海洋学の教科書


978-4-425-53211-7
著者名:林 美鶴 著
ISBN:978-4-425-53211-7
発行年月日:2024/6/28
サイズ/頁数:A5判 160頁
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価格¥2,750円(税込)
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大学の教養から基礎専門程度の読者を想定し、あらゆる海洋現象の基礎となる海水部分の基本的な物理過程を中心に解説しました。コラムでは、津波や海難など、さまざまなマリンハザードが引き起こす災害や影響について、事例やシミュレーションをもとに解説します。

【はしがき】 この度はたいへんおこがましくも、「海洋学の教科書」というタイトルで本書を上梓しました。「海洋学の教科書」というタイトルですが、海洋学の全分野を網羅しているわけではありません。学部の教養~基礎専門程度の講義を想定して、あらゆる海洋現象の基礎となる海水部分の基本的な物理過程を中心に説明しました。固体地球や大気運動は、それら物理過程を理解するために必要な範囲で説明しています。また、筆者が所属する神戸大学海洋政策科学部では、海事・海洋について理学・工学・社会科学の面から多角的に学ぶため、人間活動と密接に関わる沿岸海洋や、船舶運航に重要な海面過程も念頭に置きました。海洋化学や海洋生物、海底面や陸面との境界過程については、ほとんど触れていませんので、ご了承ください。
コラムではマリンハザードを取り上げました。海洋国家であり、多様な災害が頻発する日本では、さまざまなマリンハザードが起こっています。津波や台風のように突発的に大災害を引き起こす事象だけでなく、日常的に起こる海難や赤潮もマリンハザードの一種です。また、海底火山噴火で噴出した軽石、海洋投棄されたプラスティックのマイクロプラスティックス化など、新たに顕在化するマリンハザードも多くあります。マリンハザードが引き起こす災害や影響について考える時にも、物理過程が基礎となります。
大学時代は航海士教育を受け、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の観測船で観測技術員として働き、大学に着任してから沿岸海洋学を学び始めました。この間、海洋波浪を専門とする井上篤次郎先生(元神戸商船大学学長)、大気海洋相互作用を専門とする石田廣史先生(元神戸大学副学長)、沿岸海洋学を専門とする柳哲雄先生(元九州大学応用力学研究所所長)にご指導を賜りながら研究を続けてきました。また、観測技術員時代に得た経験と知識は、私の基盤を成しています。私のこのような経歴により、本書は構成されています。
上梓にあたり、これまで私に関わってくださった全ての皆様に感謝申し上げます。当初の予定から2年遅れでの出版となり、成山堂書店様には大変ご迷惑をおかけしました。特に、板垣洋介氏、小野哲史氏には忍耐強くお待ちいただき、心よりお礼申し上げます。また、本書を手に取ってくださった皆様にお礼申し上げます。皆様の海洋への理解が進むことを願っています。

2024年4月
林 美鶴


【目次】
第1章 地球科学
 1-1 海洋の誕生
 1-2 プレートテクトニクスと海底地形
 1-3 海洋の諸元
 1-4 熱循環
 1-5 水循環
 1-6 コリオリ力(転向力)
 1-7 海上の風系
  コラムA マリンハザードの定義と国際動向

第2章 海水の物性  2-1 海中光
 2-2 水温
 2-3 ENSo
 2-4 塩分
 2-5 密度
 2-6 深層循環
 2-7 沿岸の密度流
 2-8 氷結
 2-9 拡散・分散
 2-10 物質循環
 2-11 海中音
  コラムB  生態系に起因するマリンハザード

第3章 潮汐  3-1 起潮力
 3-2 潮位変動
 3-3 潮流
 3-4 潮汐表
 3-5 潮汐波
 3-6 潮汐残差流
 3-7 潮汐フロント
  コラムC 気象現象に起因するマリンハザード

第4章 海流  4-1 表層海流
 4-2 吹送流とエクマン輸送
 4-3 地 衡 流
 4-4 ポテンシャル渦度保存の法則(渦位の保存則)
 4-5 西岸強化
  コラムD 人間活動に起因するマリンハザード

第5章 海洋波浪  5-1 海洋波浪の定義
 5-2 海洋波浪の発達
 5-3 海洋波浪の伝播
 5-4 水粒子の軌道運動
 5-5 浅海変形
 5-6 波浪情報
  コラムE 地殻変動に起因するマリンハザード


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カテゴリー:気象・海洋 
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