海事・交通・水産・気象図書出版の成山堂書店

EPA・DHA、ビタミン、ミネラル…魚がもつ栄養とその機能をやさしく解説。魚で作る離乳食、おやつ、治療食等の簡単レシピも紹介。

【はじめに】より
スーパーの魚売り場では、『魚を食べると頭がよくなる』の歌が流れています。また、多くの主婦は『魚は健康によいので料理するようにしている』といっております。その根拠になるのは、魚の油にあるEPA（エイコサペンタエン酸、IPAとも言います〕とDHA（ドコサヘキサエン酸〕という成分です。今ではだれもがEPAやDHAの名前を知っているようになりました。健康補助食品として常用している方もおります。しかし、毎日バランスの悪い食事をしていて、EPAはやDHAの健康補助食品をせっせと食べても、少しも健康によいということにはなりません。
魚介類、これは魚の他、エビ、カニ、イカ、タコ、貝なども含めて“介”で表現します。“介”は水産無脊椎動物のことです。この本では魚類と水産無脊椎動物を合わせて『おさかな』または『魚』と呼ぶことにしました。
EPAやDHAについて、やさしく解説した本や学術的な論文はたくさんあります。しかし、魚は肉、大豆、牛乳、ごはんなどと比べて、どんな栄養成分の特徴があるのでしょうか。魚は健康によいといっても、魚だけ食べていていいのでしょうか。こんな疑問に答えられるような、トータルに魚の栄養成分についてやさしく解説した本は意外とないのです。そこで、食物としてのおさかな栄養学の本を書くことにしました。栄養学などというと大変難しそうに感じますが、なるべくビジュアルに理解できるように、イラストをたくさん入れてわかりやすくしたつもりです。
また、実際に魚の食べ方のヒントになるようなお魚料理ものせました。従来の魚料理の本は、まず、魚のさばき方から入ることが多いのです。魚臭いのが苦手であったり魚から内蔵が出てくると気絶しそうになる人にとって、魚さばきは、魚を食べようとする望みの挫折の第一歩になってしまいます。そこで、この本にあげた料理はすべて手抜きで、魚は切り身しか使いません。
魚をたくさん食べる年代は高齢者に多く、若い人達はどちらかというと、魚より肉の方を好みます。若いお母さん方は、小さい子どもにお魚料理をあまり食べさせないような気がします。幼少のとき、何を食べたかによって、将来の食の好みが決まるといいますので、離乳食や幼児食、子どものおやつも、魚で作ることを試みてみました。また、家庭で糖尿病や高血圧症の治療食を、魚を使って作ってみてはどうでしょう。紹介した料理の数は少ないですが、なんらかのヒントになれればと思います。
ところで、切り身ばかり使っていると、魚全体の顔、形がわかりません。少しでも魚になじみを持てるように、最後によく家庭で食べる魚のプロフィールをのせました。
この本が一般生活者はもちろん、食関係を専攻している大学・短大生、調理師の専門学校生、さらに保育園、幼稚園、小学校、病院の栄養士さんに少しでもお役にたてば、私たち筆者の望外の幸せです。

平成16年11月
鈴木たね子、大野智子

【目次】
1.食生活のなかの「おさかな」
　日本人の魚食の変還
　将来の魚食はどうなる

2.栄養学の基礎の基礎
　生物はなぜ食べなければならないか
　ヒトの体は水と食べ物でできている
　栄養素とは何？
　体の中での食べ物の行方
　　・たんぱく質の行方・炭水化物の行方
　　・脂肪の行方

3.魚が持っている栄養パワー
　消化がよくて良質なたんぱく質
　ラードやサラダオイルとは違う魚の油
　こんな魚にこんなビタミン
　　・細長い魚にビタミンA・骨を丈夫にするビタミンD
　　・貧血予防になるビタミンB12
　　・その他のビタミン
　生命を支える必須ミネラル
　鉄・銅・亜鉛・ヨウ素・セレン

4.魚の加工食品も栄養がある？
　練り製品
　干物
　缶詰
　魚加工食品のたんぱく質の栄養価
　魚加工食品の食塩量
　魚加工食品のEPAとDHA量

5.魚食が生活主管病を防ぐ
　高血圧症の予防に
　心筋梗塞，脳梗塞の予防に
　痴呆の予防に
　学習能力を高め情緒の安定に

6.フィッシュ オン ザ テーブル
　魚料理の基礎の基礎
　　・鮮度の見分け方・下ごしらえのポイント
　　・調理のポイント・10分でできるワーキングマザーの料理
　魚で作るおやつ
　魚で作る離乳食
　魚で作る幼児食
　貝類を使った治療食
　　・糖尿病（低カロリー食）・高血圧症

7.よく食べるお魚のプロフィール
　カツオ
　マグロ
　サケ
　イワシ
　サバ
　アジ
　ブリ
　タイ
　タラ
　イカ
　エビ
　アサリ
　カキ
　ホタテ
　テガイ