著者名: | 福永 健 著 |
ISBN: | 978-4-425-76281-1 |
発行年月日: | 2024/7/18 |
サイズ/頁数: | 四六判 216頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥1,980円(税込) |
鉄道事業者、鉄道関連メーカー、鉄道関係の試験や機関を目指す高校生や大学生、関係法令を把握しておきたい実務者、入社5年程度の鉄道関係会社の社員など、これから「鉄道の法規」を学ぶ人たちに向けた入門書。関係者のみならず鉄道技術や列車運行に興味のある方々にも読んでいただけるよう細かく章分けをしています。巻末には本書オリジナルの「鉄道技術基準省令」と鉄道局長通達「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準」の各項対照表を掲載しています。
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【はじめに】
本書は1997年(平成9)3月に初版発行された和久田康雄著「やさしい鉄道の法規」に、その後の2001年(平成13)1 月の省庁再編、2002年(平成14)の旧運輸省令再編、許可から認可制などの規制緩和、環境影響評価法など新たに施行された法律を加え全面改訂したものである。鉄道技術、列車運行に一家言お持ちの方、高校生や大学生などで将来鉄道事業者や鉄道車両メーカー、鉄道信号メーカー、鉄道関係の試験研究機関を目指す方、鉄道事業者で列車運行、車両の検修、車両設計したい方、2023年(令和5)7月の国際認証規格のISO22163:2023(鉄道用途- 鉄道品質マネジメントシステム-ISO9001:2015及び鉄道分野での適用に関する特定要求事項)発効に伴い日本の鉄道関係法令に疎い外国人審査員に説明しなければならない実務者、鉄道事業者や鉄道車両メーカー入社5年程度の社員、1997年(平成9)の和久田康雄先生の初版の読者を念頭においている。
国が鉄道事業者を細かく許認可や届け出で規制するのも、元は利用者保護が目的である。だから、国と鉄道事業者間だけの規制や手続きに見える法令も、鉄道運賃の値上げや新幹線- 在来線特急列車の乗継割引廃止などもすべて法手続きに従うので、利用者はもっと法令に関心を持ちたい。
説明は原則として2023年(令和5)9月時点とした。法令名は正式名称を記したが、鉄道に関する技術上の基準を定める省令などの国土交通省令は「国土交通省令」を省略し国土交通省令以外の経済産業省令や厚生労働省令などは「所管省令名」を前に付した。これは鉄道行政が国土交通省だけで完結しないことも示す。
ここで若手読者向けに本書に頻繁に登場する1987年(昭和62)3月まで存在した日本国有鉄道に触れたい。鉄道は、日本国有鉄道発足前は運輸省が直接運営する省営事業だった。1945年(昭和20)9月に日本政府が降伏文書に調印後、アメリカ、イギリス、インドなど11か国で構成する連合国軍が日本全土を占領し、その中枢が連合国軍最高司令官総司令部(以下、GHQ)だった。そのGHQが運輸省営だった鉄道を日本国有鉄道という公共企業体として中央省庁から独立した組織に改組を命じた。日本国有鉄道分割民営化前までの法律は、現在の鉄道事業法の前身の日本国有鉄道法と地方鉄道法(注: 民営鉄道を規制)とに分かれていた。1987年(昭和62)年4月以降はJR各社と民営鉄道に同じ鉄道事業法が適用されている。
図0.1(A 〜D)に日本国有鉄道分割民営化前後の法体系の変化を示す。これを見ると、新たに施行された鉄道事業法傘下の省令や告示は、地方鉄道法の法体系に近いことが分かる。
本書で日本国有鉄道に触れている主な箇所は表0.1の通りである。日本国有鉄道法と地方鉄道法を統合し鉄道事業法に一本化したのと同様に、鉄道営業や列車運転を定めている鉄道営業法傘下の日本国有鉄道と地方鉄道の省令や告示も統廃合された。
地方鉄道関係の省令や告示は鉄道営業法と同じく漢字カタカナまじりの明治時代の文体だったが、現代語調の文体に改められた。鉄道営業法を根拠法とする火薬類運送規則は、根拠法が変更されて、鉄道営業法傘下から離脱した。この鉄道営業法傘下の省令や告示の再編は、同時に旧省令や旧告示の条文にない行政通達で運用されていた事項を新たに施行した省令や告示に包含した。例えば、1969年(昭和44)5月鉄運第81号鉄道監督局長通達「電車の火災事故対策について」は普通鉄道構造規則189条(旅客車の不燃構造)に包含された。
【目次】
1章 鉄道の法規を知ろう
1.1 法令と通達
1.2 行政指導
1.3 鉄道関係の法律
1.4 鉄道法令の分類と歴史
1.5 旧運輸省令再編後の省令の体系
2章 鉄道の定義と種類
2.1 鉄道とは
2.2 鉄道事業の3つの種類
2.3 特殊鉄道
2.4 併用軌道の上下分離
2.5 民営鉄道事業者と公営鉄道事業者
2.6 景観の鑑賞など特定目的を有する旅客鉄道
2.7 専用鉄道
3章 鉄道の開業まで
3.1 鉄道事業許可を受ける
3.2 工事の施行の認可と検査
3.3 計画や施設の変更
3.4 車両の確認の手続き
3.5 認定鉄道事業者制度と設計管理者制度
3.5.1 認定鉄道事業者
3.5.2 設計管理者
3.5.3 安全統括管理者
3.5.4 運転管理者と乗務員指導管理者の選任
3.6 運行計画の手続き
3.7 他の法令で必要な手続き
3.7.1 環境影響評価法
3.7.2 自然公園法
3.7.3 自然環境保全法
3.7.4 農地法
3.7.5 森林法
3.7.6 文化財保護法
3.7.7 都市計画法
4章 鉄道の譲渡や合併と廃止
4.1 鉄道の名前が変わる時
4.2 鉄道がなくなる時
4.3 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律
5章 鉄道事業者間の関係
5.1 他社の車両を走らせる
5.2 他社に業務を委託する
5.3 他社と協定を締結
6章 鉄道運賃と料金
6.1 運賃と料金
6.2 運賃認可の手続き
6.3 届け出で良い場合
6.4 都市鉄道整備のための運賃の先取り
6.5 鉄道駅バリアフリー料金制度
7章 鉄道の会計と財務
7.1 鉄道事業の会計の整理
7.2 減価償却と法定耐用年数
7.3 財団抵当の制度
7.4 鉄道会社の兼業
7.5 無形固定資産である知的財産権
8章 鉄道設備の基準
8.1 基準の根拠
8.2 特別構造の許可
8.3 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
8.4 線路と構造物の基準
8.5 電気施設の基準
8.6 運転保安設備の基準
8.7 車両の技術基準
8.7.1 車両限界と建築限界
8.7.2 走行装置および動力発生装置
8.7.3 車体および客室
8.7.4 運転台の元空気タンク管圧力を計る圧力計
8.7.5 空気ブレーキ用空気タンク
8.7.6 空気ブレーキ装置
8.7.7 列車運転状況記録装置
8.7.8 併用軌道の車両
9章 鉄道の運転と従業員
9.1 運転の安全についての法令の体系
9.2 鉄道係員への規制
9.2.1 鉄道係員の職制
9.2.2 列車運転士
9.2.3 鉄道車両製造・整備技能士および職業訓練指導員(鉄道車両科)
9.2.4 駅構内や駅隣接の売店等の乗車券発券業務委託
9.3 運転についての規制
9.4 事故と災害の報告
10章 鉄道と利用者の関係
10.1 運送契約についての法制
10.2 旅客ベカラズ集
10.2.1 線路へ立入
10.2.2 乗務員室立入禁止
10.2.3 出発合図後の乗車
11章 鉄道への補助金・税制など
11.1 補助金とその根拠法
11.1.1 日本国有鉄道への補助金とその根拠法
11.1.2 民営鉄道への補助金とその根拠法
11.1.3 特殊鉄道(都市モノレール及び案内軌条式鉄道)への補助金とその根拠法
11.2 立体交差化費用の分担
11.3 鉄道が納める税金
12章 鉄道用地の法律関係
12.1 鉄道用地
12.2 土地の収用
12.3 土地収用が拗れた埼玉新都市交通伊奈線
12.4 大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法
12.5 大深度地下の公共的使用に関する特別措置法
13章 国土交通省
13.1 国土交通省本省
13.2 軌道と道路局路政課
13.3 地方運輸局と内閣府沖縄総合事務局運輸部
13.4 特殊法人
13.5 運輸安全委員会
13.6 運輸審議会
14章 鉄道関係のその他の法律
14.1 陸上交通事業調整法
14.2 地方公営企業法
14.3 鉄道電気関係の法律
14.4 労働関係の法律
14.5 特定鉄道施設等に係る耐震補強に関する省令
14.6 労働安全衛生規則(軌道装置及び手押し車両)
15章 鉄道関係の法令管理
15.1 法令管理に法体系マップ作成の勧め
15.2 法令の適用範囲を理解していない事例1
15.3 法令の適用範囲を理解していない事例2
15.4 法令の適用範囲を理解していない事例3
おわりに
附録1 「鉄道技術基準省令」と鉄道局長通達「鉄道に関する
技術上の基準を定める省令等の解釈基準」条項対照表
附録2 普通鉄道、特殊鉄道 併用軌道車両、軌道車両の定期検査
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