著者名: | 大場俊雄 著 |
ISBN: | 978-4-425-85012-9 |
発行年月日: | 2008/6/28 |
サイズ/頁数: | 四六判 184頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,760円(税込) |
あわびは、古くから日本人の生活と共にありました。縄文時代には交易品として、奈良・平安時代には貢物として、戦国時代は武将の出陣の儀式に使われるなど、時代によって様々な役割を果たしてきました。
本書は、そんな日本のあわび文化を詳しく紹介。あわびの生態から歴史、食文化、漁業などに至るまで幅広く取り扱っています。
これを読めば、「あわび」のすべてがわかります!
「はじめに」より
荒海の磯に付いているアワビをはがしとると、殻からあふれ出るように盛り上がった身を生きいきとくねらせる。アワビは貝類の中でとび抜けて肉量が多く、しかも食べれば実にうまい。大きな貝殻は生活道具はじめ装飾品、工芸品などさまざまに使える。まさにアワビは、姿、形、味から殻の利用に至るまで、貝類の王者として風格をそなえている。ただ値が張るのが玉に傷だ。
貝を材料とした日本料理のうち、料理の種類が一番多いのはアワビ料理である。高度経済成長期には、アワビの踊り焼きやアワビステーキなど、いまどきの日本人が好む新参料理が江戸時代からのアワビ料理に加わった。それらのルーツは意外に身近なところにある。
アワビ殻が縄文時代の遺跡から出土する。遠く縄文の人たちもアワビを採って活用し、交易品にしていたらしい。
このアワビの身を、リンゴの皮をむくのと同じ仕方で薄くむいて伸ばし、干して「のしあわび」をつくる。これは古来、祭儀に際して生臭いもの(魚)の代表として神に捧げられ、宮廷の儀式や宴、戦国武将の出陣にあたって三献の儀のときに供されてきた。吉事には欠かせないものであった。つくる工程で伸ばすので、延命延寿や敵をのす、めでたい食べ物とされた。
日本人は古くから贈り物に「のしあわび」を添える。その習俗は、今日でもお年玉やお祝いのお金を贈るときに「のし袋」に入れるし、贈り物には「のし紙」をかける形で連綿と続く。日本人なら、生涯「のし袋」や「のし紙」を使わない人はいないだろう。
これらだけではない。アワビは、安産祈願や婦人病の平癒祈願、魔よけ、禁食など、いろいろなところで日本人の精神生活にまで深く溶け込んでいる。
古代から日本人はアワビという水産生物とどのように向き合い、どうかかわり合ってきたのか、その伝統と文化を皆様に知っていただき、21世紀に伝えたくて、この本を書き下ろした。
まずは、アワビとはどんな貝なのか、なぜ値段が高いのかから入っていこう。そこには、アワビにまつわる豊かな知の海が広がっている。
【目次】
第1章 アワビとはどんな貝
1-1 耳形に巻く殻
1-2 アワビは世界の海に
1-3 アワビの生活ぶり
1-4 アワビはなぜ高い
第2章 アワビを食べる食文化
2-1 料理の多彩さ
2-2 アワビステーキ誕生
2-3 アワビ缶詰
2-4 干しアワビ
第3章 アワビ日本史
3-1 アワビ漁業史
3-2 薬としてのアワビを著した書
第4章 生活に溶け込んだアワビ
4-1 のしあわび
4-2 殻も活用
4-3 安産祈願と魔よけ
4-4 アワビ禁食
4-5 アワビの絵馬
4-6 アワビと民話
第5章 アワビとあま漁業
5-1 海と向き合う
5-2 豊かな海へ
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