著者名: | 廣瀬慶二 著 |
ISBN: | 978-4-425-85093-8 |
発行年月日: | 2014/8/7 |
サイズ/頁数: | 四六判 156頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥1,980円(税込) |
ニホンウナギが国際自然保護連合(IUCN)によって「レッドリスト」の絶滅危惧種に指定された。復活する術はあるのか?
いまだに謎につつまれているウナギの生態から資源管理、養殖に必要な環境や増やし方など、ウナギを深く知り、長く愛してほしい。
【二訂版について】
本書の改訂版を出版しておよそ10年が経過し、その間に日本のうなぎ消費量は大きく減少している。これはシラスウナギの漁獲量減少と深く関係している。ヨーロッパウナギがワシントン条約の対象になり輸出に制限ができたことにもよる。また、今年(2014年)6月国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギをレッドリストの改訂版に掲載する方針を固めたと報道された。
このような状況下でシラスウナギ生産技術は進んでいるのだろうか。一方、ウナギの産卵場解明にも進展が見られたが、日本のウナギ資源はどうであろうか。そこで本書の最後に最近のうなぎをめぐる問題を簡単にまとめてみた。
2014年7月
著者
【はじめに】より
うなぎを食べるならまず思いつくのは“蒲焼き”だろう。現代風の蒲焼きの始まりと土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は江戸時代からと言われている。諸説はあるが、当時の有名人だった平賀源内がうなぎ屋の頼みで看板を書いた日が土用の丑の日で、それによって江戸の人々は、栄養価が高いとうわさのうなぎを食べるようになったらしい。
今も夏の土用の丑の日が近づいてくると、昼時には都会のうなぎ屋の前にサラリーマンの行列を見かける。日本人の体に染みついている醤油、みりんとうなぎの油が醸し出すあの蒲焼きの匂いが辺りに漂っている。現在、日本が一年間に消費するうなぎの量は13万トン、日本人が年間一人5尾程度を食べていることになる。一年間の消費量13万トンのうち10万トンは中国、台湾等からの輸入である。そのうなぎのほとんどが養殖もので、種苗はすべて春先に川に遡上してくる天然のシラスウナギに頼っている。
このところシラスウナギの採捕量が減少するにつれて、当然ながらシラス価格が高騰し、ウナギ養殖業が低迷している。シラスウナギの漁獲量の減少は単なる資源量の低下によるものだろうか。春の風物詩であるカンテラの明かりとすくい網によるシラスウナギ取りは見られなくなるのだろうか。一方、輸入された加工うなぎがスーパーの目玉商品としてケースに並び日本人の胃を満たしている。
人工的にウナギの種苗を作るための研究は昭和36年頃から始まり、昭和47年の12月に世界で初めてウナギの人工ふ化に成功している。それから多くの人達の努力にも関らず、ふ化幼生をレプトケファルスまで育てることができなかった。しかし、平成11年5月27日に、水産庁の養殖研究所がレプトケファルスの育成に成功したとプレスリリースした。昭和47年の人工ふ化の成功から実に27年間もかかっている。この先シラスウナギまでの道のりはいったいどのくらいあるのだろうか。
一方、ウナギの産卵場の探索はこのところ精力的に行われている。それによると、マリアナ諸島の海山で新月の日に産卵している可能性が高まった。しかし、成熟したニホンウナギはまだ1尾も見つかっていない。そこから、海流にのり、3,000kmの長い旅をして日本にたどり着くことになる。
最近のウナギをめぐる生物学の進歩はめざましいが、まだ分からないことが多く、ようやくウナギの尾に軽く触れた程度だろう。そうこうしている間にわが国のウナギ資源の状態が不安になってきた。そこで、ウナギに関する様々な調査や研究の結果を整理しているうちに、日本の食卓からうなぎを消さないために“うなぎを増やす”という主題で本としてまとめてみる思いが強まった。
2009年9月
廣瀬慶二
【目次】
第1章 種類と分布
1-1 日本人とうなぎ
1-2 ウナギの種類
1-3 どのようにして分布を広げたか
1-4 ウナギの一生
第2章 遠い産卵場と日本までの旅
2-1 産卵場のなぞ
2-2 レプトケファルスの発育
2-3 レプトケファルスの誕生日
2-4 海流に乗った日本への旅
第3章 資源は大丈夫か
3-1 天然ウナギとシラスウナギの漁獲量
3-2 日本のウナギ生産量と輸入量
3-3 ニホンウナギは一つの集団か
3-4 ウナギの外来種
3-5 ウナギの生活環境
第4章 人工種苗への道
4-1 魚類の成熟の仕組み
4-2 種苗生産研究の流れ
4-3 ウナギの親
4-4 成熟促進と種苗作り
第5章 最近のウナギ養殖事情
5-1 露地池養殖
5-2 加温式養殖
5-3 うなぎ料理
5-4 養殖をめぐる環境
第6章 うなぎを増やす
6-1 国際的な資源管理
6-2 放流魚の健苗性と種苗性
6-3 沿岸や河川の保全対策
6-4 うなぎ学のすすめ
補章 うなぎをめぐる最近の話題
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