海事・交通・水産・気象図書出版の成山堂書店

台風来襲時に大きな被害をもたらしてきた高潮。その予測は困難な点も多く、現在もなお脅威である。本書は日本沿岸・世界各地で発生した主な高潮を取り上げ、基礎から理論・予報手段まで解説する。

【内容】
台風に伴って発生することの多い高潮は、潮汐や台風の動きによっては予想を超えた被害をもたらすこともあり、依然として脅威な自然災害のひとつです。
本書は高潮の定義や基礎を実例とともにわかりやすく解説し、高潮の理論、予報・シミュレーション手段について概説したものです。実例として取り上げている高潮は過去100年に起きた顕著なもので、日本では約20例、世界では約10例を扱っています。また、高潮の動きや大きさ、台風との関連を数式で解析し、過去に発生した台風を別の場所に置き換えて高潮を予測するシミュレーション方法も示している。その他、密接に関係する潮汐の基礎理論についても巻末の付録で解説しています。
“災害は忘れたころに来る”という言葉があります。実例に多く当たることが正確な予報への第一歩であり、本書はこうした研究者はもとより防災・予報業務に携わる人にも参考となる一冊です。

【目次】
第1章　序論
　1.1　海面の高さ
　1.2　高潮の定義
　1.3　何を測るのか
　1.4　高潮を誘う気象現象
　1.5　熱帯低気圧による高潮（その1）
　1.6　熱帯低気圧による高潮（その2） 第2章　世界の高潮
　2.1　世界の高潮
　2.2　19世紀までの高潮
　2.3　熱帯低気圧による20世紀の高潮（その1）
　2.4　熱帯低気圧による20世紀の高潮（その2）
　2.5　温帯低気圧による高潮

第3章　高潮の実態−伊勢湾台風の場合を例として−
　3.1　高潮の実態
　3.2　伊勢湾台風の経路と気象状況
　3.3　高潮の状況
　3.4　高潮による災害

第4章　日本沿岸に起きた高潮の歴史−過去100年間の記録から−
　4.1　日本の高潮
　4.2　1911年7月26日の高潮
　4.3　1917年10月1日の高潮
　4.4　1927年9がち13日、有明海に起きた高潮
　4.5　1934年9月21日の高潮（室戸台風による）
　4.6　1938年9月1日の高潮
　4.7　1942年8月27日〜28日の周防灘周辺の高潮
　4.8　1945年9月17日の高潮（枕崎台風による）
　4.9　1949年8月31日の高潮（キティ台風による）
　4.10　1950年9月3日の高潮（ジェーン台風による）
　4.11　1951年10月14日の高潮（ルース台風による）
　4.12　1953年9月25日の高潮（台風13号による）
　4.13　1954年9月26日の高潮（洞爺丸台風による）
　4.14　1956年8月17日の高潮（台風9号による）
　4.15　1959年9月26日の高潮（伊勢湾台風による）
　4.16　1961年9月16日の高潮（第2室戸台風による）
　4.17　1970年8月14日〜15日の高潮（台風9号による）
　4.18　1970年8月23日の高潮（台風10号による）
　4.19　1985年7月1日の高潮（台風6号による）
　4.20　1990年9月27日の高潮（台風19号による）
　4.21　1995年台風12号による八丈島の高潮

第5章　高潮の理論
　5.1　高潮を起こす海水の運動
　5.2　基礎方程式
　5.3　海面、および海底の接線応力
　5.4　台風域内の気圧と風の分布
　5.5　基礎方程式の解き方
　5.6　基礎方程式を差分方程式に直して解く方法の一例
　5.7　温帯低気圧による高潮の計算
　5.8　台風、その他の熱帯低気圧による高潮の追算と数値実験
　5.9　これまでの高潮のシミュレーションの成果と問題点
　5.10　陸棚を伝わる長周期波−エッジ波、陸棚波など−
　5.11　砕波帯付近における平均的な海面の高さの変化
　5.12　高潮と河川

第6章　高潮の予報
　6.1　高潮予報の手段
　6.2　高潮予報のための実験式
　6.3　数値実験の結果を利用する方法（その1）
　　　　陸棚の高潮についての米国での試み−SPLASH法からSLOSH法まで−
　6.4　数値実験の結果を利用する方法（その2）
　　　　港湾の高潮予報に関わるわが国での試み
　6.5　直接台風モデルを走らせる方法

第7章　高潮の対策
　7.1　高潮の災害を防ぐ手段
　7.2　高潮は忘れた頃に来る−被害を助長させる一つの要因−
　7.3　防御のための施設
　7.4　台風接近時の気象庁の対応
　7.5　避難について

追録
　A.引用文献と参考書
　B.潮汐の減少
　　B.1　潮汐と高潮
　　B.2　起潮力とおもな分潮
　　B.3　潮汐のおもな性質
　　B.4　日本沿岸の潮汐
　　B.5　世界の潮汐
　C.潮位偏差の計算法