著者名: | 杉田 清 著 |
ISBN: | 978-4-425-30301-4 |
発行年月日: | 2007/2/28 |
サイズ/頁数: | A5判 280頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥3,960円(税込) |
人類文明の象徴であり世界産業を支えた「炉」の技術発展と関連する省エネ・環境対策の歴史を時代背景や活躍した人物と共に紹介する。
【まえがき】
われわれ現代人は、直接、間接を問わず「炉」の計り知れぬ恩恵にあずかっている。同時に、そのエネルギー問題や環境対策い悩まされている。文明の象徴であり、人類の生存に不可欠となっている「火」そして「炉」と、どのようにして共生していけばいいのか。これは、21世紀が人類に突きつけている最重要課題の一つである。地球温暖化の問題は、まさにその核心であろう。
その重要性のわりには、炉についての社会全般の関心や理解は、必ずしも十分ではないように思われる。それは、一つには、ほとんどの炉がいわゆる工業炉であり、工場設備の一部として専門家の手にゆだねられ、一般社会には縁遠い存在となっているからである。そして、もう一つには、一般市民向けの適当な解説書なども無いことである。
本書は、いわば「歴史からの入門書:炉の科学と技術」であるが、執筆にあたっては、つぎの三点を特に重視した。
まず、炉をめぐる各種の課題のなかで、焦点を「エネルギーと環境」に絞っている。本書をお読みになれば納得されるはずであるが、炉の技術の骨格を築いてきたのは、実は省エネルギーと環境対策のための英知であった。そしていまや、ご存じのとおり、それらは地球規模の緊急課題である。本書によってエネルギー・環境問題の源流としての炉を紹介したい。
つぎに、本書は歴史的な視点から記述されている「炉の歴史書」でもある。その狙いの一つは人類の英知が凝縮した「歴史の教訓」に学び、「温故知新」の効果を期待したいからであるが、筆者が同時に強調したいのは、その優れた学習効果である。新しい分野、特に科学技術への入門には、その歴史を勉強するのが、内容の理解と学習のスピードの両面で最良の方法である、と筆者は確信している。さらに、読者の中には、本書にダイジェスト版「火の文化史」を散策する楽しさを見出される方々も少なくないことを、ひそかに願っている。
そして第三の力点こそ、筆者が終始格別にその達成に努めた執筆方針である。それは一般市民・生活者に目線を合わせ、重要な内容を落とさずに、誰にでもわかる、平易な読み物とすることである。
これからの科学、技術、そして産業の発展には、社会各層からの理解と支持が不可欠である。専門家や一部の関係者のみの「知る人ぞ知る」時代は終わりつつある。炉の世界も例外ではない。まして、それが地球規模の緊急課題に密接するとなれば、なおさらのことである。
本書には、各種の専門用語を含めて、極めて専門技術的な記述が少なくないが、全体としては高校生以上の読者が十分理解できる内容と考えている。少なくとも、一般社会人がとかく感じがちな専門技術書特有の心理的バリアーは、最低限にとどめるよう工夫したつもりである。
このたび(株)成山堂書店から本書が出版される運びとなった。筆者の執筆意図をご理解の上、出版をお引き受けいただき、終始懇切なご助言を頂戴した、同社の小川寛社長、宗方嘉浩・元顧問ならびに関係者各位に、心から感謝申し上げたい。
本書は、冒頭の導入部を除けば、古代からの炉の進化、新技術の出現などを時代に沿って紹介し、最後に今後を展望する構成となっている。内容は、枝葉を避け、技術の大きな流れに注目し、節目となる主要なトピックをとりあげた。
同時に、各時代での社会情勢あるいは他分野の科学技術との相互作用も重視した。また、無機質になりがちなこの世界も、「主役は人間」であることを忘れぬために、炉をめぐって活躍した人物とそのエピソードなどを随所に挿入した。さらに、引用文献を含めて詳細な史実や技術データなどに関心をお持ちの読者のために、代表的な参考文献を巻末に収録した。
本書が、読者のエネルギー・環境問題への理解を助け、古くて、新しい人類文明の象徴「炉」再発見への契機となることを期待したい。
【目次】
第1部 予備知識としての炉概論
第2部 古代・中世・ルネサンス期の窯炉
第3部 産業革命の主役・工業炉
第4部 産業革命期の周辺科学・技術
第5部 日本古来の炉技術と明治開国
第6部 石油・電力の出現と炉生産性の向上
第7部 戦後復興・高度経済成長期の諸相
第8部 環境保全・省エネルギー(その1)
第9部 環境保全・省エネルギー(その2)
第10部 21世紀を担う新技術
第11部 これからの炉関連重要技術について
第12部 炉歴史の概括と将来展望
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