国際物流のクレーム実務−NVOCCはいかに対処するか―


978-4-425-34081-1
著者名:佐藤達朗 著
ISBN:978-4-425-34081-1
発行年月日:2009/5/18
サイズ/頁数:A5判 368頁
在庫状況:品切れ
価格¥7,040円(税込)
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クレームへの対応力の差がNVOCCの良否を決める!よくある事柄から共同海損、特殊ケースまでを実務的に解説。関係条約・規則も収録。

【はじめに】より  2007年7月27日にコンテナ船“WAN HAI 307号”とバルクキャリアー“ALPHA ACTION”号の衝突事件が発生した。その後、“WAN HAN 307号”の船主が共同海損を宣言し、共同海損として処理することとなった。
 このような大きな共同海損事件は、年に何度となく発生するような種類の事件ではなく、2〜3年に一度発生するようなものである。したがって、日本国内で国際複合運送事業を営む、いわゆるNVOCC(Non Verssel Operating Common Carrier)事業者のクレーム対応部門担当者も、戸惑いながら、顧客対応に追われたものと思われる。
 また、どのように対応していくことにより、その作業に要する時間の効率化を図ることが可能か、思い悩んだ担当者もいるかもしれない。
 日本にNVOCC事業者が誕生したのは、およそ30余年前のことで、ヨーロッパ等でフレート・フォワーディング業務が古くから定着してきているのと異なり、歴史的には極めて浅い。
 このような背景もあって、日常的に発生する貨物の損傷等への対応についても、どのように荷主に向き合っていくか、また、具体的にどのように対応していくか、について指針となるような実務書は出版されていない。
 今般、マリタックス法律事務所松井孝之弁護士の紹介で(株)成山堂書店の小野哲史氏と接する機会があった。「出版する意義がある」との見解を頂戴し、本書「国際物流のクレーム実務」として取りまとめることになったものである。
 本書出版については、内外トランスライン株式会社代表取締役戸田徹氏の力強いご支援をいただいたことを記しておきたい。
 戸田社長は、日頃から
 ◯日本のNVOCC事業者の企業社会における社会的地位の向上に貢献したい
 ◯日本のNVOCC事業者が顧客に提供するサービスの質的向上に貢献したい
 ◯クレームへのしっかりとした対応も「顧客のNVOCC事業者に対する安心
  感・信頼感」を与えることにつながり、サービス品質向上の構成要素の
  ひとつである
との基本認識を持ち、同社の経営の陣頭指揮をとられている。
 今般の、クレーム対応実務に関する実務書の出版も、上記のような、戸田社長の経営者哲学を部分的に具現化するひとつの手段となることを期待している。
 戸田社長の考え方の深さ、懐の深さに敬意を表し、ここに深く感謝の意を表する次第である。
 また、本書をまとめるに当たり、小川総合法律事務所雨宮正啓弁護士と宮野義広マリンコンサルタントに監修していただき、法律家と実務経験者の視点から種々のアドバイス、ご指導をいただいた。
 この場を借りて、ご支援いただいた関係各位に対して改めて深く感謝する次第である。
 筆者自身は、海上保険を取り扱う損害保険業界からNVOCC業界に転身することとなり、2001年に縁あって内外トランスラインにお世話になることになった。
 現在はシステム部門を担当しているものの、同社入社以来、クレーム処理対応を担当、その統括を行っていくる中で、海上運送人、NVOCC事業者の立場に立ったクレーム対応のあり方につき、種々の経験を積み重ねる機会を得た。
 そのような、さまざまなクレーム処理体験が、本書執筆の大きな動機になっている。
 記憶に鮮明に残っているのは、“HANJIN PENNSYLVANIA”号がコロンボ沖合で2002年11月11日大火災事故に遭遇した共同海損事件、“NYK ARGUS”号が2004年10月20日スエズ運河通峡後、地中海で同じく火災事故に遭遇し共同海損事件として処理された事例等々である。そのような過去のクレーム処理経験も踏まえて執筆した。
 本書が、日本のNVOCC事業者にとり、また、その他国際海上物品運送に係る多数の関係事業者にとり、有益な実務書となることを期待したい。
 また、本書の出版により、戸田社長が、自らの経営哲学のひとつとして位置づけている「NVOCC事業の、業界全体としてのサービス品質の向上」に少しでも貢献できるようであれば望外の喜びである。
 なお、本書をまとめるに当たり、参考文献、参考資料として次のような文献、資料を参照した。

 1.船舶保険の査定実務(改訂版)
   保険毎日新聞社1994年4月10日発行。
 2.内外トランスライン株式会社のクレーム対応マニュアル
   同社が社員向けに2001年12月に取りまとめた社内マニュアル。なお、
   本書を取りまとめるに当たり、特に、第2部「共同海損事故発生時のク 
   レーム対応」の部分については、“WAN HAN307号”と“ALPHA ACTION”
   号の衝突事件が発生し、“WAN HAN307号”の共同海損宣言に伴う同社の
   対応処理を参考に、2001年版社内マニュアルの「共同海損」に係る部分を
   抜本的に手直しした。
 3.国際複合一貫輸送約款解説書
   社団法人日本インターナショナルフレイトフォワーダーズ協会1998年9月
   発行。
   この国際複合輸送約款解説書については、第4部クレーム対応に係る基礎知識
   に係るJIFFA MT B/L約款の中で、NVOCC事業者にとり重要な「運送人の責任」
   に係る条項を取り上げる際等に参照し、約款和訳は、当該解説書の和訳を取り
   入れた。
 4.CTC Richards Hogg Lindleyの共同海損手続関係書式
   “WAN HAN307号”共同海損事件で、CTC Richards Hogg Lindleyが荷主
   および荷主の海上保険引受会社に提出を求めた、Average Bond(FORM A)、
   Average Security(FORM B)、Salvage Security(Cargo ISUI)といった
   書式を資料として本書の中に取り入れた。
 5.日本経済新聞のウェブサイトNIKKEI BIZ+PLUSのコラムコーナー記事
   経営コンサルタントで、ジャーナリストの中島孝志氏が、第11回目の記事
   としてNIKKEI BIZ+PLUSのコラムコーナーに2006年11月1日付で投稿され
   ている記事を参考情報として使用させてもらった。記事のタイトルは、
   「問題解決の姿勢『マイナスこそ宝』−松下幸之助氏の数式〈その5〉」
   である。
 6.海上リスクマネジメント
   藤沢 順 他(成山堂書店)2003年9月発行

2009年4月
著者

【目次】
第1部 NVOCCのクレーム実務

第1章 NVOCCの業務
 1-1 NVOCCの定義
 1-2 NVOCCの歴史
 1-3 NVOCCの提供するサービスと国際運送の流れ
 1-3-1 国際運送の流れ
 1-3-2 トランシップ運送
 1-4 船会社業務とNVOCC業務の相違
 1-4-1 輸出LCLサービス
 1-4-2 輸出FCLサービス
 1-4-3 輸入LCLおよびFCL貨物の受け渡しサービス
 1-5 NVOCCの運送契約と法律および国際条約の関係

第2章 クレーム実務の流れ
 2-1 クレーム受理時点における初期対応
  2-1-1 損害に関する詳細情報の収集
  2-1-2 損害責任保険会社への連絡
 2-2 貨物保険による損害補填と保険代位請求
 2-3 荷主側からの損害賠償請求への対応
  2-3-1 一件書類が整っているか否か
  2-3-2 損害賠償請求一件書類の内容の精査
  2-3-3 船会社または下請CFS倉庫等履行補助者の過失責任
  2-3-4 NVOCCが責任を負う場合のクレーム処理
   1.示談交渉
   2.責任保険会社に対する保険金請求
   3.過失ある履行補助者に対する求償

第3章 クレーム処理についての各論
 3-1 輸出LCL貨物のクレーム処理手続
  3-1-1 クレームに関する情報
   1.クレーム情報を裏付ける書類(外航本船積み込みまで)
   2.クレーム情報を裏付ける書類(外航本船荷卸から受荷主への引き渡しまで)
   3.トランシップ事例のクレーム情報
   4.損害形態と収集すべき資料
  3-1-2 クレーム処理手続の手順
 3-2 輸出FCL貨物のクレーム処理手続
  3-2-1 輸出FCL貨物とLCL貨物の基本的な相違点
  3-2-2 クレーム処理手続の特徴
  3-2-3 クレーム処理手続の手順
 3-3 輸入貨物のクレーム処理手続
  3-3-1 海外現地法人発行HB/Lのクレーム処理手続
  3-3-2 海外NVOCC発行HB/Lの輸入クレーム処理手続
 3-4 クレームに関する参考書式
  3-4-1 Claim NoticeおよびClaim Reply
  3-4-2 クレーム求償に対する書式
  3-4-3 個別クレームのファイリング

第4章 クレーム対応の本質
 4-1 NVOCCの目標と荷主のNVOCCに対する期待
 4-2 事故原因究明の重要性
  4-2-1 原因特定作業と損害防止軽減策
  4-2-2 原因特定とクレーム経費削減効果の可能性

第5章 NVOCCの運送契約の法律的側面
 5-1 NVOCCのHB/Lと船会社のMB/Lの運送区間の相違
 5-2 荷主に対するNVOCCと船会社の損害賠償責任の相違
 5-3 NVOCCは契約運送区間について責任を負う

第2部 共同海損事故発生時のクレーム対応
第1章 共同海損とは何か
 1-1 海上交易の勃興から生まれた海の自然法−共同海損
 1-2 1990年改正1974年YAR(York−Antwerp Rules 1974 as amended 1990)
 1-3 共同海損の成立要件
   1.海上冒険を共にする複数財貨が存在すること
   2.危険が現実的であること
   3.共同の安全のためであること
   4.故意であること
   5.異常な犠牲あるいは費用であるとともに合理的なものであること
   6.共同海損行為者
   7.海上冒険が存在すること
   8.共同の安全を目的とするほか、共同の利益を目的とする
 1-4 主要な共同海損
  1.投荷
  2.船火事の消火
  3.任意座礁
  4.座礁船舶浮揚作業
  5.救助報酬
  6.避難港費用
  7.代換費用

第2章 情報の収集と開示
 2-1 共同海損とNVOCC
 2-2 共同海損の関係者
 2-3 NVOCCのなすべきことは何か
  2-3-1 事件に関わる情報の流れ
  2-3-2 荷主の関心事項
  2-3-3 NVOCCのなすべきこと
  2-3-4 NVOCCの情報収集源
  2-3-5 荷主に対する情報開示
  2-3-6 荷主に対する共同海損の情報開示例
  2-3-7 運送契約と情報開示の関係

第3章 共同海損事件におけるクレーム対応
 3-1 船会社の対応
 3-2 NVOCCの対応
 3-3 荷主の対応
 3-4 NVOCCが抱える課題
 3-5 特異事例
 3-6 共同海損の精算事例
 3-7 船主の過失と共同海損
 3-8 共同海損における責任の消滅
 3-9 共同海損における手続関係資料

第3部 特殊なクレームへの対応
第1章 HB/L紛失への対応
 1-1 HB/L紛失問題の発生態様
 1-2 HB/L紛失と公示催促・除権決定
 1-3 HB/L紛失に関わる荷主の要求とNVOCCのリスク軽減
 1-4 HB/L発行形態によるNVOCCのリスク軽減
  1-4-1 Straight HB/L
  1-4-2 Sea Waybill
 1-5 HB/L紛失とクレーム対応

第2章 Single L/Gに基づく引き渡しの問題点と対応
 2-1 受荷主がSingle L/Gで貨物の引き渡しを求める背景
 2-2 Single L/Gと引き換えに貨物を引き渡す場合のNVOCCの社内ルール
 2-3 賠償責任保険との関係

第3章 中間業者倒産への対応
 3-1 中間業者の倒産に関わるリスク

第4章 傭船者倒産への対応
 4-1 荷主、傭船者、NVOCC、荷主相互間の運送契約
 4-2 傭船者倒産のNVOCCに及ぼす影響
 4-3 傭船者倒産に関わるNVOCCの対応のあり方

第5章 貨物の長期滞留への対応

第6章 エージェント(代理店)との契約問題

第4部 クレーム対応に係る基礎知識−資料および解説
第1章 Hague-Visby Rulesおよび国際海上物品運送法
 1-1 Hague Rulesと国際海上物品運送法の関係
 1-2 Hague RulesとHague-Visby Rulesの関係
 1-3 Hague-Visby Rulesおよび国際海上物品運送法とJIFFA MT B/Lの関係
 1-4 Hague-Visby Rules(ヘーグ・ヴィスビー・ルール)および和訳
 1-5 国際海上物品運送法(平成4年改正法)

第2章 JIFFA MT B/L裏面約款
 2-1 JIFFA MT B/LにおけるNVOCCの損害賠償責任に関連する条項について
 2-2 JIFFA MT B/L裏面約款

第3章 1990年改正1974年
 YAR(York-Antwerp Rules 1974 as amended 1990)
 3-1 1990年改正1974年YARとは
 3-2 1990年改正1974年YARおよび和訳

第4章 荷為替信用状に関する統一規則
 4-1 荷為替信用状に関する統一規則とは
 4-2 荷為替信用状に関する統一規則

第5章 INCOTERMS 2000
 5-1 INCONTERMS2000とは
 5-2 INCONTERMS2000英文規則および和訳
 5-3 INCONTERMSに関するまとめ

(海事図書)



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