著者名: | 溝口正仁 監修/(社)日本鉄道車輌工業会 車両工業ビジネス研究会 編 |
ISBN: | 978-4-425-96171-9 |
発行年月日: | 2010/6/22 |
サイズ/頁数: | A5判 226頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥2,640円(税込) |
近年、各国で高速鉄道をはじめとした鉄道網整備プロジェクトが進められている。また、CO2排出の少ない交通機関として世界的に需要が高まり、鉄道関連の世界市況は活況を呈し、注目されている。
こうしたなかで、日本の鉄道工業の現状と今後のあり方について、需要構造、各国の市場や鉄道工業の現状、日本を代表する鉄道車両工業などについて、多数の写真・図・資料とともに解説する。 「技術は一流、売り込みは三流」とも表現される日本の鉄道が、熾烈な国際競争においていかに「鉄道ビジネス」に取り組むべきか、その実態をとらえ、展望と課題を考察する。
【まえがき】より
人間の経済的活動等による大気中のCO2の増加を抑制することにより、地球温暖化防止の動きは国連を中心として、世界各国政府を巻き込んだ大きな政治活動となっている。CO2増加の影響については、科学者の間でも異論はあるようであるが、政治的には世界各国政府が取組まなければならない大きなテーマとなっている。だが経済活動においてCO2の排出を抑制し、エネルギーや資源の無駄を少なくすることは、限りある資源の有効活用、コストの低減にもつながり、決して誤っている施策ではない。この結果、世界各国のあらゆる分野においてCO2削減のための施策が求められているといっても過言ではない状況である。交通分野においても自動車からのCO2の排出の少ない鉄道へのシフトが求められるようになってきている。世界各地で鉄道システム整備のニーズがあり、世界市場において、鉄道関係の需要が拡大しているのは間違いなく、鉄道プロジェクトに関する国際的な情報がマスコミにとりあげられる機会も多くなってきている。
しかしながら、日本の鉄道関連企業が国際市場にアクセスするためには、国内市場との比較において、鉄道システムの環境条件、乗客の運賃負担力、商習慣、言語等の外面的な違いだけでなく、具体的な商談、入札等において使用されているビジネスツール、即ち信頼性や安全性の解析評価手法、引用規格、認証制度等の違いは決して低くない障壁であり、乗り越えるには知識、経験を踏まえた人材を育成する等かなりの時間と投資が必要である。
(社)日本鉄道車輌工業会(以下、鉄車工)として、鉄道関連企業の関係者が日本の鉄道システムを海外に展開させる際の各種の障壁についての知識を得られるよう、海外のプロジェクトにおいて用いられているビジネスツールである信頼性や安全性の解析評価手法や認証の動向等について、研究会を組織して調査研究を行い、その成果を「鉄道車両工業」誌に連載してきたところである。これまでに、1.信頼性や安全性の解析評価手法としてIEC(62278)規格になっている、2.拡大する米国市場において採用されている米国規格、3.規格と認証についての世界の動向と日本の立場について研究してきたところであり、これらのビジネス等についての知識の普及の手助けとなったものと確信しているところである。
これらのビジネスツール等の一連の研究を進めていくなかで、鉄道プロジェクトを円滑に処理していくためには、ツールへの知識、理解だけでは不十分で、ビジネス形態とツールとは不即不離の関係にあり一体として機能しているものと思われ、ビジネス形態への理解なくして、ビジネスの実態を理解出来ないのではないかとの懸念が生じるようになってきた。このため、海外の鉄道ビジネス形態およびツールとの関連についても調査研究を行い、海外における鉄道ビジネスの実態を理解していただく一助となるよう本書をとりまとめたものであり、そのなかで日本の鉄道工業の展望と課題にも言及させていただいた。
日本の優れた鉄道システムがその特性を活かして海外に普及することにより、その国が経済発展を遂げることを心から願うものであり、関係者の皆様が、今後の鉄道ビジネスを海外に展開する際に、本書で得た知識が役立つことを祈念しているところである。なお、本書についてお気づきの点があれば監修者または鉄車工までご連絡いただければ幸いである。
(社)日本鉄道車輌工業会 車両工業ビジネス研究会
座長 溝口正仁
【目次】
第1章 環境時代に新たな脚光を浴びる鉄道と関連製造産業
1.1 世界的な鉄道への関心の高まり
1.2 鉄道輸送力の増強を必要とする経済的理由
1.3 鉄道工業
第2章 世界の鉄道関連の市場
2.1 鉄道関連市場の特徴
2.2 各分野の製造業のソフト化の傾向
2.3 鉄道関連市場の定義
2.4 世界の鉄道関連の市場規模
2.5 鉄道関連の市場規模の論議における留意点
2.6 鉄道関連の需要構造の多様化
第3章 鉄道工業:Railwai Supply Industries
3.1 鉄道工業の発展の経緯と現状
3.2 日本の鉄道工業を代表するて鉄道車両工業
3.3 海外の鉄道工業
第4章 世界各地で計画、実施中の鉄道プロジェクト
4.1 世界の鉄道プロジェクトの実施例
4.2 今後の鉄道プロジェクトの計画
第5章 鉄道ビジネスの実際に見る新たな傾向
5.1 世界市場における鉄道プロジェクトの盛況
5.2 鉄道プロジェクトの流れ
5.3 鉄道ビジネスの形態の変化
5.4 ビジネス形態を変化させた社会的背景
5.5 システムインテグレータ
第6章 鉄道ビジネスの変革の背景にある新たな
技術体制の流れ
6.1 鉄道へのRAMS導入と普及
6.2 規格および認証体制の整備と普及
第7章 日本の鉄道工業の抱える問題と進展の方向
7.1 鉄道工業の市場について
7.2 国際ビジネスで求められるもの
7.3 日本のビジネスと国際ビジネスとのギャップ
7.4 ビジネスギャップへの処方箋
7.5 まとめ
7.6 付記
参考資料
1 鉄道車両工業 関係企業一覧
2 UNIFE会員会社一覧
3 RAMSの要求事項の例−システム保証とRAMS−
4 モーダルシフトとインターモーダル
5 欧州鉄道工業の2025年を展望―そのシナリオ概要―
6 日本鉄道車輌工業会 正会員 会社一覧
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