機を見て,触り,動かすことに勝るものはない。積極的に,現場に出て実機やその図面を見てほしいが,その機械の原理や構造についてわからないとき本書を読み直してもらいたい。また,本書を手に取る学生にとって,実機を見る機会が限られるため,海技士試験問題等について勉強する際の参考書として活用してもらえればと願う。
最後に今回の2訂増補版の執筆にあたり,ご理解とご指導を頂いた㈱成山堂書店の小川啓人社長に感謝申し上げます。
令和6年3月
著者一同
【まえがき】より
地球上には多数の国があり、各国とも自分の国だけの物資だけでは暮らせない。食料、原油、穀物などの日常生活に必要な物資は船を通じて輸送されることが多い。これによって我々は豊かな生活が営むことができる。とくに国内資源が乏しい我が国にとって、外国からの輸入によって必要な資源を確保することは極めて重要である。戦後経済の復興、成長の過程において、我が国は海運に依存することが多かった。そのため、戦前に比べ我が国は大きな商船隊をもつことになった。今後は国際競争力のある商船隊を拡充することおよび海運技術発展のためにはコンスタントに優秀な船員を排出する必要がある。
物資の輸送手段に関して、近年飛行機による物資の輸送が多くなったものの原油輸送に代表されるように、船による物資輸送はコスト、輸送量および安定供給の点で飛行機よりも優れている。
ところで、日本の海運は2度のオイルショックによる原油価格の高騰、船舶職印法および船員法の改正や船の小人数運航にともなう船舶技術の発展などの諸問題を経て現在に至っている。海陸を問わず、制御・情報機器は小型化および高度かの傾向にある。船の技術も自動機器の設備が充実しており、その技術発展はめざましいものがある。加えて、現在の船舶は少人数で運航するため機関士個々に要求される能力はより高度化の傾向にある。商船教育の現場で学生を教育する立場である著者らの使命は、多数の優秀なエンジニアを養成することにある。著者らの経験から専門知識を系統的に抵抗なく得るためには、まず入門書を読むことを勧める。
以上のことから、本書は次の点に留意して執筆した。
1.機関学を専門的に学習するひとにとって、本書は高度な知識への橋渡しになる役目になること。すなわち、機関学の良き入門書になることを目的とする。
2.航海士を目指す人にとって、機関全体の知識を得ることは船舶の安全運航上、重要である。本書は航海士を目指す若者や乗船経験の浅い航海士に機関学の知識を提供する。
本書の内容は、前半(第4章まで)部分が船の概略と工学基礎全般について、後半(第5章以降)部分が機関学基礎について説明している。機関学の内容は膨大で、とても本書の内容が機関学全体を網羅しているわけではない。本書はあくまでも入門書であるため、読者は必要に応じてより専門的に高度な書籍を読むことを推奨したい。なお、各章に演習問題があるが、本書の内容を熟読すれば理解できる問題の解答は省略している。各自、独力で解答の作成にチャレンジしてもらいたい。
【目次】
第1章 機関部−船を動かす−
1.1 機関部乗組員
1.1.1 職員
1.1.2 部員
1.1.3 混乗船
1.2 機関部の職務と作業
1.2.1 職務の概略
1.2.2 機関部作業
1.2.3 職務分担と就労体制
1.3 担当する機器
1.3.1 舶用プラント
1.3.2 主機関
1.3.3 推進装置
1.3.4 発電装置
1.3.5 ボイラ
1.3.6 補機
1.4 船舶における環境保全
1.4.1 大気汚染対策
1.4.2 水生生物対策
第2章 機関学基礎
2.1 単位系
2.1.1 基本単位と組立単位
2.1.2 国際単位系
2.1.3 単位の換算
2.2 数値データの取り扱い方
2.2.1 測定値と誤差
2.2.2 有効数字
2.2.3 有効数字の表示
2.2.4 有効数字の決め方
2.2.5 特殊グラフ
2.3 機関算法
2.3.1 力と仕事の関係
2.3.2 密度と比重
2.3.3 エンジンの燃料消費率
2.3.4 プロペラスピードとスリップ
2.4 工学の基礎
2.4.1 運動の第一法則
2.4.2 運動の第二法則
2.4.3 質量と重さ
2.4.4 運動の第三法則
2.4.5 仕事と動力
2.4.6 馬力
2.4.7 トルク
2.4.8 回転運動の動力
2.4.9 遠心力
2.4.10 圧力
2.4.11 圧力の種類
2.4.12 熱と温度
2.4.13 熱力学第零法則
2.4.14 熱力学第一法則
2.4.15 エンタルピ
2.4.16 熱力学第二法則
2.4.17 エントロピ
2.4.18 気体の性質
2.4.19 熱の伝わり方
2.5 材料学の基礎
2.5.1 応力とひずみ
2.5.2 材料試験
第3章 電気電子工学
3.1 電流、電圧および電力
3.1.1 水流回路と電気回路
3.1.2 電荷と電流
3.1.3 電圧
3.1.4 オームの法則
3.1.5 電気の仕事と電力
3.2 エネルギ変換機器とその原理
3.2.1 発電機と発動機
3.2.2 変圧器
3.2.3 パワーエレクトロニクス機器
3.2.4 電磁誘導機器の分類
第4章 制御・情報工学
4.1 制御
4.1.1 制御とは
4.1.2 自動制御の方法
4.1.3 フィードバック制御
4.1.4 フィードバック制御の分類
4.1.5 自動制御の基本動作
4.1.6 船舶におけるフィードバック制御の例
4.1.7 自動制御の性能評価
4.1.8 制御動作の種類
4.1.9 フィードフォワード制御
4.1.10 シーケンス制御
4.1.11 シーケンス制御に関連する用語
4.1.12 船舶におけるシーケンス制御の例
4.2 情報処理とデータ
4.2.1 データベースによるデータの取得
4.2.2 センサによるデータの取得
4.3 コンピュータ
4.3.1 コンピュータの種類
4.3.2 ハードウェア
4.3.3 ソフトウェア
4.3.4 プログラミング言語
4.4 ネットワークの基礎
4.4.1 LANとWAN
4.4.2 ネットワークセキュリティと認証
4.4.3 インターネットとサービス
4.5 ITリテラシー
第5章 内燃機関
5.1 熱機関の概要
5.1.1 熱機関の分類
5.2 容積型内燃機関の熱サイクル
5.2.1 点火・着火方式
5.2.2 基本熱サイクル
5.3 容積型内燃機関の作動
5.3.1 2サイクル機関の作動
5.3.2 4サイクル機関の作動
5.3.3 全体の構造
第6章 ボイラおよびタービン
6.1 蒸気ボイラ
6.1.1 蒸気ボイラの概要
6.1.2 蒸気の発生
6.1.3 ボイラの分類
6.1.4 ボイラ水処理
6.2 蒸気タービン
6.2.1 蒸気タービン船
6.2.2 蒸気タービンプラントの概要
6.2.3 蒸気タービンの作動原理
6.2.4 蒸気タービンの構造
6.2.5 蒸気タービンの型式
6.2.6 蒸気タービン船の運転
6.3 ガスタービン
6.3.1 ガスタービンの概略
6.3.2 ガスタービンの特長
6.3.3 ガスタービンの用途
6.3.4 コンバインドサイクル発電
第7章 補機
7.1 甲板機械
7.1.1 電動油圧システム
7.1.2 電動油圧システムの特長
7.1.3 パスカルの原理
7.1.4 船舶における電動油圧システムの使用箇所
7.2 操舵装置
7.2.1 操舵装置の構成
7.2.2 操舵装置の種類
7.2.3 操舵装置の能力
7.3 係船装置
7.4 荷役装置
7.5 冷凍装置・空気調和装置
7.5.1 冷凍装置の原理
7.5.2 ガス圧縮式冷凍装置
7.5.3 空気調和装置
7.6 ポンプ
7.6.1 ポンプの性能
7.6.2 ポンプの動力と効率
7.6.3 ポンプの種類
7.6.4 非容積形ポンプ
7.6.5 容積形ポンプ
7.6.6 ポンプの運転
7.6.7 ポンプの軸封(シール)装置
7.6.8 その他のポンプ
7.7 熱交換器
7.8 造水装置
7.9 送風機・圧縮機
7.10 油清浄装置
7.11 ビルジ処理装置
7.12 汚水処理装置
7.13 海洋生物付着防止装置
7.14 タンカーの防爆装置
7.15 管装置
第8章 燃料油と潤滑油
8.1 燃料油
8.1.1 船舶で使用される燃料油
8.1.2 ディーゼル燃料油の一般的性質
8.1.3 商船で使用される低質重油
8.1.4 燃料油の貯蔵と消費
8.2 潤滑油
8.2.1 潤滑油の使用目的
8.2.2 潤滑油の性状
8.2.3 潤滑油の選択
8.2.4 給油方法
8.2.5 舶用潤滑油の色々
8.2.6 潤滑油の管理
(海事図書)
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