著者名: | 平井明夫 著 |
ISBN: | 978-4-425-85161-4 |
発行年月日: | 2007/1/8 |
サイズ/頁数: | 四六判 198頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,760円(税込) |
色も形も性質も、まったく異なる魚卵たち。親魚が卵に託した生き残り戦略とははたしてどんなものか?
小さな卵が繰り広げる不思議な世界をとくとご覧あれ!
【はじめに】より
あるテレビ番組の調査によると日本人の96%は魚卵が好きだとのことである。もちろん、私は魚卵の類は大好物である。魚の卵の話を書いたこの本を読み始めた貴方も当然大好きにちがいないと思う。その番組によれば、好きな魚卵の順位は一位「イクラ」、二位「タラコ」、三位「カズノコ」だそうだが、それぞれの親の名前をご存知だろうか。そう、「イクラ」はサケ、「タラコ」はスケトウダラ、「カズノコ」はニシンの卵である。では、自然界でそれらの卵がどのように産みだされ、どのように育っていくか知っているだろうか。
「イクラ」は、親魚が作った川底のくぼみの中に産み落されて
孵化まで小石と小石の隙間で過ごしている。一方、「たらこ」は親達が海中に産出し、卵は海の中を潮の流れに乗ってふわふわ漂っている。「カズノコ」はと言うと、海岸近くの海藻にくっついて孵化を待つのである。このように、「イクラ」、「タラコ」、「カズノコ」3種は、それぞれ異なった環境で産みだされ、育ち、孵化していく。そして、その卵が私達の口に入るとき、それぞれの食感の違いは卵が育つ環境の違いに深く関係しているのだ。
川や湖、そして海の中には多種多様の魚達が生活している。そして、産みだされる卵も、さまざまな形を持ち、さまざまな場所、さまざまな状況の中で育っていく。いやいや、卵を産むだけではない。中にはわれわれ哺乳類と同じように子供を直接産み出す魚もいるのだ。卵が孵化し無事育っていくかどうかは、その魚にとっての未来がかかっている。どうやって、外敵から卵を守り、どうやって出来るだけ多くの卵を孵化させるか、親達の必死の選択が千姿万態の卵に見て取れる。これから先、皆さんが日頃お目にかかれない自然の中での魚卵の姿を出来る限り紹介していきたいと思う。そして、これまで食べ物としてしか見なかった魚卵の凄まじい生き残り戦略をご覧いただきたい。
この本は一般の人が気楽に読めるように出来るだけ専門用語は使わないようにした。たとえば、卵から孵った魚は発育段階によって「前期仔魚」、「後期仔魚」、「稚魚」、「若魚」、「未成魚」、「成魚」と専門的な区分があるが、皆さんには煩わしいと思ったので、孵化してから親になるまでをまとめて「稚魚」としてある。また、エピソード風な話も努めて盛り込んだつもりなので最後まで楽しく読んでいただけるのではないだろうか。
それでは、興味尽きない魚の卵の世界をご堪能いただきたいと思う。この本を読み終わったときには、貴方は思わずタラコの卵をほぐして卵の数を数えだすのではないだろうか。
2003年11月
平井明夫
【目次】
第1章 魚卵食品のはなし
1-1 元は日本語,ほぐせばロシア語?スジコとイクラ?
(1)スジコ・イクラの親はサケ
(2)川の中で耐えるサケ
(3)スジコとイクラの作り方
(4)人口イクラ作りにチャレンジ
1-2 トンビがタカを産む?タラコ?
(1)タラコの親はスケトウダラ
(2)タラコにならないマダラの卵
(3)タラコと明太子
(4)食品以外にも利用されるタラコ
1-3 「おやつ」から「ダイヤモンド」へ?カズノコ?
(1)カズノコの親はニシン
(2)海藻に付くカズノコ
(3)輸入カズノコ
(4)「カズノコ」という名前
1-4 キリストも食べたかも??カラスミ?
(1)ボラ以外にもカラスミの親
(2)カラスミになる魚卵の条件
(3)カラスミは太閤様のお気に入り
(4)カラスミは芸術品
1-5 世界三大珍味の一つ?キャビア?
(1)チョウザメの卵は黒いダイヤ
(2)青・黄・赤?ラベルでわかる品質
(3)模造キャビアと人工キャビア
(4)待望の養殖キャビア
(5)キャビア消滅への道
1-6 元祖ブリッコ?ブリコ?
(1)ブリコの親はハタハタ
(2)嵐と共にやってくるハタハタ
(3)ブリコ盛衰
(4)ブリコ,手塩にかける
1-7 まだある魚卵食品
(1)子持ちシシャモ
(2)コウルカ(マコウルカ)
(3)トビッコ
第2章 千差万別,魚の卵
2-1 メダカの卵・マグロの卵
2-2 水に浮く卵と沈む卵
(1)海を漂う浮性卵
(2)じっと時を待つ沈性卵
2-3 卵の大きさと数の関係
(1)大きな魚は卵も大きい?
(2)魚はいくつ卵を産む?
2-4 ここまで異なる形と構造
(1)卵はまん丸だけじゃない
(2)魚種によって異なる卵の構造
2-5 卵の形状いろいろ?まとめ?
第3章 放任?過保護?親子の関係
3-1 卵を産みっぱなしの魚たち
3-2 卵を守る魚たち
(1)巣を作る魚
(2)卵を持ち運ぶ魚
(3)卵を守るのは男の役目
3-3 卵を托す魚たち
(1)他の魚に托す魚
(2)他の動物に托す魚
3-4 子供を産む魚たち
(1)交尾をする魚
(2)子供を産むエイ・サメ
(3)子供を産む魚
第4章 魚卵たちの生き残り戦略
4-1 多産・少産の選択
(1)多産と少産の比較
(2)多産と少産はどっちが得?
(3)水温によって卵径を変える理由
4-2 華麗なる卵膜構造の謎
4-3 カタクチイワシの卵はなぜ楕円形か?
第5章 海に漂う卵が教えること
5-1 魚卵研究の歴史
5-2 魚卵調査から得られる情報
5-3 魚卵の調査方法
5-4 魚卵研究の難しさ
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