著者名: | 石畑崔郎 著 |
ISBN: | 978-4-425-47111-9 |
発行年月日: | 2006/4/28 |
サイズ/頁数: | A5判 292頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥5,500円(税込) |
四方を海に囲まれた日本では、輸出入の物資の大半が船舶によって運ばれています。船舶はこのような重要な役割を果たしているにもかかわらず、実際の現場でどのように動かされているのかは、あまり知られていません。その船舶の出入港時の操船技術に焦点を当てたものが本書です。海上歴50年余り、現在も瀬戸内海で水先人を務める元船長の労作です。
本書の大きな特徴は、国内外主要港での実経験に基づく多くの操船例を、具体的に記している所にあります。前半部分は船長として経験した世界の海での操船、後半は水先人として携わった瀬戸内海での操船の事例を収録しています。扱っている船の種類は、ばら積み船、タンカー、LNG船などさまざまで、港の設備や気象条件も個々に異なっています。
注目すべき点は操船例の紹介に続けて書かれている「考察」欄です。ここでは著者が操船時に考えていたことや、反省点が述べられていて、操船者がどのような意図で,実際にどのように船を動かしているのかを知る上で大変参考になります。
操船関係者にとっては、理論と実際の違いが分かる好著であり、より安全で効率的な操船をする手引き・ヒントがこの本のなかにあるでしょう。
【はじめに】
私は、船に乗り始めて以来、50余年が過ぎ、前半は世界の海で色々な操船を見て来た。後半は、風光明媚な瀬戸内海で水先人として、日夜東航西走操船を行って現在に至っている(現在水先人歴27年)。
操船は、操船情報の収集ー思考ー指示を含む意思決定を行う実学といわれている。
その真髄は、言葉や思索も及ばない程深遠であると感じている。それは、船の状態、乗組員の技量、そして操船する海域が様々であり、風や潮流地形が異なって操船に影響するからである。
本書は、一般の操船参考書と異なって、多くの操船の実例を具体的に記したものである。
前半は、船長時代に経験した操船、外地ではパイロットによるもの、内地では自分で操船したものをメモし、それを記している。
この中では、VLCCをタグボート無しで7点係留する操船(現在内海では、5隻のタグボートを使用している)、うねりや潮流の強い海域で、タグボート無しでシングルブイに係留するなど、当時急激に船舶が巨大化していく中で、技術の伝承と研究の積み重ねで、この様な操船を可能としたらすばらしい操船等がある。
後半は、瀬戸内海で水先人として多くの操船に携わり、船を動かすのにどの様な考えで、実際にどの様に操船したか、LNG船を新しく出来た港に、初めて如何に船を進めるか? その検討と実際はどうであったか、等操船事例を示している。
本書で、操船される方は、何かを感じとっていただければ、海事関係者は、操船者がどの様な意図で、実際どの様にして船を動かしているか、理解下されば幸いである。
本書は、それぞれ独立した内容となっているので、目次を見て、興味のある所から読んでいただければと思っている。
本書を著述するにあたり、多くの参考書研究論文を参照させていただきました。また、神戸商船大学名誉教授の本田啓之輔先生に、多くの御教示をいただき感謝しております。
出版の機会と御支援をいただきました(株)成山堂書店の小川實社長及び御協力をいただきました関係者各位に謝意を表します。
平成18年4月
内海水先人 石畑崔郎
【目次】
第1編 世界の海での操船
1 鳩星丸操船の実際 6型BULKER
[1]単浮標係留
香港入港/名古屋入港/大阪入港
[2]単浮標からの解纜
香港出港/名古屋出港
[3]右舷付け着岸
横浜入港/横浜入港/Singapore入港/Port Swettenham入港/海南入港
小松島入港/徳山入港
[4]右舷付け離岸
神戸出港/海南出港/徳山出港
[5]左舷付け着岸
横浜入港/神戸シフト/広島入港
[6]左舷付け離岸
大阪出港/広島出港
[7]強潮下の着離岸
香港入港/香港出港/Singapore入港/Singapore出港/Rangoon入港/Rangoon離岸シフト
2 仁光丸操船の実際 23型BULKER
[1]自力左舷付け着岸(Esperance入港)
[2]自力左舷付け離岸(Esperance出港)
[3]タグボート1隻使用左舷付け着岸(Sattle入港)
[4]他船山越しタグボート1隻使用右舷付け着岸(Seattle入港)
[5]他船山越しタグボート1隻使用右舷付け着岸(Seattle出港)
[6]狭いタグボート1隻使用山越し左舷着岸(Portland入港)
[7]タグボート2隻使用狭いバースより離岸(Portland出港)
[8]他船山越しタグボート2隻使用右舷付け着岸(Vancouver入港)
[9]潮流2ktタグボート2隻使用左舷着岸(Vancouver Shift)
[10]他船山越しタグボート2隻使用左舷付け着岸(Fremantle入港)
3 WORLD BRIDGESTONE 操船の実際 50型LPG
[1]堺入港
[2]大阪入港
[3]大阪出港
[4]袖ヶ浦入港
[5]袖ヶ浦出港
[6]川崎入港
[7]川崎出港
[8]Mina Al Ahmadi 入港
[9]Mina Al Ahmadi 出港
[10]Bandar-Mashur 入港
[11]Western Port入港
その1強潮流時操船/その2強潮流強風下の操船
[12]Ras Tanura入港
4 武光丸操船の実際 230型TANKER
[1]Milford Haven 出港
[2]Le Verdon 入港
[3]Mina Al Ahmadi 入港
[4]Mina Al Ahmadi 出港
[5]Das Island 入港
[6]Jebel Dhanna 入港
[7]Jebel Dhanna 出港
[8]Mina Al Ahmadi 入港
[9]Tranmere 入港
[10]Tranmere 出港
[11]洋上接舷その1
[12]洋上接舷その2
[13]洋上解纜その1
[14]洋上解纜その2
5 CYPRESS KING操船の実際 160型鉱油兼用船
[1]Savona 入港
[2]Savona 出港
[3]Genova 入港(狭い水域へ後進にて着岸)
[4]Genova 出港(狭い水域からの出港)
[5]La Skirra 入港
[6]Zueitina 入港(タグボート使用せずシングルブイ係留)
[7]Brass River 入港(タグボート無し強潮流下シングルブイ係留)
[8]Dumai 入港
[9]Dumai 出港(浅水影響、潮流、海底の起伏の影響を受けての水路の航行)
6 龍光丸操船の実際 230型TANKER
[1]Ras Tanura 入港
[2]Ras Tanura 出港
7 あるぷす丸操船の実際 275型TANKER
[1]Ras Tanura 入港
[2]Ras Tanura 出港
[3]Ras Tanura 出港
[4]Free Port 入港
[5]Curacao 入港
[6]喜入入港
第2編 瀬戸内海での操船
1 操船設計とその一例 巨大船大分新日鉄Nバース着桟操船
2 巨大船幅寄せ操船の最適化とヒューマンファクター
3 柳井港LNG船入港操船設計検討(Harbour Masterの利用)
4 柳井港LNG船入港の実際(操船設計と実際の比較)
5 柳井港LNG船出港操船設計検討
6 大分港LNG船入港の検討と実際(Habour Masterによる操船設計と実際)
7 坂出検疫錨地より、番の州三菱化学A号バース操船設計と実際(強い横潮を受けての操船)
8 宇部興産6号入港操船設計と実際(横潮、浅水影響を受ける操船)
9 加古川神戸製鋼Eバース着岸操船設計と実際
10 水島巨大船入港操船検討(多数の巨大船入港実績より、安全な操船標準の検討)
11 徳山VLCCシーバース入港操船(2錨7ブイ多点係留の実際)
12 タグボート1隻による着岸操船
〔1〕タグボート1隻による操船時の参考事項
〔2〕操船の実際
〔2〕ー1 飾麿5岸左舷入船操船
〔2〕ー2 飾麿船場川8岸右舷入船操船
〔2〕ー3 福山箕ノ沖岸壁右舷出船操船〔その1〕〔その2〕
〔2〕ー4 大分成分E5バース出船左舷着け操船
〔2〕ー5 大分昭電12号出船右舷着け操船
(海事図書)
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