ヤマセと冷害−東北稲作のあゆみ− 気象ブックス010


978-4-425-55091-3
著者名:卜藏建治 著
ISBN:978-4-425-55091-3
発行年月日:2001/7/28
サイズ/頁数:四六判 164頁
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ヤマセ地帯で安定した「米作り」は可能なのだろうか?冷害の歴史や対策を検証し、ヤマセを活用した冷害のない農業の可能性を探る。

【はじめに】より
 江戸時代は寒冷な気候期(小氷期)といわれ、地球全体が今日より二?三℃低温で、冷夏の規模も大きく冷害が頻発し、年間で数十万人の餓死者があった。その後の近代的な国家体制のもとでは、大和神話に基づく国粋主義が隆盛を極め「米作り」が日本人の天分とされた。気候条件による適地適作を論ずるよりも土地があれば先ず「米作り」が精神論として求められ、冷害の危険地帯である北日本へ稲作は拡大の一途を辿る。戦後の食糧不足の時代にも食糧増産=米の増産とする戦前の思想が引き継がれ昭和四〇年代まで続いた。
 一方、気象観測は近代国家の事業として始まり、冷害をもたらす冷夏の発生機構やその特質に関する研究にも取り組んできた。今日では、東北地方に冷害をもたらすヤマセの襲来は気象衛星の画像としてとらえられるだけでなく、低温域の時間的な広がりはコンピュータによるシミュレーションで予知することが可能になった。しかし、ヤマセは北半球規模の大気大循環の一環として生じるものであり、予知予測の精度を高める研究には残された部分も多い。
 昭和五〇年代に入り北日本では冷害が頻発したが、日本のように科学技術の進んだ国で、「同じ災害が同じ地域に繰り返し発生する」のは、現在の被害軽減技術や冷害のたびに提案される防災対策が、被災農家の実態に適合しないものになっているのでは?といった疑問が生じる。また、農村社会の変化が急激で防災技術を受け入れるのに無理があるのではないかなどについても、充分な議論が必要となろう。
 今日の外食産業の繁栄は、米以外の食べ物でカロリーを摂取することに何の抵抗も感じない人たちが各自に増加し、米が主食という時代の終焉を示している。冷害が頻発し稲作経営の不安定なヤマセ地帯の広大な農地に、多収で安定して栽培できる作物を検索し、この土地を「日本の食糧供給基地」として確立するべく、減版政策の続く今こそ時間をかけて十分に検討することが望まれる。

卜藏建治

【目次】
第1章 冷害をもたらすヤマセ
 冷害とは
 ヤマセという言葉

第2章 寒さの夏はオロオロ歩き
 宮沢賢治と冷害
 イーハトーブと賢治
 宮沢賢治の生涯とイーハトーブの冷害
 なぜ、水田に石油を撒く?
 イーハトーブ荒廃の背景
 窒素肥料の天然供給と人口降雨
 冷害の予知
 火山を爆発させ冷害から救えるか

第3章 冷害の歴史
 江戸時代以前の冷害と飢饉
 江戸(藩政)時代の冷害
 幕末期から明治初頭の稲作
 江戸時代の冷害対策
 近代の冷害
 現代の冷害

第4章 冷夏(ヤマセ)と冷害
 サムサノナツ
 冷害は海から
 ヤマセの背は低い
 ヤマセのダシ雲
 ヤマセの見張り番=気象衛星「ひまわり」
 冷夏と冷害の型
 冷害の地域差

第5章 冷害対策
 冷夏の予報
 冷害発生地域の予測
 栽培計画
 耐冷性品種
 育苗技術の進展
 深水管理
 施肥管理
 共済制度
 恒久的環境改良対策

(気象図書)


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カテゴリー:気象ブックス タグ:気象 気象ブックス 異常気象 
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