海洋音響の基礎と応用


978-4-425-53071-7
著者名:海洋音響学会 編
ISBN:978-4-425-53071-7
発行年月日:2004/4/28
サイズ/頁数:B5判 314頁
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価格¥5,720円(税込)
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潮流・温最前線の専門家による海洋音響の全て。基礎知識から海洋探査・海洋ロボット・海洋音響トモグラフィ等、最新の応用技術まで、詳細に解説。

【まえがき】より  本会は1973年の創立ですので、2003年に創立30周年を迎えました。この間、演奏会、研究発表会などを開催し、また季刊の会誌を発行し、会員の資質向上と情報の交換を行ってきました。また、「海洋音響ー基礎と応用」、「海洋音響用語辞典」などの書籍を発刊し、海洋音響技術の普及に努めて来ました。そして、創立30周年事業として、記念会誌の発刊、記念シンポジウムの開催などを行い、21世紀に向けて意思を新たにしたところです。
 この間の海洋音響技術の発展はめざましく、海洋音響トモグラフィを始めとして、多くの新たな技術が開発され、また基礎学問も大きく進展しています。したがって、1984年に諸賢の努力により発刊されました「海洋音響ー基礎と応用」はやや古くなった感は免れません。そこで、創立30周年事業の一環として、全面的に新たに書き換えた「海洋音響の基礎と応用」を発刊することとしました。
 本書の章立てなどは旧版を参考としつつも、新たに海洋音響トモグラフィや海洋ロボットなどの章を設けるなど刷新を図っています。全体は、旧版同様、「1 序論」、「2 基礎編」、「3 応用編」の3篇にわかれています。序論では、海洋音響技術の必要性、発展の経緯が述べてあります。基礎編では、音波の基礎理論から始まり、海洋音響で必要となる基本事項を一通り述べてあります。なお、音響学の基礎的事項については、他の教科書なども参考にして下さい。応用編では、現時点での海洋音響の応用技術をほぼ網羅しています。全体を通じ、用語は極力「海洋音響用語事典」にしたがいましたので、これも参考にして下さい。
 海洋は生命発生の場であり、莫大な鉱物資源や生物資源を擁する広大かつ豊穣な場であります。また地上に水を供給し、地球温暖化を押さえる環境の制御者でもあります。科学技術・学術審議会答申にもありますように、21世紀は持続可能な海洋利用という立場から、この海を知り、守り、利用する必要があります。その際に、電波がほとんど使えない海中で目や耳となるのが、海洋音響技術です。海洋音響の全体を専門に扱った書籍は、海外には数冊ありますが、わが国では旧版以外ありませんでした。本書は旧版を引き継ぐものとして、海洋を科学し、賢く利用するために、お役に立てるものと思います。
 本書は、最先端で活躍されている方々に執筆していただきました。執筆者の方々、特に本書の発刊に努力され、惜しくも発刊を見ずに亡くなられた笹島孝夫前会長、基礎編の大部分を担当されました鎌田弘志、さらにいろいろご協力いただきました株式会社成山堂書店の小川實社長に感謝いたします。

【目次】
第1部 序論
第1章 海洋と音響
 1.1 陸から海へ
 1.2 海と環境
 1.3 音の利用
 1.4 人工ソーナーと生物ソーナー

第2章 海洋音響技術の発展
 2.1 水中音を聴く
 2.2 タイタニック号の悲劇
 2.3 世界大戦と海洋音響
 2.4 我が国の海洋音響技術の発展
 2.5 20世紀から21世紀へ

第2部 基礎編
第3章 音響の基礎
 3.1 振動と音波
 3.2 音波の基本式
 3.3 音響放射の基本式
 3.4 音の反射と屈折
 3.5 音響の変数と単位

第4章 ソーナー入門
 4.1 アクティブ法とパッシブ法
 4.2 ソーナー方程式
 4.3 音の送受波
 4.4 伝搬損失
 4.5 ターゲットストレングス
 4.6 残響
 4.7 雑音
 4.8 信号検出

第5章 音源からの放射
 5.1 モノポール音源
 5.2 ダイポール音源
 5.3 ピストン音源
 5.4 放射インピーダンス
 5.5 近距離音場と遠距離音場
 5.6 送波レベル

第6章 送受波器
 6.1 電機系、機械系、音響系の相似性
 6.2 圧電振動子
 6.3 送受波器の特性
 6.4 実際の送受波器の構造と設計
 6.5 指向性とビームフォーミング

第7章 海洋とその音響特性
 7.1 海水の組成
 7.2 海洋構造
 7.3 海中の音速
 7.4 音波の吸収

第8章 音波伝搬
 8.1 音波伝搬理論の分類
 8.2 音線理論
 8.3 音線計算
 8.4 音速プロファイルと音線
 8.5 ノーマルモード法
 8.6 放物型方程式
 8.7 時間領域有限差分法
 8.8 海底堆積物の音響モデルと音響特性

第9章 反射散乱と残響
 9.1 凹凸面における反射散乱
 9.2 物体からの反射散乱
 9.3 気泡からの反射散乱
 9.4 海面による反射散乱
 9.5 海底による反射散乱
 9.6 体積散乱
 9.7 残響とその特徴

第10章 海中の雑音
 10.1 雑音の重要性
 10.2 自然メカニズムによる雑音
 10.3 人為メカニズムによる雑音
 10.4 艦船放射雑音レベル

第11章 信号の検出と処理
 11.1 ソーナー信号処理の基本
 11.2 音波のゆらぎ
 11.3 ソーナー信号の確率モデル
 11.4 目標の検出

第12章 水中音響計測
 12.1 送受波器の特性計測
 12.2 反射と透過の計測
 12.3 雑音の計測

第3部 応用編
第13章 海底面の探査
 13.1 海底の探査の概要
 13.2 サイドスキャンソーナー
 13.3 マルチビーム音響測深機

第14章 地層探
 14.1 音波探査
 14.2 音源
 14.3 表層探査
 14.4 深海曳航式音波探査
 14.5 マルチチャネル反射法地震探査
 14.6 屈折法地震探査
 14.7 今後の発展方向

第15章 水中物体探知(アクティブソーナー)
 15.1 水中物体探知の概要
 15.2 各種アクティブソーナー
 15.3 アクティブソーナーの能力評価
 15.4 音響映像
 15.5 海中探査における適用例

第16章 音源の探知(パッシブソーナー)
 16.1 音源探知の概要
 16.2 水中音の調査・監視
 16.3 各種パッシブソーナー
 16.4 パッシブソーナーの能力評価

第17章 海洋の計測
 17.1 音波による海洋計測の概要
 17.2 海流の計測
 17.3 波と潮汐の計測
 17.4 海洋構造の計測

第18章 海洋音響トモグラフィ
 18.1 概要
 18.2 トモグラフィの原理
 18.3 トモグラフィシステム
 18.4 海洋観測の実例

第19章 水中の位置と速度の計測
 19.1 概要
 19.2 水中での位置計測
 19.3 水中での速度計測

第20章 水産・生物音響
 20.1 水産音響の基礎
 20.2 漁業用音響技術
 20.3 海洋生物調査用音響技術
 20.4 水棲生物音響
 20.5 人の水中聴覚

第21章 水中通信とデータ伝送
 21.1 水中通信とデータ伝送の概要
 21.2 水中通話機
 21.3 データ伝送
 21.4 遠隔制御

第22章 非線形音響とその応用
 22.1 非線形音響の概要
 22.2 波形歪みの発生機構
 22.3 理論解析
 22.4 パラメトリック音源

第23章 船舶雑音
 23.1 船舶雑音の概要
 23.2 機械雑音とその軽減
 23.3 流体力学的雑音とその軽減
 23.4 砕波雑音とその軽減

第24章 潜水調査船と海洋ロボット
 24.1 海中探査艇と音響技術
 24.2 潜水調査船
 24.3 海中ロボット

付表 海洋音響で用いられる諸量の単位



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カテゴリー:気象・海洋 
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