養殖マグロビジネスの経済分析−フードシステム論によるアプローチ−


978-4-425-88401-8
著者名:小野征一郎 編著
ISBN:978-4-425-88401-8
発行年月日:2008/3/18
サイズ/頁数:A5判 260頁
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価格¥3,960円(税込)
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近年急速に市場を拡大した養殖マグロの生産から流通、消費までを解説。養殖ビジネスの実態を分析する。マグロ関係者必携の一冊。

【はしがき】より
本書は、21世紀COEプログラムに採択された「クロマグロ等の魚類養殖産業支援型研究拠点」の流通・経済部門の成果である。研究の出発点が「クロマグロの完全養殖」にあることは言うまでもないが、流通・経済部門が研究に取りかかった2003年度においては、私を含め研究スタッフの全員が、養殖マグロの日本の主産地が奄美大島であることくらいしか知らなかったと思う。もっともこの事態は今もあまり変わっていないのではなかろうか。スタートから4年をこえた現在においても、マグロ養殖業に関わる正式統計はなお皆無である。生産統計・卸売市場統計すら存在しない。幸い昨年から水産庁が検討会を組織し、まもなく大幅に事態が改善されることが期待されようが・・・。
情報が闇に包まれたブラックボックスに閉ざされていたマグロ養殖業の産業的基盤を究明し、その全容を明るみに出すことが本書の主要な目的の一つであるが、それはほぼ果たしえたと考えている。
フードシステム論の視覚から、川上の国内マグロ養殖業を起点に、川中は輸入から国内販売=卸売までを取扱い、川上は量販店と寿司産業を小売・外食部門の代表として検討した。さらに消費者の購買行動を定量的に解析し、日本を含む主要養殖国の国際比較を試みた。最後に養殖経営としての課題を述べ、苦境にあるブリ類・マダイをよそにマグロ養殖業が高収益をあげていることを分析する。今後の需給動向を予測し、マグロ養殖業が有望業種としてブリ類、マダイに次ぐ地位を獲得し、魚類養殖業において確固がる地位を築いていることを展望している。
思えば養殖クロマグロが、土・日・祝日を中心に量販店で販売され、時々であるにしろ国民一般の食卓にのぼり、あるいは回転寿司店で食べられるようになり、社会的ニーズが一般化したのはここ数年間のことではなかろうか。マグロの国際的規制が国際世論のテーマとなったことは記憶に新しい。テレビでよく放映される、国内で漁獲される天然マグロは高級料理店・高級寿司店に向かい、我々の口に入ることはまずない。フロントランナーである天然マグロと比べても、養殖マグロは市場性において遜色がない。マグロ養殖業には新規参入が相次ぎ、規模こそ小さいが経済性が高い。魚類養殖業の将来像にマグロ養殖業は新しい局面を切り開く可能性を秘めている。近畿大学がリードする人工種苗が一般化すれば様相が一変するかもしれない。
養殖マグロ自体が未知の領域であったし、その他にも初めて直面する問題に出くわすことが多かった。川上から川下にいたるマグロ養殖ビジネスの関係者の方々には、実態調査・ヒアリング・資料提供等々において大変ご面倒をかけ、またお世話になった。いちいちお名前をあげることは不可能であるが、流通・経済部門のチームリーダーとして改めて心から感謝申し上げる。本書がマグロ養殖業、さらには魚類養殖業にいささかなりとも貢献できるところがあればと願っている。またプロジェクト・リーダーである熊井英水教授をはじめとする、21世紀COE研究スタッフに対しても、異分野である我々に賜った暖かいご配慮に感謝したい。とりわけ近畿大学の各事業所において、養殖現場の方々から貴重な経験をうかがったことは大変参考になった。
実質4年半というプロジェクトの期間は、過ぎ去ってみれば短かったという気もするが、流通・経済部門のスタッフとしてまた執筆者としてご尽力頂いた、日高健准教授をはじめ、COE博士研究員各位に、わけても最も長期間にわたり私と労をともにし、本書刊行に伴う雑事もひき受けてくれた山本尚俊・中原尚知両氏に、深謝したい。最後にいつものことながら、株式会社成山堂書店編集部には多くのご面倒をかけ、感謝している。

2008年3月
近畿大学農学部教授 小野征一郎

【目次】
第1章 国内養殖生産の特質と参入条件
 1-1 はじめに
 1-2 マグロ養殖生産の展開と生産主体
 1-3 マグロ養殖生産の実態
 1-4 マグロ養殖生産の経済性
 1-5 おわりに

第2章 大手水産会社の生産・販売活動と事業再編
 2-1 はじめに
 2-2 国内企業の取り組みと事例の概要
 2-3 養殖マグロ集荷と国内生産
 2-4 養殖マグロの取引実態と販売体制の再編
 2-5 おわりに

第3章 輸入ビジネスと国内取引
 3-1 はじめに
 3-2 養殖物の流通増加と大衆トロ市場の拡大
 3-3 輸入・国内販売ビジネス
 3-4 輸入業者・養殖業者間の取引
 3-5 国内卸売と流通機構
 3-6 おわりに

第4章 量販店のマーチャンダイジング
 4-1 はじめに
 4-2 赤身マグロを巡る価格訴求の深化と養殖トロの商品化
 4-3 マグロ類の販売実態
 4-4 養殖マグロの製品設計と仕入政策
 4-5 おわりに

第5章 回転寿司
 5-1 はじめに
 5-2 回転寿司の動向
 5-3 大手回転寿司店の動向
 5-4 回転寿司店におけるマグロの使用実態
 5-5 養殖マグロの商品化への取り組み
 5-6 おわりに

第6章 立ち寿司
 6-1 はじめに
 6-2 立ち寿司店の動向
 6-3 立ち寿司店のマグロ取扱いの実態
 6-4 おわりに

第7章 消費者の購買行動
 7-1 はじめに
 7-2 マグロ商品の購買行動に関するアンケート調査
 7-3 一般消費者のマグロ商品に対する認知
 7-4 マグロ商品の属性と消費者ニーズ
 7-5 マグロ商品のリスク認知
 7-6 おわりに

第8章 主要生産国におけるマグロ養殖業のビジネスシステム
 8-1 はじめに
 8-2 主要生産国における生産物の比較
 8-3 主要生産国の養殖生産状況とビジネスシステム
 8-4 漁業資源管理制度とビジネスシステムの比較
 8-5 おわりに

終章 今後の展望
 1. はじめに
 2. マグロ養殖業の再編
 3. クロマグロの国際的管理
 4. マグロ養殖業の地位
 5. おわりに−マグロ養殖業の課題と展望−


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カテゴリー:水産 
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