新版 日本港湾史


978-4-425-30311-3
著者名:(社)日本港湾協会 編
ISBN:978-4-425-30311-3
発行年月日:2007/7/18
サイズ/頁数:B5判 1250頁
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価格¥39,600円(税込)
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【発刊に寄せて】より
 海洋国家である日本にとって、港湾はいつの時代にも国際交流・国際貿易の窓口として、我が国の経済のみならず文化や社会の発展を支える役割を担ってきました。交通通信手段が飛躍的に発展向上した現在においても、我が国の経済を支える輸出入貨物の99.7%が港湾を通して運ばれていることに端的に表されているといえます。こうした今日の港湾の存在と役割は、長い年月にわたる我が国経済経済社会の要請に応え、課題点を一つ一つ克服する幅広い港湾関係者船先達の取り組みによって積み重ねられたものに他なりません。
 明治期以降に限ってみても、近代国家形成期から発展期における取り組み、昭和18年の運輸通信省設置による港湾行政の一元化、昭和25年の港湾法制定、その前後に続く戦災復興期における取り組み、昭和30年代の船混みや、臨海工業地帯開発に象徴される高度成長期への対応、昭和40年代以降のコンテナ化や船舶の大型化、高度化などへの対応、昭和50年代以降の環境・公害問題などへの対応、昭和60年代以降のウォーターフロント整備への対応、平成に入ってからは、地球環境問題への対応、国際的な産業立地と物流の構造変化への対応、さらには大規模震災など防災・危機管理問題への対応に加えて、近年では、我が国港湾の国際競争力向上問題への対応などが要請されてきました。
 これらの要請に応え、課題を解決するため、国は全国の港湾政策を立案し、財政支援する立場から、港湾関係者は所管する港湾の経営管理の立場からなど、港湾に関わる多くの関係者が取り組んできました。これらの港湾整備発展の歴史を、各時代を通じて、制度整備を含む港湾政策から、港湾の計画、建設、管理運用に至る多面的な切り口で体系的に整理することは、単に歴史的資料としての価値にとどまらず、今後の港湾の整備振興発展策を検討する上でもきわめて有用なものとなることが期待されながら、これまで単独の図書としては編纂されることがありませんでした。
 この度、このような期待に応えるものとして「新版日本港湾史」が日本港湾協会からその設立80周年事業の一環として発刊されたことは、大変に意義深いものがあります。21世紀を生き抜く我が国経済社会社会を支える港湾の将来像を見据え、実現方策を検討する上での共通の情報基盤の一つとして、幅広い関係者に利用されることを願ってやみません。


【発刊のことば】より
我が国の経済が今日世界有数の規模と質を誇り、国民もまたそのもとで豊かで安定した生活を送っている背後に、全国各地の港湾の働きがあるということについて、国民に十分理解されているとは言い難い。さらには、その港湾の国際競争力が、急激な経済成長と国家の政策によって急成長を遂げている近隣諸国の港湾に比較して、急速に落ちているという事実については、いまだ国民的な関心事とはなっていない。資源や食糧の大部分を海外に依存し、世界と製品・中間財の輸出入などの交易によって豊かさを享受している我が国にあって、港湾は国の成り立ちそのもそに関わる重要なインストラクチャーである。その港湾の実状と取り組みについてより多くの国民に正しく理解されることは、今後の我が国の安定的な成長のために不可欠な要件である。
しかし、振り返ってみれば、港湾関係業務に携わる者の間でも、近代国家としての歩みを始めた明治期から現在に至るまでの、港湾の整備振興に力を尽くした、国、地方政府、海運・港湾関係者など多岐にわたる先達の取り組みについて、正確な理解と議論が行われているとは言い難い。一つにはそれらの取り組みの意図が史料として十分に伝わらず、今日の人々には結果としての事実のみしか確認できないことがあるように思われる。情報基盤を十分に整理し、史実に基づく共通の認識と評価がなされることは、国民的な議論の広がりのためにまずなされなければならない基礎的な作業である。
日本港湾協会は、大正11年(1922年)に大連の地で開催された港湾会議における議決に基づいて翌年設立された港灣協曾から数えて、平成14年(2002年)が設立80年に当たる。設立当初の当協会の課題は、港湾の設備振興のために港湾関係行政組織を一本化することと港湾関係の基本法典の制定を実現することであった。前者については昭和18年の運輸通信省設置により、後者については昭和25年の港湾法制定により、その後に至る日本の港湾行政の骨格が形成されることになる。その後基本的にはこの枠組みにしたがって、各時代の要請を先取りしあるいは対応しながら港湾政策が推進されてきた。これらの取り組みのなかには、港湾が先駆的な事例を拓いたものも少なからず認められる。
港湾の面的な空間の利用と機能の整備計画を港湾修築計画として策定し、それに基づいて国の財政支援と地方政府の負担とで整備する方式は戦前からすでに形ができあがっていた。また、民間連携や民間活力活用が政府部内で叫ばれるはるか以前から、民間と連携し、民間の負担を取り込む事業制度を確立していた。五か年計画などの公共事業関係長期計画に先立って、10年以上の将来を展望した港湾の将来像ビジョンを策定し、国土計画にも取り込まれるなど、新しい政策枠組みを構築したことも他にない先駆的取り組みであった。
大きく変化するであろう国際情勢と我が国が初めて経験する少子高齢化などの難題にも対処しつつ、地球環境問題の解決の一翼を担い、世界の平和と繁栄に貢献できる日本を目指すうえでは、港湾政策の立案と実行に当たるものへの期待と責任はますます大きくなるであろう。過去の先達が知恵と汗を結集して積み重ねてきた多面的な取り組み事例を、すべての港湾関係者が自らの血とし肉としながら活かしてくれることを率直に望みたい。
日本港湾協会は、その創立80周年を記念する事業として、これらの思いから明治期以降の我が国港湾整備振興の過程について、制度面に加えて計画、建設、管理運営面など多面的な分析を含む通史として「新版日本港湾史」を発刊することにした。編纂の意図を実現するために尽力いただいた藤野慎吾編集委員長(前日本港湾協会会長)、編集実務を指揮していただいた川嶋康宏幹事長をはじめとする、すべての編集委員、幹事、執筆者各位に心から感謝を申し上げたい。特に、常任の担当者として2年間日本港湾協会の参与に就任し、編集の細部に至るまで心を配っていただいた石渡友夫副幹事長の献身的な努力について謝意を表す。
幅広い関係者に本書が活用され、明日の日本の港湾像の議論とその実現に大いに貢献できることを祈りつつ、新版日本港湾史の発刊のことばの結びとする。

(海事図書)


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カテゴリー:海運・港湾 
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