著者名: | 田村郁夫 著 |
ISBN: | 978-4-425-39256-8 |
発行年月日: | 2008/10/28 |
サイズ/頁数: | A5判 300頁 |
在庫状況: | 在庫僅少 |
価格 | ¥4,180円(税込) |
海陸輸送の結節点である港湾は、物流ターミナルとして、生産と消費を結ぶ流通機構の最も重要な基幹として物流の中核をなすものであり、経済活動にとって大きな役割を担っています。その港湾には、莫大な量の貨物が流動かつ集散していますが、これら貨物の輸送、荷役、荷さばき、保管、包装および情報などを含め貨物の積卸しを主体とする運送にかかわっている港運業務は、意外と複雑で一般には必ずしも理解されておりません。それだけにこれをわかりやすく解説することは容易ではありません。
本書は、港運実務およびこれに関連する分野も含め、できる限り幅広い視点でその業務をとらえ、関連する諸法規などもUp-To-Dateなものに基づいて記述した本として定評を得てきました。
6訂版では港湾運送事業法、港湾法、内航海運業法などの改正に伴い、記述内容の補正をはかりました。なお、各統計資料ほか巻末資料についても一新しています。
【はしがき】より
資源に乏しいわが国の経済構造は、原材料を広く海外に求め、製品の販路もまた、海外に求める重化学工業を基盤とする加工貿易立国としている。特に近年、臨海工業地帯の開発による生産力の拡大、各種船舶の専用化の進展につれて専用埠頭や専用ターミナルの整備、拡充など海上輸送における技術革新は、輸送システム全体に大きな変革をもたらした。
一方、海陸輸送の結節点である港湾は、物流ターミナルとして、生産と消費を結ぶ流通機構の最も重要な基幹として物流の中核をなすものであり、経済活動にとって大きな役割を担っている。その港湾には、莫大な量の貨物が流動かつ集散しているが、これら貨物の輸送、荷役、荷さばき、保管、包装および情報などを含める貨物の荷卸しを主体とする運送にかかわっているのが港運業務である。
しかし、その業務の実態は意外と複雑で一般には必ずしも理解されていない。それだけにこれをわかりやすく解説することは容易ではない。
筆者は過日、港運論についての講義を依頼されるに際し、適当な参考書はないものかと専門書店にて探し求めたが見当たらず、やむなく自らそのテキストを作ることとした。海運関係の実務参考書は数あるが、港運関係には、一分野における専門書はあるものの実務に関する解説書はほとんど見受けられなかった。またそれは、かねがね書店へ足を運ぶに痛感してきたものでもある。
このたび、株式会社成山堂書店のお勧めにより、期せずして執筆の機に接し、労を要することとはいえ敢えて筆をとることとした。
本書は、港運実務およびこれに関連する分野も含め、できる限り幅広い視点でその業務をとらえ、海運、船舶、貿易、通関、保険などとの相関性およびこれらと関連する諸法規などもUp-To-Dateなものに基づいて記述した。また、執筆に当たっては、巻末に記した文献等を参考とするほか、筆者自身の経験および保存資料を活かし、紙面の許す限り詳述したつもりである。なお、内容は、図表、書式、写真なども取入れ、できる限り平易かつ体系的にし、要目は、附記、参考事項および資料などを織りこみ解説した。したがって、今後、港湾の活動の場とする諸賢の実務入門書として、また、港運実務関係者の参考書として大いに資するものと思っている。
本書により港運への理解が深まり、実務の一助となれば誠に幸である。
なお、本書をまとめるに際し、資料の提供など、ご協力いただいた各位に対し、この紙面を借りて厚くお礼を申し上げる。
終りに。刊行にあたり、多々ご尽力を賜った株式会社成山堂書店の小川實社長ほか編集部の方々に深く感謝の意を表したい。
平成3年8月
著者しるす
【目次】
第1章 港湾の概要 1.1 港湾の概念および現状
1.1.1 港湾の概念
1.1.2 港湾の現状
1.1.3 国際複合一貫輸送の台頭
1.2 港湾の種類
1.2.1 一般的分類
1.2.2 法規上の分類
1.3 港湾の区域(港域)
1.4 港湾の施設
1.5 港湾の管理運営
1.6 港湾の機能
1.7 海上貨物に関する運送事業
1.7.1 海上運送事業
1.7.2 内航海運事業
1.7.3 港湾運送事業
第2章 港湾産業と港湾運送事業法
2.1 港湾産業の概要
2.2 港湾運送事業
2.2.1 一般港湾運送事業の特質
2.2.2 港湾運送事業の業域
2.2.3 港湾運送事業の業種と内容
2.3 海上運送契約と港湾貨物(個品運送貨物と傭船運送貨物)
2.3.1 バース・ターム(Berth TermまたはLiner Term)
2.3.2 FIOターム(Free In & Out Term)
2.3.3 海上運送契約の構成
2.4 港湾運送事業法の改正とその要旨
2.4.1 免許基準の見直し
2.4.2 事業法の一部改正
2.5 規制緩和と港湾運送事業法の抜本的改正(12.5.17)およびその要旨
2.5.1 港湾をめぐる物流環境の変化と同法改正に至る経緯
2.5.2 港湾運送事業法の沿革
2.5.3 港湾運送事業の特殊性と現行規制の問題点
2.5.4 行政改革委員会の最終報告書の現行規制の見直しと指摘点
2.5.5 運輸政策審議会海上交通部会における答申の内容
2.5.6 改正事業法の要旨
2.5.7 一般港湾運送事業等の規制緩和の拡大
2.5.8 指定特定重要港湾(港湾法第2条の2、第50条の4)
2.6 倉庫業
2.7 その他の港湾事業
2.7.1 通関業
2.7.2 梱包業
2.7.3 情報業
第3章 船舶と船腹量および貿易量
3.1 船舶の要目
3.1.1 船舶トン数
3.1.2 船積に関連するトン数
3.2 船舶の寸法
3.3 船体および船積に関連する要目
3.3.1 喫水(Draft)と喫水標(Draft Mark)
3.3.2 トリム(Trim)
3.3.3 乾舷(Free Board)と乾舷標(Free Board Mark)
3.3.4 満載喫水線標(Plimsoll Mark)
3.3.5 復元力(Stability)
3.3.6 外力と船体構造
3.3.7 船舶の資格
3.4 その他の参考要目
3.4.1 船舶の速力
3.4.2 船舶の航行区域
3.5 船舶の種類
3.5.1 呼称上の分類
3.5.2 用途別分類
3.5.3 機関別分類
3.5.4 その他の分類
3.6 船体の外形
3.7 船種別船腹量とフルコンテナ船の船腹および取扱量
3.7.1 わが国商船の船種別船腹量
3.7.2 コンテナ船の船型・船腹の巨大化
3.7.3 世界の主要港湾のコンテナ取扱量の推移
3.8 わが国の海上貿易量および貿易額
第4章 船積貨物と船付計画
4.1 貨物の分類
4.1.1 荷姿上の分類
4.1.2 性質上の分類
4.2 積付計画の要点
4.2.1 基本的要点(堪航性の保持:Sea Worthiness)
4.2.2 載貨上の要点(堪荷性の保持:Cargo Worthiness)
4.2.3 船積み可能積載量
4.3 積付(Stowage)と積割り(Space Allotment)
4.4 荷役装置
4.5 積付位置の呼称
4.6 荷役装置の荷重試験(Load-Test)
第5章 元請の業務(Part-1)
5.1 元請の港湾運送業務
5.2 元請ステベの業務概要
5.3 元請ステベの輸入業務
5.3.1 入港前の実務
5.3.2 入港後の実務
5.3.3 荷役終了の手仕舞
5.4 元請ステベの輸出業務
5.4.1 入港前の実務
5.4.2 入港後の実務
5.4.3 荷役終了の手仕舞
5.5 荷役作業中の事故処理
5.6 関係法規上の申請、届出手続き
5.7 輸出および輸入貨物の書類の流れ
第6章 元請の業務(Part-2)
6.1 コンテナ・ターミナルの施設
6.2 コンテナ・ターミナルの機器とシステム
6.3 コンテナ船およびコンテナの荷役
6.3.1 荷役形態上の分類
6.3.2 コンテナ船の荷役
6.3.3 コンテナの積付上野要点
6.4 コンテナ
6.4.1 コンテナの国際規格
6.4.2 コンテナの種類と用途
6.4.3 コンテナの各部名称
6.5 コンテナ・ターミナルの作業運営体制
6.6. CYオペレーターの輸入業務
6.6.1 入港前の実務
6.6.2 入港後の実務
6.6.3 荷役終了後の手仕舞
6.6.4 コンテナ貨物の引渡し
6.7 CFSオペレーターの輸入業務
6.7.1 CYからコンテナ貨物の引取り
6.7.2 貨物の取出し作業
6.7.3 LCLカーゴの引渡し
6.8 CYオペレーターの輸出業務
6.8.1 入港前の実務
6.8.2 入港後の実務
6.8.3 荷役終了後の手仕舞
6.9 CFSオペレーターの輸出業務
6.9.1 空コンテナの準備
6.9.2 LCLカーゴの受取り
6.9.3 コンテナ詰作業
6.9.4 作業終了後の手仕舞
6.10 輸出および輸入コンテナ貨物の書類の流れ
第7章 通関手続き
7.1 通関前の手続き
7.2 輸出通関
7.2.1 輸出申告
7.2.2 輸出許可の変更手続き
7.2.3 臨時開庁と時間外使役
7.2.4 積戻し
7.2.5 コンテナ貨物の通関
7.3 輸出貨物の船積
7.3.1 船積の順序
7.3.2 コンテナ貨物の船積
7.3.3 M/R、D/R記載上の保留事項
7.3.4 船積後の手続
7.4 輸入通関
7.4.1 陸揚前の手続
7.4.2 輸入貨物の陸揚
7.4.3 コンテナ貨物の陸揚
7.4.4 輸入申告
7.4.5 コンテナ貨物の通関
7.5 通関の特別手続
7.6 保税運送
7.7 輸出および輸入手続の流れ
7.8 FOB、C&F、CIF条件の比較
第8章 革新船および専用船の荷役システム(コンテナ船を除く)
8.1 RoRo船(Roll on/Roll off ship)
8.2 自動車専用船(Pure Car Carrier:PCC)
8.3 穀物専用船(Grain Carrier)とサイロ(Silo)
8.4 バージ・キャリヤー・システム(Barge Carrier System)
8.5 その他のシステム
8.6 専用船の概要
8.6.1 鉱石専用船(Ore Carrier)
8.6.2 石炭専用船(Coal Carrier)
8.6.3 木材専用船(Log/Lumber Carrier)
8.6.4 チップ専用船(Chip Carrier)
8.6.5 タンカー(Tanker)
第9章 重量物の荷役
9.1 重量物荷役の要点
9.1.1 荷役計画の策定
9.1.2 使用ワイヤースリングの強度
9.1.3 つり角度と荷重の変化(Part-1)
9.2 重量物の積荷役
9.2.1 船体の傾斜
9.2.2 荷役中の要点
9.3 甲板の強度
9.3.1 Safty Weight(安全強度/安全荷重)
9.3.2 重量物専用船の甲板強度
9.4 カーゴ・セキュアリング(Cargo Securing:貨物の区画固定)
9.5 ワイヤー・ロープの強度
9.5.1 強度の算出
9.5.2 所要ワイヤーの径の算出
9.6 重量物荷役における実証的解明
9.6.1 つり角度と荷重の変化(Part-2)
9.6.2 ベクトル法による荷重の算出
9.6.3 衝撃荷重によるワイヤー・ロープの強度
9.7 参考算式(安全率および荷重)
9.8 荷役用索具の強度
9.9. 偏荷重におけるつり角度と荷重の配分
第10章 危険物、有害物の取扱い
10.1 危険物船舶運送及び貯蔵規則の概要
10.2 国際規約と外国規定
10.2.1 国際規約
10.2.2 外国規定
10.3 危規則上の危険物の分類と規定(第2条関係)
10.3.1 荷送人に対する規制
10.3.2 運送人に対する規制
10.4 港湾における取扱い規定
10.4.1 港則法上の危険物に対する規制
10.4.2 危険物の荷役許可および許容量
10.4.3 陸上運送における規制
10.5 危険物の貯蔵、取扱い上の手続
10.6 危険品、有害物事前連絡表
10.7 危険物、有害物の荷役
10.7.1 積載時の基本的要点
10.7.2 在来船荷役
10.7.3 コンテナ船荷役
10.7.4 コンテナ内部の積付
10.8 労働安全衛生法上の危険物、有害物
10.9 安全衛生管理上の指摘物質
第11章 運賃と料金
11.1 運賃と料金制度の概要
11.1.1 規制の法的根拠
11.1.2 運賃と料金制度
11.2 料金の種類
11.2.1 一般料金
11.2.2 特殊料金
11.2.3 基本料金以外の料金
11.3 作業コストと生産性
11.3.1 ギャング構成と生産性
11.3.2 生産性と作業原価
11.4 荷役条件と生産性
11.5 在来船荷役貨物量の予測
第12章 クレームに対する考察
12.1 関連法規および保険
12.1.1 船荷証券統一条約(Hague Rules)
12.1.2 ヘーグ・ウイスビー・ルール(Hague Visby Rules)
12.1.3 国際海上物品運送法
12.1.4 港湾運送約款
12.1.5 貨物海上保険
12.1.6 共同海損(General Average-YAR)
12.1.7 P&I Club(船主責任相互保険組合)
12.1.8 船舶保険
12.1.9 コンテナ保険
12.1.10 港運業者(元請)の損害賠償責任保険
12.2 クレームと関係法規
12.2.1 損害賠償額(Claim Amount)の基準
12.2.2 責任限度額(Package / Unit Limitaition)
12.2.3 損害の通知義務
12.2.4 提訴期限(責任の消滅)
12.3 国内法規との関連性
12.3.1 民法との関係
12.3.2 商法との関係
12.4 クレームの実務的処理
12.4.1 本船事故の種類
12.4.2 事故発生時の処置
12.4.3 貨物損傷事故の処置
12.4.4 現認書とクレーム
12.5 実務上、特に知っておくべき要項
12.5.1 法規上の関連事項
12.5.2 実務処理上の重要事項
12.6 クレーム処理の文例および摘要
(海事図書)
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