著者名: | 塩見一雄 著 |
ISBN: | 978-4-425-85122-5 |
発行年月日: | 2013/3/25 |
サイズ/頁数: | 四六判 178頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,980円(税込) |
世界で一番の魚好き、エビ・カニ好きの日本人。実は世界一の魚貝類のアレルギー大国だった!? 現代人に急増している食物アレルギーとは何か。水産物をメインにその原因と実状を解説し、対応策を探る。
【はじめに】より
日本人の3人に1人は、何らかのアレルギーをもつと言われている。私自身も、数年前に突然花粉症にかかり、毎年2〜4月は鼻水、鼻づまり、くしゃみなどに苦しんでいる。また、大掃除では必ずくしゃみや眼の痛み、呼吸困難などが起こるので、ハウスダスト・アレルギーに、さらに研究で実験動物に用いることから、ウサギ・アレルギーにもなっている。しかし幸いにも、食物アレルギーとは無縁である。食物アレルギーは、生命の維持に不可欠な食物の摂取によって引き起こされる。重篤な場合にはアナフィラキシー・ショックにより死亡することもあるので、花粉症やダニ・アレルギーなどより問題は深刻である。
ギリシャ時代にルクレチウスは“Quidnocet alteri alteri juvat”(=One’s food is another man’s poison:ある人にとっての食べ物は他の人にとっては毒)という記載を残していて、この時代にも食物アレルギーがあったと推測される。しかし、その後の長い歴史をみても、食物アレルギーが問題になったことをうかがわせる文献はない。食物アレルギー患者が増加し、死者も出て世界的に社会問題にされるようになったのは、ここ20〜30年のことなのである。実際、私が子供の頃には身近に食物アレルギーの人がいたという記憶がないが、最近は私が所属している大学の学会に毎年入学してくる学生80数名のうち、食物アレルギーの人が必ず何人かはいる。
全国規模のアンケート調査(1996〜1999年度)で眺めてみると、日本では食物アレルギーは結構多いこと、中でも魚貝類アレルギーがきわめて重要であることがわかる。しかし、食物アレルギーに関する研究は卵、牛乳、大豆、小麦などの農畜産物が中心で、魚貝類アレルギーについては、タラ・アレルギーを除くと、本格的な研究は10年ほど前にようやく始められ、しかもその大部分は欧米で行われてきたに過ぎない。私たちは、「欧米と比べると日本では、摂取する魚貝類の量が多いだけでなく、その種類もはるかに多様なのだから、魚貝類アレルギー問題は欧米よりも複雑で、日本独自の取り組みが必要である」との発想の基に、6〜7年前から研究テーマに取り上げてきた。その結果も含めて、これまでの研究成果を整理し、問題点を指摘しておくことは食物アレルギー、中でも特に重要な魚貝類アレルギー問題の解決への一助になると考え、本書の刊行を企画した。
なお本書は、魚貝類を原因とする特殊なアレルギーも取り上げ、魚貝類によるアレルギー全般を理解できるようにしたつもりです。食物アレルギー分野だけでなく、水産学、食品化学、食品衛生学、公衆衛生学などの分野の研究者や学生、食品関係の業務に携わっている方々にも一読いただければ幸いです。
2003年2月
塩見一雄
【目次】
第1章 食物アレルギーの発生状況
1-1 食物アレルギーとは何か
1-2 日本人の14人に1人は食物アレルギー
1-3 アレルギーを起こす食品の表示
1-4 外国のアレルギー事情
1-5 食物アレルギーは遺伝するか?
1-6 アレルギー・マーチ
1-7 アレルギーはなぜ増えたか
第2章 食物アレルギーはなぜ起こる
2-1 アレルギーは免疫反応
2-2 免疫系に登場する細胞たち
2-3 自然免疫と獲得免疫
2-4 抗体の種類と構造
2-5 抗体産生とT細胞の役割
2-6 抗体産生とB細胞の役割
2-7 アレルギー研究史の3つの発見
−アナフィラキシー、レアギン、IgE
2-8 食物アレルギー発症の準備
2-9 食物アレルギーの発症
2-10 なぜ特定の人に現れるのか?
2-11 アレルゲンのエピトープ
第3章 魚の食物アレルギー
3-1 北欧に多い、タラ・アレルギー
3-2 魚類の主要アレルゲンは「パルブアルブミン」
3-3 パルブアルブミンのIgE結合には立体構造が重要
3-4 魚アレルギーの人はカエルでもアレルギー
3-5 新たなアレルゲン「コラーゲン」
3-6 その他の魚類アレルゲン
第4章 エビ・カニ(甲殻類)の食物アレルギー
4-1 主な食用甲殻類
4-2 甲殻類の主要アレルゲンは「トロポミオシン」
4-3 エビ・アレルギーの人はカニでもアレルギー
4-4 その他の甲殻類アレルゲン
4-5 甲殻類のコンタミネーションに注意
第5章 貝類・イカ・タコ(軟体動物)の食物アレルギー
5-1 軟体動物の主要アレルゲンも「トロポミオシン」
5-2 軟体動物の新しいアレルゲン「パラミオシン」
第6章 魚貝類の特殊なアレルギー
6-1 サバの生き腐れ−アレルギー様食中毒−
6-2 職業性アレルギー
6-3 赤潮によるアレルギー
6-4 海水浴性皮膚炎
6-5 アニサキス・アレルギー
第7章 食物アレルギーの予防と治療
7-1 除去食
7-2 市販の低アレルゲン食品
7-3 低アレルゲンの水産加工食品
7-4 抗アレルギー食品
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