著者名: | 安田 徹 著 |
ISBN: | 978-4-425-85301-4 |
発行年月日: | 2007/9/8 |
サイズ/頁数: | 四六判 192頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,760円(税込) |
ふぅわり、ゆらゆら
優雅に海中を漂う美しいクラゲたち。
心を癒すものもいれば、
人々に大きな被害を与えるものもいる。
不思議に満ちたクラゲたちの生態、被害対策、利用法を探る。
【はじめに】より
近年、温暖化に伴う地球環境(大気や海洋等)の変化・異常現象が話題となっています。新聞、雑誌やテレビなどのメディアを通じて、私たちは世界規模で起こっているその現状を知ることができます。海洋に関することでは、海面の水位や水温の上昇、豪雨による沿岸土砂の流入等がとりあげられ、今後の見通し・予測が論じられています。
では海洋生物ではどうでしょうか。最近、海に面する国々の人達に最も注目されているもののひとつに、クラゲ類の大量(異常)発生・出現があります。この異常現象は、地中海、黒海、北海、杭州湾、メキシコ湾等の全世界の沿岸・沖合から報告されています。ご承知のように、わが国の日本海や瀬戸内海でもクラゲの大発生・出現は頻発しており、その規模が次第に拡大していく傾向にあります。
このクラゲ類の大量発生・出現も、実は海洋被害をもたらす代表的な赤潮のひとつと考えられるのです。広くは海の環境保全、産業面では漁業・臨海工業被害、小さなことでは海水浴に来ている人が刺される事故に至るまで、大量のクラゲによって引き起こされている問題は多岐にわたっています。しばしば別の問題として捉えられがちなこれらへの対策を考えていく場合、いったい何が重要なポイントとなるのでしょうか。
この問題解決や対策を考える場合に、まずフィールドー実際に海に漂っているーにおけるクラゲ類の基本的な生物学的特性を理解しておくことが大切です。本書は、日本の沿岸海域に出現する主なクラゲ約20種の特徴・特性の概要の他、代表種ミズクラゲと、最近、特に漁業被害が甚大で、各地のニュースとなっている巨大エチゼンクラゲをとりあげています。今まで知られている生物学的な面を整理すると共に、私が主に日本海の若狭湾で得た体験も加えながら解説してみました。また、事例の少ないクラゲの調査・研究の方法、その現状の他、今後の課題・予測、意外な利用方法についても触れておきました。
なお、文末には特に巨大クラゲの漁業被害対策について、今後早急に取り組んで解明していかなければならない重要な調査・研究テーマや組織体制の見直しについて、私の考え方を述べておきました。
本書が、クラゲという動物への理解を深めると共に大切な海洋環境問題解決の糸口となり、クラゲの被害からわが国の沿岸・沖合漁業を守っていく際の足がかりになれば幸いです。
【目次】
第1章 不思議な生き物〜クラゲ
1-1 クラゲは「刺す」動物
1-2 クラゲの種類と体のつくり
1-3 姿が変わる生活パターン
(1)ポリプ(無性世代)
(2)クラゲ(有性世代)
1-4 いろいろなクラゲ
(1)エダアシクラゲ
(2)ドフラインクラゲ
(3)カミクラゲ
(4)オワンクラゲ
(5)ハナガサクラゲ
(6)カツオノエボシ
(7)ギンカクラゲ
(8)アサガオクラゲ・ジュウモンジクラゲ
(9)アカクラゲ
(10)キタユウレイクラゲ
(11)タコクラゲ
(12)ビゼンクラゲ・スナイロクラゲ
(13)アンドンクラゲ
(14)フウセンクラゲ
(15)ウリクラゲ
(16)その他の深海性クラゲ
第2章 ミズクラゲ-海面を覆うUFO-
2-1 ミグクラゲはどんなクラゲか
2-2 世界中の海が住み家
2-3 いつ・どうして出現するのか
(1)出現する時期
(2)ミズクラゲが好む水温
(3)高塩分の海水から真水にも適応!?
(4)世界一の高分布密度となった巨大な群れ(若狭湾の浦底湾)
(5)ミズクラゲは上下にも移動する
(6)ミズクラゲが反応する明るさ
(7)若狭湾・能登半島でのユニークな増え方
(8)UFOへの成長と死亡
(9)食事の様子
(10)ミズクラゲの天敵と寄り添う生き物たち
第3章 エチゼンクラゲ-世界最大級の厄介者-
3-1 巨大クラゲの発生と生態
(1)いつから現れていたのか
(2)エチゼンクラゲの姿
(3)故郷は中国・韓国か?
(4)エチゼンクラゲ襲来の条件
(5)大量発生のメカニズム
Study 巨大クラゲの測り方
(6)何を食べて巨大化するのか
(7)エチゼンクラゲに寄り添う魚たち
(8)日本列島が巨大クラゲに包囲される
(9)エチゼンクラゲの群れは2グループ
コラム 使い捨てライターでクラゲのお里を探る
資料:エチゼンクラゲの出現記録
第4章 クラゲが海を埋め尽くす日-被害の実態-
4-1 ミズクラゲの被害
(1)網の中はクラゲで一杯
(2)漁獲量への影響ー日本海マイワシの消滅原因
4-2 被害もスケールも違うエチゼンクラゲ
4-3 発電所を襲うクラゲの群れ
4-4 電気クラゲ・毒クラゲー海岸で刺傷事故発生!ー
第5章 クラゲ戦線に異常あり−対策から利用法まで−
5-1 なぜ大量発生するようになったのか
(1)大量発生する環境と予測の方法
(2)エチゼンクラゲの当たり年と気候
(3)日照りと空梅雨が大好き
(4)21世紀はクラゲの時代か?
5-2 撃退方法はあるのか?
(1)行動パターンを利用する
(2)クラゲを誘導する
(3)漁具の改良
(4)クラゲが増えない環境をつくる?
(5)日本・韓国・中国の協力体制
(6)クラゲ対策の問題点
5-3 クラゲの有効利用法
(1)クラゲを食べよう−しゃぶしゃぶ、アイス、クッキーなど−
(2)クラゲ・サプリメントで健康に
(3)これからの利用法
コラム クラゲセラピー−水族館で心を癒す−
■著者プロフィール
1938年 北海道帯広生まれ
1962年 北海道大学水産学部増殖学科卒業
青森県水産試験場技師
1989年〜1998年 福井県栽培漁業センター所長
1994年 福井県立大学生物資源学部非常勤講師兼任
水産学博士(北海道大学、1976年)
技術士(水産部門 水産水域環境、1998年)
日本水産学会賞奨励賞受賞(1981年)
日韓学術交流賞受賞(1995年)
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