南極・北極の気象と気候 気象ブックス027


978-4-425-55261-0
著者名:山内 恭 著
ISBN:978-4-425-55261-0
発行年月日:2009/2/28
サイズ/頁数:四六判 234頁
在庫状況:在庫有り
価格¥1,980円(税込)
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海氷域の急減など激しい温暖化の脅威にさらされている北極、オゾンホールの発達する南極、地球温暖化の結果、北極・南極の氷が融けて海面水位が上昇するのではないかと心配されている。地球規模の気候変化の中で、極域がどのように振る舞うのかは、たいへん注目されるところである。地球規模変化が極域には増幅して現れるといわれているとともに、極域は地球規模の気候をかたちづくる要因をもっている。また、極域には過去の地球環境が記録されている。
 一方、極域にはさまざまな特異な気象現象があり、気候を特徴づけている。地球の極であるが故の力学的問題、放射場の影響、カタバ風、ダイアモンドダストに成層圏突然昇温などなど。そして、極域科学は単なる探検でないだけでなく、局地科学だけでもなく、グローバルなサイエンスである。今、国際極年(IPY)20072008といって、極域に関する国際的な共同研究が精力的に行われているさなかである。ここまでにいたる先人の努力を知り、南極北極の気象と気候の楽しさを少しでも味わっていただければ幸いである。

【はじめに】より
 海氷域の急減など激しい温暖化の脅威にさらされている北極、オゾンホールの発達する南極、地球温暖化の結果、北極・南極の氷が融けて海面水位が上昇するのではないかとの心配もある。地球規模の環境変化の中で、これら極域の振る舞いは大変注目されるところである。地球規模変化が極域には増幅して現れると言われていると共に、極域は地球規模の気候を形成する要因になる仕組みをもっている。また、極域には過去の地球環境が記録されている。一方、極地にはさまざまな特異な気象現象があり、気候を特徴づけている。地球の極であるが故の力学的問題、放射場の影響、カタバ風、ダイヤモンドダストに成層圏突然昇温などなど。そして、極域科学は単なる探検でないだけでなく、局地科学だけでもなく、グローバルなサイエンスである。
 今、国際極年(IPY)2007?2008といって、極域に関する国際的な共同研究が精力的に行われている。この中で、本書を出版できること、記念すべき好機として大変うれしい。思えば、さかのぼること50年、国際地球観測年(IGY)という一大事業のさなかに我が国の南極観測は開始され、また今からさかのぼること125年の第1回の国際極年(1882年・83年)に北極を中心とした国際的な観測が初めて大々的に企画実施された。南極北極はともに自国の領土内のことではないことが多いため、畢竟国際的関わりの大きい事項となる。この学問の持つ本質的な特徴である。
 本書は、筆者がこれまでの30年にわたる研究生活の中で勉強し、理解してきた南極北極における気象と気候についての姿である。従って、必ずしも網羅的な、また体系的な教科書ではない。興味あるトピックスを並べたものである。必要以上に踏み込んで記述した事項もあるし、抜けているとお叱りを受ける項目もあろう。さらに、「南極北極の」といっても、バランスのとれたものにはなっていない。北極の気象は、それだけを抽出して述べることもないほど、北半球の気象の一部としてすでに多くが語られている。筆者が関わってきた南極、北極の比重に従っているのはやむを得ないこととして了解いただきたい。
 本書では、第1章で、極地探検の時代から極域観測の時代への先人の苦労、研究・観測の系譜、そして国際的な取り組みをたどった。第2章で、南極北極の気象や気候を語る上での基本となる背景について記した。そして第3章以降、具体的な気象と気候に関わる話題を並べた。最後に第11章で、近年話題の温暖化について、極域で起っているさまざまな現象に触れた。おもしろい事が次から次へと沸き上がって、あせってかえって筆がすすまない。もどかしい思いをすることがたびたびあった。南極北極の気象と気候の、この楽しさを少しでも分かっていただければ幸いである。

2009年1月
山内 恭

【目次】
第1章 南極・北極の気象観測の系譜?極地探検から極域科学研究へ
 南極探検の時代
 北極探検から氷上基地観測へ
 IGYから南極観測の時代
 グローバルの時代
 もう一つのどこの国でもないスバールバル

第2章 南極、北極とはどういうところか
 極
 南極大陸氷床
 北極海
 海氷
 白夜と極夜
 気温
 昭和基地の気象

第3章 放射収支
 地表面の放射
 氷床上の熱収支
 雪氷面の反射特性
 地球放射収支と温室効果

第4章 温室効果気体
 グローバルな環境を監視する?CO2モニタリング
 CO2の大気?海洋交換
 同位体や酸素濃度からみる炭素循環
 メタンと同位体
 その他の温室効果気体と回収気球実験

第5章 大気中の微小粒子?エアロゾル
 エアロゾルとはどういうものか
 大気混濁度
 航空機・気球観測からみた上空のエアロゾル
 海洋生物起源エアロゾル
 エアロゾルの放射効果

第6章 水と雲
 水蒸気の輸送と収支
 雲と降水
 雪結晶とダイヤモンドダスト
 衛星雲観測による雲分布
 雲量変化と放射量

第7章 風
 地上の風?カタバ風
 対流圏の風の場
 極低気圧(Polar Low)
 ブリザード
 成層圏の風?極渦
 大型大気レーダ

第8章 オゾンホール
 オゾンホールの発見
 成層圏オゾンの変化
 極成層圏雲とオゾンホールのできかた
 北極オゾンホール
 紫外線の増加
 オゾン破壊物質の規制とオゾンホールの将来

第9章 南極内陸ドームふじの気象
 ドームふじ基地の気象
 強い逆転層と最低気温、高層気象観測
 晴天降水
 気温の急上昇?ブロッキング
 ブロッキング時の気象異変

第10章 氷床コアと古気候
 氷床コア掘削
 氷床コア解析
 南北コア比較と地域特性

第11章 温暖化と極域
 北極温暖化
 南極温暖化
 気候モード

(気象図書)


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