著者名: | 大越健嗣 著 |
ISBN: | 978-4-425-85071-6 |
発行年月日: | 2005/7/28 |
サイズ/頁数: | 四六判 164頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,760円(税込) |
貝殻は身を守るためにある?。歯はものを噛むためにある?。ホントにそれだけ?貝殻や貝の歯に秘められた様々な役割、ふしぎな現象、有効利用法に目を向けてみよう!
【はじめに】
ちょっと乱暴な言い方だが、生物の体は硬い部分と軟らかい部分でできている。ウイルスなどのきわめて微小な生物を除いて、骨や歯、貝殻、甲羅(甲殻)、サンゴなど、ほとんどの生物は何か硬いものを体のどこかにもっている。それなのに一般の関心は軟らかい部分にかたよっているし、軟らかい部分を研究している人の数もはるかに多い。
たしかに、DNA、RNA、タンパク質、糖、脂質といった軟らかい部分は、生物の生命活動の中心を担っている。これは疑う余地がない。それらの活動を「陰」で支えているのが硬いもの。そんなイメージがある。硬い部分を「硬組織」と呼んでいるが、これにはどうしても二次的なイメージが付きまとうようだ。物理的で機械的なイメージも強い。骨は身体を支えるためにある。歯はものを噛むためにある。貝殻は身を守るためにある。胆石は代謝異常の産物だ。そんなことは当たり前!・・・と思うかもしれない。しかし本当だろうか?
私は「貝殻と歯は毒物や不要なものをためて捨てるゴミ箱だ」という「硬組織ゴミ箱説」を唱えている。また、歯こぼれもゴミを歯にためて体の外に出すために機能しているという「積極的歯こぼれ説」も支持している。歯や貝殻などの海洋生物の硬い組織にはこれまで知られている機能のほかに未知の、しかもこれまでの常識を覆す機能が隠されている可能性がある。
本書は、あまり知られていない海洋生物の硬組織についての最新の情報をわかりやすく伝えることを目的とした。サンゴ礁のCO2固定能、貝殻や魚の耳石から彼らの生活履歴や生息場所の環境情報を取り出そうとする試み、そしてカキ殻による環境浄化や修復の試みなどの話題も積極的に紹介した。
取り上げた話題は、できるだけ私が直接かかわっているものを中心にした。迫力があり面白い解説をしたいと考えたからだ。また、研究の未来像を示し、まだまだ先の可能性を伝えたい、という理由で仮説をいくつか出した。
本書により、海洋生物の硬組織について関心が深まり、読者の中に本当にひとつでも何か残るものがあったら望外の喜びである。
それではどうぞ、かたくならずにごゆっくりお楽しみください。
2001年8月
大越健嗣
【目次】
第1章 おカタイ体の最新事情
1-1 硬い部分誕生の謎
1-2 貝殻や歯はゴミ箱?
1-3 骨粗鬆症を真珠で治す!?
第2章 貝殻はデータバンク
2-1 硬い体が履歴書に
2-2 貝殻でわかる縄文人の生活
2-3 貝殻の形とでき方
2-4 貝の年齢
2-5 建築家も注目! 貝殻の構造
2-6 貝殻に棲む虫
第3章 貝の歯・ゴカイの歯
3-1 磁石にくっつくヒザラガイの歯
3-2 トゲのあるガードル
3-3 イカのカラストンビ
3-4 ヨウ素がいっぱいゴカイの歯
第4章 貝や魚にゃ石がある
4-1 貝は胆石持ち
4-2 貝が作る宝石「真珠」
4-3 アジの開きと耳石
4-4 リサイクルされるザリガニの胃石
第5章 カキは地球環境にやさしいか
5-1 どうする! カキとホタテの貝殻山
5-2 カキ殻に抗菌作用
5-3 カキとサンゴと地球温暖化
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