著者名: | 吉野正敏 |
ISBN: | 978-4-425-55321-1 |
発行年月日: | 2010/10/21 |
サイズ/頁数: | 四六判 228頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥1,980円(税込) |
記録的な猛暑、厳しい寒波・頻発する集中豪雨。温暖化により異常気象は増えるのか?世界の異常気象を原因・被害・対策を含め完全網羅。
・異常気象を、人間とのかかわりの視点からまとめたもの。
・これまでに世界で起きた人間社会に関係のある異常気象を網羅。
・単なる報告にとどまらず、世界を舞台に活躍してきた著者ならではの独自の分析が加えてある。
・日本ではあまり知られていない地域(外国)の異常気象も紹介。
・これ一冊で異常気象のすべてが分かる内容。教科書・副読本としても使えるよう体系だてている。
【まえがき】より
2010年の夏、世界各地は猛暑に見舞われた。日本ばかりでなく、中国でも、ヨーロッパの諸国でも、5月ころから、その兆しがあり、6月には記録的な高温が東ヨーロッパの国ぐにを襲った。テレビ・ラジオ・新聞は異常な暑さの写真や記事を連日、報道した。その内容は数年前と比較すると、大学の教科書か、学会誌の展望欄の記事のように詳細で、科学的にも高度であった。これは日本のマス・メディアばかりでなく、私が目にしたいくつかの外国の全国紙の扱いもそうであった。それほど猛暑の程度は世界各地でひどかったといえよう。気象学的な猛暑の構造は世界の人びとに理解されていると考えてよかろう。
本書は猛暑や熱波(ヒートウェイブ)ばかりでなく、多種類の異常気象の実態とその影響についてまとめたものである。本書で取り上げたのは、異常な気候現象(比較的長い時代・年数の大気現象)、異常な季節現象(2?3か月から半年くらいの大気現象)、突発的な大気現象(数分から数時間くらいの大気現象)である。それぞれの実態には特徴があり、その影響には違いがある。もちろん、その対応・対策も異なってくる。
報道がとりあげる異常気象の状態も変わってきた。猛暑の例で述べると、2?3年前までは、猛暑の情報は異常高温の極値、すなわち、最高の観測地が主であった。それへの関心が高かった。確かに日最高気温が40℃か、45℃かは重要である。それがこの2?3年来、必ずしも第1位の記録値だけでなく、たとえば、日最高気温35℃以上の日が幾日連続しているとか、38℃以上の日が幾日とかという報道・記事が多くなってきた。これは熱波の気象専門家の定義にあるように35℃、38℃の連続日数が重要で、報道・記事がより専門的に詳しくなってきたということであろう。
また、地域的な広がりも情報の対象になってきた。たとえば、“日最高気温35℃以上の地点数は日本の中で何地点である”と報道される。地域的広がりも、専門的な定義にはもともとはいっているのだから、一般人への情報が詳しくなったわけである。
異常気象はしばしばトピック的にとりあげられる。それは、発生する間隔が長い場合が多く、発生するとその値は桁はずれに大きく、影響は深刻になるからだろう。これは、統計学が指摘する極値(エクストリーム・バリュー)の特徴である。であるから、その第1位の値がいくらかは当事者・関係者にとっては大問題なのである。
確かに、スポーツで優勝と準優勝とは大きな違いである。オリンピックのメダルで金と銀の価値には大きな差がある。ところが、微妙な差で、第三者による判定の結果がそうなったというような場合、当事者はどうしてそうなったのか、理由がわからない場合が多い。しかし、結果は受け入れざるをえない。ここが問題なのである。当事者にしかわからないさまざまな思い・不運・不可抗力などが交錯する。理由が数字には表せないところが問題なのである。異常気象もまったく同じ性質の現象である。
しかし、ある水準以上の現象がどのくらい多いか、広がりをもっているのか、また、どのくらいの期間(年数)をおいて発生しているか、あるいは継続しているか、なども大切な捉え方である。オリンピックの例でいうならば、金銀銅をあわせたメダリストは何人か、あるいは、入賞者数は何人か、水泳に多いか・トラック競技に多いか、前前回・前回に比べて増減はどうか、などの捉え方が大切なことは理解していただけるだろう。異常気象についてもまったく同じで、その影響評価・対策にはこういう知識が必要なのである。
影響でも同じことがいえる。人体への影響も、実験室内で行う生理学的影響だけでなく、人間は社会生活を営んでいるのだから疫学的な把握が重要である。また、医療行為が生活環境として重要であるし、精神生活の在り方、生活パターンまでが関係する。ひとつの例だが、最近の新聞が報じたところによると、「去る8月の猛暑日、都会のマンションの一室で、独り暮らしのお年寄りが熱中症で死亡していた…」という。このお年寄りはクーラーが嫌いで、スイッチをいれておらず、しかも、窓を閉めきっていたという。マンション生活者の近所付き合い不足・高齢者の新しい生活パターンへの適応力減・高齢者が自閉症的になりがちなことなどが、この猛暑被害者の場合顕著であった。異常気象は、人の精神状態までも影響し、犯罪・殺傷事件・放火・自殺の件数も増加する。
このような異常気象の実態とその影響について述べたい。「正常」な気象を理解するためにも、役立つことを願ってやまない。
2010年9月
吉野正敏
【目次】
第1章 序章
1.1 異常気象とは何か
1.2 地球温暖化時代の異常気象
第2章 熱波・異常高温・ヒートアイランド
2.1 熱波
2.2 異常高温
2.3 インドの熱波
2.4 中国の異常気象と異常高温
2.5 熱波による死者数
2.6 都市のヒートアイランドと異常高温
第3章 台風・サイクロン
3.1 台風
3.2 南大東島の異常気象
3.3 台湾の台風
3.4 東南アジアの台風
3.5 ミャンマーのサイクロン
第4章 雨と洪水
4.1 降水量と長期変動
4.2 梅雨の異常化
4.3 世界と日本の洪水
4.4 アメリカ中西部の洪水
4.5 神話と異常気象
第5章 寒波・冬の低気圧・冬の雷
5.1 寒波?2009年1月?
5.2 アジアの寒波
5.3 アイスランド低気圧
5.4 雷雨活動
5.5 冬の雷
第6章 山の雪・平野の雪
6.1 初冠雪
6.2 偏形樹と風雪
6.3 異常豪雪?多雪期間か最大積雪深か合計降雪量か?
6.4 雪形と異常気象
6.5 北アメリカの五大湖と雪
6.6 地ふぶき
第7章 干ばつ・冷夏・霧
7.1 オーストラリアの干ばつ
7.2 食糧自給率と異常気象
7.3 盆地の霧
第8章 植物季節
8.1 お花見
8.2 花の異常季節
8.3 ススキの季節異常
8.4 紅葉の異常
第9章 突風・竜巻・木枯らし
9.1 突風
9.2 竜巻
9.3 木枯らし
(気象図書)
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