実践 鉄道RAMS−鉄道ビジネスの新しいシステム評価法−


978-4-425-96111-5
著者名:溝口正仁・佐藤芳彦 監修 日本鉄道車輌工業会RAMS懇話会 編
ISBN:978-4-425-96111-5
発行年月日:2006/5/28
サイズ/頁数:A5判 190頁
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【まえがき】より 〔社会資本の信頼性と安全性確保の重要性〕
 近年、科学技術の革新と社会構造の複雑化が進展するなかで、社会資本といわれる大型プラント、原子力発電設備、宇宙ロケット、航空機、鉄道車両等はシステムとして複雑かつ高度化するとともに巨大化する傾向がみられる。これら社会資本が事故を起こした場合、極めて深刻な事態を招くことはこれまでの各種事故の実例が示すところである。それらの信頼性と安全性の確保が現代社会の大きな課題となっている。
〔信頼性と安全性の評価法RAMSの発展と適用範囲の拡大〕
 1950年代後半より、信頼性工学が発展的に体系化され、RMS(米国)あるいはRAMS(欧州)概念の成立に連なった。1970年代から、この概念をもとにしたRAMS手法が開発整備され、社会資本の信頼性と安全性を評価するのに採用されるようになった。その適用範囲が漸次拡大されるとともに、RAMS手法が規格体系として整備されてきた。近年、環境にやさしい輸送手段として鉄道が見直され、世界各地で高速鉄道、都市間鉄道、都市鉄道の整備・建設が進められている。それとともに2002年に鉄道RAMS国際規格に則って信頼性と安全性の評価が行われるようになってきた。日本の企業は、海外の鉄道案件に積極的に取り組んでいる。たとえば、鉄道車両を納める場合、その鉄道車両がRAMS解析により信頼性と安全性の要求を満足することを立証することが義務づけされることが多い。国内においても、製品について一部の鉄道事業者から信頼性の数値データを提出することが求められるようになっている。
〔RAMSの分かりやすい解説書を求める声〕
 このような背景のもとに、鉄道関係のメーカ企業の関係者の方々から「RAMSについて分かりやすく説明した解説書がないか」との声が?日本鉄道車輌工業会(以下:鉄車工)にも寄せられるようになった。また、別の問合わせでは、「従来、企業においてRAMS活動は専門家任せであったが、最近のRAMSの普及傾向のもと、その活動結果は企業経営に大きく影響するので、ISO9000シリーズの品質活動と同じく、企業の経営管理層および各分野のスタッフも関心をもって対応することが必要となってきている。このため、RAMS活動について専門家向けでなく一般向けに分かりやすく解説した書籍がないか」との声が寄せられるようになった。これに応えるために、2004年末より「RAMS懇話会」を組織して、実際業務においてRAMSの経験のある方々にボランティアとして参加を願い、RAMS解説資料の作成についての検討を行ってきた。その結果、RAMSの分野ごとに懇話会メンバーの方々がそれぞれ担当し、寄せられた意見に沿って、Part別に記事をとりまとめることが決まった。この記事においてビジネスにおけるRAMS活動の説明を重視するとの趣旨に基づき、各種の専門書の他に、鉄者工において以前行われたRAMS研究会の調査資料、各関係機関の報告書、じっさいのビジネスにおける仕様書等を多く集め、参考にした。このようにして作成されたRAMS解説の記事は、2005年4月号、7月号および10月号の鉄道車両工業誌に、シリーズとして掲載した。
〔本書発刊の趣旨〕
 本書は、このシリーズ記事をベースにして、単行本として体勢を改めたのはもちろん、内容的にもより充実したものにすべく多くの改訂を加えた。
 上に述べたごとく、専門書にみられるようにRAMSの取り扱われ方、さらにRAMSの概念、適用の現状、ビジネス上の問題等を重点に記述することにしたので、内容的にはビジネス書に近いものになっているのが特徴といえる。
 したがって、本書が、RAMSを業務で直接扱われる方に限らず、多くの方々、とくに各産業分野において実際の業務をマネジメントする立場にある方々、あるいは営業、調達または管理業務の立場でRAMSに関係される方々にRAMSの問題について理解を深めていただき、業務の実施に何らかの参考になれば幸いである。
〔本書の監修者〕
 本書は、鉄道車両工業誌のシリーズ記事を全面的に見直して編纂したが、全体の監修には溝口と佐藤があたった。

【目次】
Part? 実際のビジネスにおけるRAMS活動
 1 適用の進展
  1.1 発展とその背景
  1.2 鉄道分野への適用
  1.3 ビジネスへの影響
  1.4 企業における活動と経営管理
 2 仕様書等の記載用語
  2.1 基本的用語
  2.2 信頼性・安全性の予測的解析法
   Q & A

Part? 鉄道RAMSの考え方  1 規格
  1.1 規格制定の背景
  1.2 欧州規格から国際規格へ
  1.3 国内で期待される役割
 2 RAMS規格の内容
  2.1 RAMS要素の関係
  2.2 鉄道のRAMS
  2.3 規格の構成
 3 信頼性
  3.1 信頼性とは何か
  3.2 信頼性数値の意味するもの
  3.3 信頼性と車両開発
 4 アベイラビリティ
  4.1 アベイラビリティとは何か
  4.2 車両メーカの範囲
 5 保全性
  5.1 保全性とは何か
  5.2 保全の種類と特徴
  5.3 保全性と車両開発
  5.4 まとめ
   Q & A

Part? 鉄道ビジネスにおけるRAMS適用  1 鉄道プロジェクトにおけるRAMS活動
  1.1 海外での活動
  1.2 規格類
  1.3 鉄道案件における適用例
 2 日本における現状と問題
  2.1 現状
  2.2 企業意見
  2.3 認識の共通化の必要性
   Q & A

Part? 鉄道信号システム −デジタルATC開発への適用−  1 取組みの動機
 2 D-ATCシステムの概要
  2.1 D-ATCシステムの動作
  2.2 既存システムとの違い
  2.3 開発におけるドキュメント
 3 RAMS規格とD-ATC開発プロセスの対照
  3.1 RAMSドキュメントへの再構成
  3.2 文書「システム基本」の効果
 4 日本の手法とRAMS規格の関係
  4.1 安全性設計手法について
  4.2 SIL配分手続きについて
  4.3 ドキュメント作業量に関して
  4.4 事業者とメーカの役割
   Q & A

Part? 鉄道車両用電機品へのRAMSの適用事例  1 鉄道車両用電機品の評価の実際
  1.1 評価の事例
  1.2 米国鉄道車両の案件
  1.3 仕様書と引用規格類
  1.4 用語の定義
  1.5 RAMS実施組織
 2 RAMS要求と対応作業のフロー
  2.1 手順
  2.2 信頼性(故障率)目標
  2.3 事前設計段階での作業
 3 鉄道電機品の信頼性活動の課題
  3.1 発注者との事前の意見調整
  3.2 合理化の必要性
  3.3 データベースの整備と充実の必要性
  3.4 作業の範囲
   Q & A

Part? 鉄道車両用機械品へのRAMSの適用事例  1 メーカのRAMSへの対応
  1.1 ブレーキ機器への対応
  1.2 海外案件における事例
  1.3 機械品メーカとしての固有な事項
 2 手順と作業内容
  2.1 手順
  2.2 作業項目の区分
  2.3 事前設計段階における作業
  2.4 サブシステム設計段階における作業
 3 特徴と留意事項
  3.1 実情
  3.2 特徴
  3.3 留意事項
   Q & A

Part? 鉄道RAMSとシステム思考  1 システム思考の普及
  1.1 システム思考
  1.2 システム思考の成果とその特徴
  1.3 社会の複雑化とシステム思考
 2 システム規格の発展とそれに伴う問題
  2.1 規格体系へのシステム思考の影響
  2.2 システム規格の問題
 3 海外における適用傾向
  3.1 鉄道関係システム規格の動き
  3.2 海外案件からみる適用傾向
 4 導入についての考え方
  4.1 基本的認識
  4.2 導入時に考慮すべきこと
  4.3 導入への考察

Part? 鉄道RAMSの日本としての課題  1 誤解と偏見
 2 規制緩和後の新技術導入に伴う評価方法の確立
  2.1 新技術導入の評価法
  2.2 海外案件のトレンド
  2.3 国内と海外案件の関連
  2.4 新技術登場等に伴う説明責任
 3 鉄道車両の開発ツールの見直し
  3.1 車両信頼性・コスト等の評価
  3.2 現状への適用方法
  3.3 高信頼性・低コストのアピール
  3.4 RAMSの日本化
 4 今後の課題


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カテゴリー:鉄道 タグ:技術 鉄道 
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