著者名: | 福岡義隆 著 |
ISBN: | 978-4-425-55221-4 |
発行年月日: | 2008/10/8 |
サイズ/頁数: | 四六判 192頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,980円(税込) |
春に花粉症、夏に熱射病と年間を通して様々な疾患が生活に関係しています。そうはいっても気象と健康医学に関する知識は意外と知られていません。テレビの天気予報で健康を守る対策法を紹介していますが、限られた時間で細かな部分までは伝えられていません。
本書は、そのような健康医学と気象とのかかわりを研究する生気象学について、その第一人者の著者が最新の研究をもって細かく解説したものです。四季を通じた健康歳時記では、季節を代表する疾患が発病する条件や予防法などを記しています。他にも健康と衣食住との関係を歴史を辿りながら述べたり、先人の天候に関する知恵や最近ドイツで広まっている医学気象予報など様々な情報を記載しています。
また、口絵の「健康マップ」では、同じ疾患でも地域によって天候感度の違いがあることをビジュアル的に理解できるようになっています。 同じ気象でも年齢によって体への影響は大きく違う。幼児から高齢者まで幅広い年齢層の健康を守る具体策も示されていて、生活に役立つ一冊です。
【はじめに】より
2005年秋、スマトラの津波災害で助かった人の記事が新聞で紹介されていた。『異常な引き潮を見たら山へ逃げろ』(漁民モガンの教え)という言い伝えを守って助かったのである。2007年4月の南太平洋のソロモン諸島付近で起きた大地震の際にも、海岸地域で被害を免れたのは高床式という伝統的住宅であったという。共通していることは現代の科学技術に頼らず、先人の知恵で生きている人々が自然災害から逃れているということである。
気候風土や異常気象が役立っているものが少ない。「病は気から」と言うことわざの気は天気の気といっても過言ではない。言い換えれば「天候は万病の元にもなり予防薬にもなる」ということである。
健康医学と気象との関連については日本生気象学会という学会が中心になって取り組んでいる。昔から脳溢血とか喘息、リウマチ、花粉症、熱中症などの気象条件が引き金となって発生していると思われる病気に関する研究調査も少なくない。しかしながら、それらの病気がいかなる気象状態下で発生するかを正確に予想することは難しく、一部の病気を除いては未だ多くの課題をかかえている。それらの中の一部が近代気象学と健康医療知識とから実証され、健康気象予報、医学気象予報(ビオベッター・独)として徐々に実用化に向かっている。予測式の中には、その原理をひもとくと意外にも諺のような伝承など先人の知恵から授かったものであることも少なくない。
気象現象が直接の原因でないとしても、間接的に引き金作用になりうることは各章で述べているが、転ばぬ先の知恵として天気の変化に気をつけておくことが肝要である。はっきりとした名前のある病気に罹ったら近代的な西洋医学の技術や薬に頼らざるをえないが、その病気に罹る前の軽い症状や前兆現象の段階で、東洋医学・伝統医学的に考えて気象の「気」が気持ちの「気」を左右して病気を招くであろう可能性をみてみよう。
本書をまとめるに際して、バイオクリマ研究会(会長 稲葉裕 順天堂大学名誉教授)の各位による研究成果やインターネットエッセイを、随所で引用させて頂いた。ここに記して謝意を申し上げる。
なお、文中のところどころに川柳を織り交ぜたが、作句者の大半は義龍(著者の雅号)であり、他は柳友らによる句である。
【目次】
第1章 先人の知恵から学ぶ健康気象
1.1 先人の知恵
1.2 健康天気のことわざ
1.3 先住民の知恵と健康医療
第2章 健康歳時記
2.1 春の天気と健康・病気
春一番の音の寒さ
花粉症
リウマチ
五月病(鬱とストレスは気象病)
2.2 夏の天気と健康・病気
夏の天気の特徴
コラム:梅雨将軍信長と食あたり
熱中症の気象予報の可能性について
脱水症の取り扱い
オゾン層と紫外線予報
2.3 秋の天気と健康・病気
秋の天気の特徴
秋の病気と気象
2.4 冬の天気と健康・病気
冬の天気の特徴
冬の病気と気象
第3章 健康づくりに「天気」をうまく衣食住する
3.1 健康のために「天気」をうまく着る
衣服と気候
気候風土に合った民族服
熱帯の衣服と健康
乾燥気候と衣服と健康
温帯気候と衣服と健康
温暖化時代の「衣替え」について
寒帯気候と衣服と健康
はきものという衣服文化と気候
日本人の気候に適応した伝統衣服
3.2 健康のために「天気」をうまく食べる
食文化は気候風土の反映
季節の推移と食習慣
正月料理と風土
節分の豆の風土
春の山菜と健康
季節季節の健康管理であった端午の節句と食餌療法
梅干と日の丸弁当
神様の贈り物とされるソバとコメ
3.3 健康づくりのために「天気」をうまく住まう
建物にも健康色がある
寒がりの属性
冬期における高齢者のための住まい方
冷房と睡眠
第4章 気象病の地域特性
4.1 地域による天候感度の違い
4.2 健康に気をつけた方がよい気候地域
4.3 気象条件から見て健康によい府県の例
第5章 気候風土を知って健康に旅をする
第6章 医学気象予報の実用化と課題
高齢化とスポーツ医学のための気象予報
幼児やペットは気温30℃以下でも熱中症危険
健康気象予報あるいは医学気象予報実践の現状と課題
(気象図書)
カテゴリー: