最新のサケ学 ベルソーブックス011


978-4-425-85101-0
著者名:帰山雅秀 著
ISBN:978-4-425-85101-0
発行年月日:2004/4/28
サイズ/頁数:四六判 140頁
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価格¥1,760円(税込)
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サケとマスはどう違うのか。サケはどうして故郷の川へ帰ってくるのか。サケの小型化・高齢化現象とは何か。
サケによって維持される自然環境とは。「海からの贈り物」サケの不思議と魅力のすべて。

【はじめに】
日本人とサケは、古くは縄文時代から深いつながりを持ってきたと言われている。サケが生まれた川に帰ってくることは江戸時代の『和漢三才図会』(1712年)という書物にみることができる。このようになじみみの深いサケであるのに、どういうわけかその生物学に関しては、これまで十分な内容を記載されたものがなかった。
サケはどうして故郷の川に帰ってくるのだろう? 同じ種類なのに海へ降りていくものと、一生淡水で生活するものがいるのはどうしてなのか? 産卵期間はかなり長いのに春になると一斉に海へ降りていくのはなぜだろうか? などなど、サケに関する不思議な興味は尽きない。
ところで、日本は先進諸国のなかでも食糧自給率が50%以下ときわめて低い(米国・フランスが100%超、ドイツ90%、英国70%台)。そんなわが国にとって、人工孵化放流されているサケは、国内で再生産できる数少ない重要な水産食糧たんぱく資源の一つとなっている。しかし、「海からの贈り物」といわれるサケは、日本では自然産卵できる河川が限られており、野生のサケはごく少数に過ぎない。
1980年代になると、日本に帰ってくるサケは体が小さくなったり、戻ってくるまでに年月が長くかかるようになってきた。その原因は地球温暖化であるとか、北太平洋に異変が起きたのではないか、などのさまざまな仮説がたてられたが、人工孵化放流されたサケが野生魚や生態系に直接的・間接的に影響を及ぼしているという説も出ている。
本書では「サケ学(Salmonology)」の入門書として、サケの魅力と重要性について紹介していきたい。また、サケの小型化と高齢化を例に、北太平洋に生息できるサケの「器の大きさ」(環境収容力)が無限でないこと、孵化場の魚が野生魚に及ぼす生態学的、生理学的、遺伝学的な影響について解説し、野生魚の保存がいかに大切であるのかを伝えたいと思っている。
第1章から3章ではサケの分類や分布、回避、成長といった基礎的な生物学について述べる。その後の4章から6章では小型化・高齢化、孵化場魚と野生魚の関係について述べていきたい。それぞれの章は独立しているので、興味のあるところから読んでいただきたい。本書によって、サケの不思議と魅力を堪能していただければ幸いである。なお、わが国では伝統的に「サケ」とはシロザケのことをいうが、本書ではサケ科のサケ属魚類8種を代表してそう呼んでいるのでお断りしておく。
最後に、本書をまとめるにあたり、内容・構成に関して貴重なコメントをいただいた東北大学谷口旭先生に深く感謝します。本書を、一般の読者に捧げるまえに、日々の研究への協力と図版スケッチを作成してくれた妻ひとみに捧げます。

2002年9月
帰山雅秀

【目次】
第1章 サケの仲間
 1-1 サケとマスの違い
 1-2 サケの仲間
 1-3 サケの起源
 1-4 サケの系統樹

第2章 サケの生活史
 2-1 サケの一生
 2-2 どうしてサケは海へ降りるか?
 2-3 サケの雄と雌のかけひき
 2-4 サケの発育
 2-5 サケの移動と残留
 2-6 サケの海洋生活

第3章 母川回帰のメカニズム
 3-1 2つの母川回帰説
 3-2 母川回帰をコントロールするホルモン
 3-3 視覚と嗅覚の役割
 3-4 母川回帰と迷い込み

第4章 サケは増えると小型化する
 4-1 サケ資源の変動
 4-2 気候の変動とサケの資源
 4-3 個体群の密度依存効果?小型化と高齢化?

第5章 孵化場生まれと野生のサケ
 5-1 わが国のサケ保護の歴史
 5-2 河川環境を守れなかった河川省略型の増殖技術
 5-3 孵化場魚が野生魚に及ぼす影響
 5-4 自然環境とサケ増殖事業のあり方?4つの課題?

第6章 サケは海からの贈り物
 6-1 サケは生物多様性と物質循環の担い手
 6-2 サケは海からの贈り物


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