著者名: | スティーヴン・ショー 著/山内弘隆・田村明比古 監訳 |
ISBN: | 978-4-425-86181-1 |
発行年月日: | 2009/12/18 |
サイズ/頁数: | A5判 328頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥3,080円(税込) |
航空業界のことが知りたいならこの1冊!
「普通の」業界で広く採用されているマーケティング理論をベースとした経営戦略が、航空会社にもかなり適用可能となってきたこを実例を交えて説明し、依然として残る「特殊」な側面についても考察を加えながら、航空関係者として必要なマーケティングの知識を分かりやすく解説しています。
原著は1988年に初版が発行されてからすでに6版を重ね、世界中で学生や航空関係の実務家などに読まれている、航空マーケティングの教科書です。
【訳者まえがき】より
本書の原著である“Airline Marketing and Management”は、1988年に初版が発行されてからすでに6版を重ね、欧米をはじめ世界中で学生や航空関係の実務家などに読まれている航空マーケティングの教科書である。
かつての民間航空市場は、国家が競争を制限しつつ、自国企業の保護育成を図る「特殊な」市場であった。しかしながら、近年国内市場においても、国際市場においても、自由化、規制緩和が世界の航空政策のトレンドとなった。今や多くの国で、航空は他分野と同様、企業間競争が激しく行われる「普通の」市場となってきているのである。
市場環境の変化によって、航空会社の経営者に求められる能力、スキルも以前とは全く異なるものとならざるを得ない。
本書は、他の「普通の」業界で用いられているマーケティング理論をベーストした経営戦略が、航空業界にもかなりの程度適用可能になってきたことを実例も交えながら論じ、依然として「特殊な」側面についても考察を加えながら、航空関係者として必要なマーケティングの知識をわかりやすく解説している。
最近日本の航空業界に起こっていることは、我が国の市場もまた世界の動きと連動して、「普通の」市場になりつつあることを示すものといえよう。今後の航空会社の経営、航空政策のあり方を考える上で、欧米を中心とした各国の事例に基づいた本書の考え方は、我が国との状況の違いを割り引いてもなお、大いに参考になるものと信じる。できるだけ多くの関係者にご一読いただけることを願っている。
なお、原著者であるあるスティーヴン・ショー氏には、日本語版刊行を当初から支援していただき、日本語版のため特別に、原著第6版が書かれた2007年当時から状況の変化を踏まえた第12章を書き加えていただいた。ここに改めて感謝の意を表したい。
また巻末の航空用語解説については日本航空株式会社国際業務部マネージャーの森朗氏、マーケティング用語解説については一橋大学大学院商学研究科准教授の山下裕子氏から貴重なご助言をいただいた。お二人にもこの場をお借りしてお礼を申し述べたい。
2009年11月吉日
訳者一同
◆本書を推薦します◆<
●マーケティングコンサルタント 西川りゅうじん
この本が出版される頃には、日本は既に国内総生産(GDP)の額で「世界第2の経済大国」の地位を中国に譲っているに違いない。しかし、依然として日本企業は、世界のマーケットの様々な業界、業種において強い競争力を有している。ところが航空業界はどうであろうか?成長著しいアジアの国々や地域と近しい、地理的・歴史的・文化的優位性を活かせていない。
ビジネスは結果で測られる。弱さの理由を他に求めても仕方がない。つまるところ、この原因は、経営力、マーケティング力の弱さに他ならない。従来存在していたのは、著者が指摘する「marketing myopia」(近視眼的マーケティング)に過ぎなかった。今後、望むと望まざるとにかかわらず、日本も、世界の航空界が突入しつつある大航海時代ならぬ「大航空時代」における国際的競争の嵐に巻き込まれる。日本の航空業界に関わるあらゆる人達が、本書をフライトシュミレータとして訓練を重ね、乱気流に負けず、自らの翼で、無限に広がる世界の空で強く羽ばたく日が来ることを信じて疑わない。
●慶應義塾大学教授 中条 潮
棋聖と保護の時代を脱して自由化の進んだ世界の航空輸送市場の大部分では、航空会社は特殊な事業ではなくなった。航空会社は、自社の利益を自社の経営力で確保していかなkればならない時代になった。それは、いうまでもなく、経営戦略として「普通のマーケティング」が重視されることを意味する。規制と保護の時代の痕跡をひきずっている日本においても、国際競争にさらされている航空会社はすでにそのことを自覚している。
マーケティングの書籍は多数あるが、本書を通常のマーケティングの手法を航空輸送サービスにあてはめて解説した書であり、航空経営にたずさわる人たちは当然として、いまだ航空輸送が特殊だと思っている日本の一般読者(特に、いまだ政治力による「陳情マーケティング」が有効と思っている自治体の人々)にとっても、頭の切り替えのためのよい刺激になるだろう。
◆こんな方にオススメです!◆
航空会社(経営スタッフ)、空港関係者、旅行業者、航空・経営・観光・マーケティングを学ぶ学生
【目次】
第1章 基本的な事項
1.1 マーケティングとは何か?
1.1.1 定義
1.1.2 マーケティング・ミックス
1.1.3 マーケティング理論の航空経営への適用段階
第2章 航空輸送サービス市場
2.1 航空会社とはどのようなビジネスなのか?
2.2 誰が「顧客」か?
2.2.1 定義
2.2.2 「一見真実らしいニーズ」と「真実のニーズ」
2.2.3 企業の購買行動
2.2.4 ビジネス旅行市場における「顧客」
2.2.5 レジャー旅行市場における「顧客」
2.2.6 航空貨物市場における「顧客」
2.3 航空旅客市場の細分化
2.3.1 コンセプト
2.3.2 航空旅客市場における細分化変数
2.3.3 ビジネス旅行市場の顧客ニーズ
2.3.4 ビジネス旅行市場の人口統計学的特性と心理学的特性
2.3.5 レジャー需要セグメント
2.4 航空貨物市場の細分化
2.4.1 航空旅客市場と航空貨物市場の相違点
2.4.2 航空貨物市場における細分化変数
第3章 マーケティング環境
3.1 理論的基礎\PESTE分析
3.2 PESTE分析\”政治的要素
3.2.1 テロリズムの恐怖、政治的不安定
3.2.2 規制緩和とオープン・スカイ
3.2.3 規制緩和された環境下のマーケティング戦略
3.2.4 民営化
3.2.5 国家支援
3.2.6 空港のスロット配分
3.3 PESTE分析\”経済的要素
3.3.1 経済成長と景気循環
3.4 PESTE分析 ー 社会的要素
3.4.1 人口の高齢化
3.4.2 家族構成の変化
3.4.3 休暇における嗜好と流行の変化
3.4.4 不確実な規制緩和後の労働市場
3.4.5 女性ビジネス旅客
3.5 PESTE分析 ー 技術的要素
3.5.1 テレビ会議
3.5.2 インターネット
3.5.3 陸上交通の整備
3.6 PESTE分析 ー 環境的要素
3.6.1 気候変動と地球温暖
3.6.2 インフラの容量不足
3.6.3 「観光の飽和」
第4章 航空ビジネスとマーケティング戦略
4.1 ポーターの「5つの力」と航空業界への応用
4.1.1 既存企業間の競争関係
4.1.2 代替
4.1.3 新規参入
4.1.4 顧客の力
4.1.5 サプライヤーの力
4.1.6 「中抜き現象」
4.2 戦略別グループ
4.2.1 コスト・リーダー,差別化,集中化\”原則
4.2.2 航空業界のコスト・リーダー:背景
4.2.3 ビジネス・モデルの基本要素
4.2.4 コスト・リーダー・エアライン:最近の問題
4.2.5 コスト・リーダー・エアライン:将来
4.2.6 航空業界における「差別化」
4.2.7 航空会社のアライアンス
4.3 「差別化」航空会社\”将来
4.3.1 「レガシー・エアライン」のコンセプト
4.3.2 「レガシー・エアライン」\”戦略オプション
4.4 「集中化」戦略
4.4.1 航空業界における集中化のタイプ
4.4.2 「付加価値」集中化
4.4.3 「ロー・コスト」集中化
4.4.4 「中途半端」
4.5 航空ビジネスとマーケティング戦略\”共通の過ち
4.5.1 目的
4.5.2 多角化対専門化
4.5.3 拡大のペース
4.5.4 競争上の対抗措置
4.5.5 「自制」
4.5.6 過度の楽観主義/次善策の用意
第5章 航空のマーケティングにおける製品分析
5.1 「製品」とは何か?
5.2 製品分析の理論と航空業界への適用
5.2.1 製品ライフサイクル
5.2.2 航空業界の製品ライフサイクル
5.2.3 製品ポートフォリオの管理\”BCGマトリックス
5.2.4 リスクとチャンスのバランス\”アンゾフ・マトリックス
5.3 機材とスケジュールに関する製品の特徴
5.3.1 客室の座席形態とサービスのクラス
5.3.2 ネットワーク,運航頻度,出発到着時間
5.3.3 定時性
5.4 顧客サービスに関係した製品の特徴
5.4.1 販売地点サービス
5.4.2 予約とオーバーブッキング
5.4.3 空港サービス
5.4.4 機内サービス
5.5 製品の品質管理
5.6 航空貨物製品
5.6.1 航空貨物輸送力
第6章 価格戦略とレベニュー・マネジメント
6.1 航空会社の価格戦略に関する基礎的要素
6.1.1 価格設定\”マーケティング・ミックスの一部分として
6.1.2 規制緩和
6.1.3 運賃情報の告知
6.1.4 レベニュー・マネジメント・システム
6.2 「単一」運賃と「差別的」運賃
6.2.1 原 則
6.2.2 割引運賃の管理
6.2.3 運賃設定への対応と運賃設定の主導
6.3 航空貨物の運賃体系
第7章 製品の流通
7.1 流通チャネル戦略
7.1.1 流通チャネルの種類
7.1.2 超過利潤という概念
7.2 旅行代理店の流通システム
7.2.1 有利な点と不利な点
7.2.2 今日の流通チャネル
7.2.3 流通の未来
7.3 GDS
7.3.1 歴史と背景
7.3.2 現在の課題
7.4 航空貨物市場における流通チャネル
第8章 航空のマーケティングにおけるブランド管理
8.1 「ブランド」と「コモディティ」
8.1.1 「ブランド」とは何か?
8.1.2 なぜブランドなのか?
8.2 航空業界におけるブランド戦略
8.2.1 ブランド構築の基礎
8.2.2 ブランドのポジショニング
8.2.3 ブランド構築のプロセス
8.3 ブランド戦略
第9章 関係性マーケティング
9.1 関係性マーケティングの基礎
9.1.1 定義
9.1.2 支援者関係の構築
9.2 関係性マーケティングの構成要素
9.2.1 品質管理
9.2.2 顧客窓口
9.2.3 マーケティング・コミュニケーション
9.2.4 ロイヤルティ・スキーム
9.3 フリークエント・フライヤー・プログラム(FFP)
9.3.1 歴史と現状
9.3.2 FFP\”FFP会員の求めること
9.3.3 FFP\”航空会社の求めること
9.3.4 FFPの将来
第10章 航空会社の販売・広告・宣伝戦略
10.1 販売の分析
10.1.1 AIDAモデルとSPINサイクル
10.2 販売計画
10.2.1 プロモーション予算
10.2.2 コミュニケーション・ミックス
10.3 マーケティング・コミュニケーションのテクニック
10.3.1 スポンサー広告戦略
10.3.2 データベース・マーケティング
10.3.3 パブリシティ
10.3.4 営業担当チーム
10.4 航空会社の広告
10.4.1 広告の機能
10.4.2 広告に関する決定事項
10.4.3 航空会社の「良い」広告の特徴とは何か?
10.5 航空貨物市場における販売
10.5.1 航空貨物市場における営業業務
10.5.2 マーケティング・コミュニケーションの手法
第11章 航空のマーケティングの将来
第12章 最近の動き(日本語版のための最終章)
12.1 経済状況の変化
12.2 規制分野の変化
12.3 航空業界における統合再編
12.4 航空会社の価格戦略の変化
12.5 環境問題をめぐる議論
12.6 結論
航空用語解説
マーケティング用語解説
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