局地風のいろいろ【3訂版】 気象ブックス004


978-4-425-55044-9
著者名:荒川正一 著
ISBN:978-4-425-55044-9
発行年月日:2011/3/17
サイズ/頁数:四六判 168頁
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価格¥1,980円(税込)
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局地風とはその地域特有の風で、山一つ越えればまた違う風が吹いている。現在、その複雑な仕組みの解明が進み、クリーンエネルギーとして見直されつつある。世界各地の局地風と最新の研究成果を、風を追いかけて50年の風博士がわかりやすく解説。さて、あなたの住む町にはどんな風が吹いているだろうか。

【3訂版への序】
 本書の初版発行から10年を経た。その間多くの読者からご支持を受けたおかげで、このたび3訂版を出す運びとなった。これまでも改版ごとに訂正・追加などを行ってきたのであるが、この度はやや多くの場所に筆を入れた。
 主な改正点は、
※ご存知のとおり、フェーンの源はアルプスに吹く南風である。アルプスのフェーンについては、2000年の前後10年ほどの間に比較的多くの研究が報告された。最近のヨーロッパにおける研究成果に基づいて、“フェーン小論”を2章に追加した。代わりに、“風力発電からみた地形と風”を1章の付録へ移した。
※“東北・うう北陸地方のだし風”を追加した(1章5節)。この地方のだし風はそれぞれがローカルだが同時に起こることを述べた。
※“寿都のだし風”(1章3節)および“東京のヒートアイランド”(3章7節)を書き換えた。そして内容のスリム化、新知見の導入を図った。
※“日本海の帯状雲と観測船啓風丸”において(5章3節)、啓風丸観測の鉛直断面図を別の視点から書き直した。その結果、これまで横筋型対流雲と解していたものが、縦筋型と解されることをしてきした。これについては読者諸氏のご意見を賜りたい。
 山を超える気流や岬を回る風の問題は、河底に凹凸があるときの流れや、岸辺がカーブしている河の流れと類似で扱うことができる。
 また、こうした川の流れと圧縮性流体の流れとの類似性も早くから言われている。例えば、クーラン・フリードリッヒはその著書「超音速流とショック波、1984」において、両者の類似性を論じている。川の流れにおける流速対重力波速の比(フルード数)は、圧縮性流体における流速対音速の比(マッハ数)に対応させることができる。
 安定成層を持つ大気へのこの概念を持ち込んだのが、Tepper(1950)である。彼は低層に逆転層を持つ大気を、逆転層で境された二層モデルで表し、水の流れとの類似性をうまく利用した。本書の1章4節、2章3節の議論は、上の概念に基づいている。
 この20年間、欧米を中心に局地風の研究が数多く行われた。私がこの間に読んだ論文は1000ページに及んだ。またこの間に、新潟、彦根の気象台、および東北大学、筑波大学等に招かれた講演・討論したり、局地風の現場を訪問したりの機会に恵まれた。これらの研究や体験をまとめ、本書の続編をお届けしたいと思っている。それを夢見ながら、3訂版の序文とする。

2011年 春
著者

【目次】
序章 局地風とは

第一章 風に名前がある(日本)?おろし風と地峡風
 一 日高しも風
 二 羅臼のだし風
 三 寿都のだし風
 四 水理学とのアナロジー
 五 立川町の風車村
 六 フェーロンニ例

第二章 国によって違う風の名前(世界)
 一 ボラ(クロアチア、スロベニア)
 二 アドリア海でボラに遇う
 三 ミストラル(フランス)
 四 ロッキーのチヌーク(アメリカ)
 五 テワンテペサー(メキシコ)
 六 カスケード山脈の地峡風(アメリカ)
 七 風力発電と局地風

第三章 環境を汚染する風?海陸風と山谷風
 一 海陸風と大気汚染
 二 海陸風の数値モデル
 三 海陸風のホドグラフ
 四 南関東の夜間下層ジェット
 五 海風・谷風と熱雷
 六 丹沢のブナの立ち枯れ
 七 ヒートアイランド

第四章 富士山の雲も風が作る
 一 富士山の雲
 二 山旗雲の観測
 三 吊し雲の観測
 四 ランドサットが捉えた吊し雲
 五 真珠母雲

第五章 冬の季節風が作る雲
 一 日本列島地峡からの吹き出し
 二 済州島のカルマン渦列と一発大波
 三 日本海の帯状雲と観測船啓風丸

(気象図書)


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カテゴリー:気象ブックス タグ:地球環境 気象 気象ブックス 
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