水圏環境リテラシープログラム 水圏環境教育の理論と実践


978-4-425-88521-3
著者名:佐々木 剛 著
ISBN:978-4-425-88521-3
発行年月日:2011/4/11
サイズ/頁数:A5判 224頁
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 近年、水産資源の減少、海洋汚染、海底資源の問題等々を背景に、海や川・湖といった水に占められている部分(水圏)の重要性が認識されるようになった。一方で、我々が直接目にすることのできない水圏に関する理解・認識は未だ低いと言わざるを得ない。
 2007年に制定された海洋基本法では、国民の海洋に対する理解を推進することが明記され、水圏環境の総合的な理解を推進するリーダーを養成するためのプログラムがスタートした。本書では、著者と東京海洋大学が推進する「水圏環境リテラシー教育推進プログラム」を中心に、水圏環境教育とは何か?水圏環境リテラシーとは何か?そして水圏環境言教育のリーダーのあり方と今後の水圏環境教育の方向性について、豊富な事例を交えて提示する内容となっている。

【はじめに】より  地球の環境は物理的状態から、気圏、陸圏、水圏に分ける事ができる。気圏には我々の呼吸に不可欠な酸素が存在し、陸圏は私たちに生活場所を与え、水圏には水が存在する。いずれも無視できない環境であるが、中でも水圏に存在する水は、気圏、陸圏、水圏を循環し、地球上のほとんどの生命にとって不可欠な物質である。
 太陽から々距離にある月と地球の表面温度を比べてみよう。太陽に照らされる付きの表面は+100度、逆に太陽が当たらない面ではマイナス150度になる。一日に250度も変化することになる。一方、地球は平均温度が15度と安定している。なぜこのような違いが生じるのか? その理由は、水の存在にある。水は約70%の地球表面を覆い地球の温度を安定化させる働きがある。また、水圏は飲料水、農業用水、工業用水を提供するばかりでなく、水産資源の供給や舟運の場としても重要な役割を果たす。世界4大文明は、ナイル川、黄河、チグリス・ユーフラテス川、インダス川の大河のもとに築かれた。現在も多くの都市は河川流域、沿岸域に集中している。このように水圏は地球環境を一定に保ち、私たちの日常生活や産業の基盤となる大切な環境である。
 ところで、環境とは「人間や生物のとりまき、それと相互作用を及ぼし合うものとして見た外界」(広辞苑)と定義される。この定義を踏まえると、本書で扱う水圏環境とは「人間をとりまき、人間と相互作用を及ぼしあるものとしてみた水圏」ということになる。
 近年、水産資源の減少、海洋汚染、地下水汚染等深刻な水圏環境問題が発生している。水圏環境の諸問題は、私たちが普段目に触れることができないケースが多く、いつの間にかその悪影響が他の地域や国へ拡大し、次の世代に禍根を残すことになる。
 しかしながら、このような水圏環境の重要性や問題を認識できる機会を私たちは十分に持っていない。その上、水圏環境教育を支えるリーダーが決定的に不足している。
 こうした中、2007年に海洋基本法が制定され、国民の海洋に関する理解を推進することが明記された。これを受け、国民の水圏環境の総合的な理解を推進する「水圏環境教育推進リーダー」の養成が、水圏環境リテラシー教育推進プログラムとしてスタートした。本書では、水圏環境教育とは何か? 水圏環境リテラシーとは何か? そして望まれる水圏環境教育のリーダーのあり方と今後の水圏環境教育の方向性について提言した。

平成23年3月31日
著者

【目次】
第?部 水圏環境教育の理論
第1章 水圏環境教育とは何か?
 1-1 水圏環境リテラシーとは何か?
 1-2 水圏環境教育とは何か
 1-3 水圏環境教育の原理としての「ラーニングサイクル理論」
 1-4 ラーニングサイクル理論に基づいた学習者主体の教育
 1-5 ラーニングサイクル理論の誕生
 1-6 「最近接発達の領域」理論の視点からのラーニングサイクル理論
 1-7 脳科学の視点からのラーニングサイクル理論
 1-8 水圏環境(沿岸・河川流域等)における内発的発展
 1-9 総合的な学習の時間、課題研究、探求活動
 1-10 「探求活動」を支援するための環境整備

第2章 水圏環境リテラシーの視点  2-1 水圏環境問題の深刻化
 2-2 水圏環境との距離感の拡大
 2-3 科学的な考え方と科学的理解の推進
 2-4 伝統的エコ知識の再認識
 2-5 広い見識に基づいた責任ある決定や行動
 2-6 水圏環境の学びを人々に伝える工夫

第3章 我が国における水圏に関する教育の現状  3-1 日本の水圏に関する教育の特徴
 3-2 専門教育としての水産教育の役割
 3-3 学校教育における水圏に関する教育の取り扱い
 3-4 水産海洋系高校以外の水圏に関する学校教育機関
 3-5 社会教育における水圏に関する教育
 3-6 持続可能な水圏環境とするための水圏環境教育的アプローチ
  コラム 日本における水産教育のあゆみとこれから

第4章 諸外国における水圏に関する教育  アメリカ合衆国
 フランス共和国

第5章 水圏環境リテラシー教育推進プログラム  5-1 共通理解のための基準の必要性
 5-2 水圏環境に関する基本原則を作成する
 5-3 アメリカにおけるオーシャンリテラシー
 5-4 日本における水圏環境リテラシー構築の経過
 5-5 「水圏環境リテラシー教育推進プログラム」

第6章 水圏環境教育の推進に向けて  6-1 水圏環境教育の推進に関わる法律
 6-2 プロフェッションとしての水圏環境教育推進リーダーを目指して
 6-3 アメリカ合衆国におけるシーグラントカレッジの取り組み
 6-4 水圏環境教育推進リーダーが活躍するためのプラットフォームづくり
 6-5 水圏環境教育の目指すべき方向性

第?部 水圏環境教育の実践研究  Case Study 1 魚類モニタリング活動における道徳・自然教育効果
 Case Study 2 大森ふるさとの浜辺公園を活用した水圏環境教育その1
 Case Study 3 大森ふるさとの浜辺公園を活用した水圏環境教育その2
 Case Study 4 大森ふるさとの浜辺公園を活用した水圏環境教育その3
 Case Study 5 岩手県閉伊川における市民参加型体験学習教材開発と教育実践
 Case Study 6 海藻(コンブ)教材を活用した水圏環境教育
 Case Study 7 港区芝浦アイランドにおける海塾プロジェクト
 Case Study 8 群馬県における水圏環境教育の有効性


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カテゴリー:水産 
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