著者名: | 小路丸正夫 著 |
ISBN: | 978-4-425-36172-4 |
発行年月日: | 2012/2/19 |
サイズ/頁数: | A5判 180頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥2,860円(税込) |
貨物保険・貨物賠償クレームの実務は、貿易・海運・NVOCC・損保・PIの損害調査・海事法務の担当者、および商社・メーカーの保険担当者の重要な仕事のひとつです。しかしながら、法理論・実務とも精通しなければ対応が難しいとされ、実例をふまえたわかりやすい解説書が求められていました。
本書は、クレーム対応実務の肝を網羅的に整理し、単なるマニュアルではなく、実例から理論を構築して応用力が身につくよう解説しています。2009年に大きく改訂された協会貨物約款(ICC)と旧約款の違いと特徴も随所で触れるなど、最新事情にも対応しています。また、クレーム対応担当者として知っておくべき外航貨物保険・保険約款・船舶保険の基礎知識も取り入れています。
クレーム対応の実務書として役立つことはもちろん、アカデミズムに裏打ちされた内容は、研究者・学生にとっても大いに参考となる一冊です。
【まえがき】より
平成21年5月18日に雨宮正啓・宮野義広監修、佐藤達朗著「国際物流のクレーム実務−NVOCCはいかに対処するか−」という電撃的な本が出版された。昭和42年に安田火災海上保険株式会社の海損部第二課で輸出貨物クレームを担当したのが、貨物クレームとの出会いである。課長職で中部業務部のマリン業務・営業推進を担当した後、船舶損害調査の担当課に22年振りに戻った時、私はNVOCCおよび船会社の貨物賠償クレームを一手に担当する運命に巡り合うことができ、それ以来関連会社に出向してからも、日本船主責任相互保険組合に転籍してからも、貨物賠償クレームの仕事をする幸運に恵まれた。したがって、私としても貨物クレームについての本を是非とも出版したいという思いが急に強くなった。
「海運」2009年8月号に連載していた「海上保険の勉強のすすめ」が、たまたま株式会社成山堂書店の小川實会長の目に留まり、会長、板垣洋介氏、小野哲史氏と直に接して話をしていく中で纏まったのが本書である。改めて同社に深く感謝する次第である。内容は、「海事法研究会誌」で発表したクレーム演習に修正・大幅加筆したものに「海運」および「海事研究会誌」の記事を併せたものである。日本では保険法が平成20年に公布され、英国では1982年ICC(Institute Cargo Clauses)が2009年1月1日付けで改訂され、日本の保険業界も1963年ICCおよび1982年ICCに替えてこれを全面的に採用することになった。したがって、各社とも保険法対応、新々ICCの解釈・運用マニュアル作成、社内勉強会に注力していると思われる。
貨物海上保険・貨物賠償クレームは、貿易・海運・NVOCC・損保・PIに直接関係する重要なものであり、また海上保険・海事法と密接に関連するものである。したがって、本書の内容はこれら業界の人達の実務にとって役に立つものであり、また海上保険・海事法の勉強す志す若者にとっても、恰好の勉強の素材となるものであると確信する。本書出版は、社団法人日本海運集会所、海上保険・海事法学者、海事弁護士、サーベイヤー、得意先、先輩・同僚・後輩の温かいご支援・ご指導の賜物である。本書の出版が関係業界全体の発展と、大学・大学院における学生の研究・勉強に少しでも貢献できるようであれば、この上なく幸せである。
平成22年5月
小路丸 正夫
【目次】
1 貨物保険クレーム演習 例題1 梱包の不十分と荒天遭遇
例題2 コンテナの汗漏れ
例題3 パレットの水分過多とコンテナの汗漏れ
例題4 Steel Sheet Coilの錆損
例題5 在来船のCargo Sweet
例題6 コンテナ入り機械の錆損
例題7 梱包の不十分と固有の瑕疵
例題8 コンテナ内積付の不十分
例題9 物理的損傷の有無の判定方法
例題10 税関検査
例題11 化学品入りドラム缶の凹み
例題12 食品入り一斗缶の凹み
例題13 在来船の甲板積
例題14 オープントップコンテナの甲板積
例題15 中古機械の修理費
例題16 代替部品の税関
例題17 外装の水漏れ
例題18 ブランド品の損害
例題19 コンテナ内荷崩れ
例題20 厚生省のシール破損、キャップ破損
例題21 タンクコンテナのシール破損
例題22 新車事故
例題23 海難割増
例題24 オール調整
例題25 座礁による航海の放棄
例題26 船会社倒産による継搬費用
例題27 Rejection Clauseの問題
例題28 貨物の積戻し
例題30 被保険者の使用人の故意
例題31 輸送条項における保険の終了時点
例題32 コンテナの穴明き
例題33 本船積込前の事故
例題34 コンテナ床材の釘
例題35 積地CYでの洪水
例題36 地震による電力供給の停止
例題37 梱包の破損
例題38 地震と継搬費用
例題39 火山の爆発と継搬費用
例題40 ストライキと継搬費用
例題41 船会社倒産による競売
例題42 検疫損害
例題43 倉庫前での引渡後の火災
例題44 盗難不着(TPND)約款
例題45 コンテナ床材による臭損
例題46 コンテナの接着剤による臭損
例題47 コンテナの詰替
例題48 共同海損と救助
例題49 Short Delivery
例題50 航海の合法性
例題51 遅延による青果物の損害
2 貨物賠償クレーム演習
例題1 水漏れ
例題2 積付不良
例題3 コンテナ天井穴明き
例題4 ヤードの洪水
例題5 本船Flood
例題6 Cargo Sweat
例題8 コンテナの事故
例題9 コンテナのシール破損
例題10 コンテナ内貨物の移動
例題11 荒天遭遇によるコンテナ崩壊
例題12 荒天遭遇によるラッシング破損
例題13 荒天遭遇とエンジン・トラブル
例題14 Haet Damage
例題15 甲板積
例題16 本船火災
例題17 臭損
例題18 解答損害
例題19 錆損
例題20 延着
例題21 ユーザーでの余分の費用
例題22 免責金額と請求権代位
例題23 カナダでの鉄道脱線
例題24 米国での鉄道脱線
例題25 準拠法の問題
例題26 ヨーロッパ向けの運送の問題
例題27 US COGSA条項
例題28 貨物保険金支払の問題
例題29 危険品
例題30 Consigneeの破産
例題31 未収運賃の問題
例題32 引渡の問題
例題33 B/Lの偽造
例題34 B/l裏書の問題
例題35 貨物の所有権移転
例題36 B/Lの裏書偽造
例題37 船会社宛クレームの時効の問題
例題38 賠償額の限度
例題39 時効延長
例題40 運送遅延による航空輸送
例題41 NVOCC宛クレームの時効の問題
例題42 コンテナの詰替
例題43 両者からのクレーム提起
3 外航貨物保険の研究
はじめに
保険証券(保険料明細書)の表示上の問題
冷凍コンテナの技術的問題
冷凍コンテナに関する法的問題
Warranty for Refrigerated Cargoの問題
検査費用の問題
4 保険約款曼荼羅
保険事故
保険の目的
被保険利益
保険価額
損害填補
全損
分損
救助費と共同海損
損害防止費用と継搬費用
衝突損害賠償金
小損害免責
保険事故の偶然性と故意免責
固有の瑕疵または性質と潜在瑕疵
保険事故・担保危険事情と免責事故・免責危険事情
航海の遅延
船舶の不堪航
危険の変動
残存物代位(残存利益代位)
請求権代位
5 船舶保険と貨物保険の概要
やさいい船舶保険
やさしい貨物保険
(海事図書)
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