著者名: | 日本港湾経済学会 編 |
ISBN: | 978-4-425-11181-7 |
発行年月日: | 2011/9/5 |
サイズ/頁数: | B5判 320頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥6,160円(税込) |
歴史から学際的な事柄まで、港湾・空港に関連する用語・知識約1,200項目をわかりやすく解説。理論・政策・実務を体系的に理解できる基本図書。
【はしがき】より
日本港湾経済学会(以下、本学会という)は1962(昭和37)年10月16日?17日に創立総会と第1回研究会が横浜港で開催されて以来、2011(平成23)年度は創設50年という節目の年にあたります。それに先立ち、2007(平成19)年度の第46回全国大会総会(名古屋港;会長・小林照夫)において、海と空という双方の港を包含する事典の刊行が提案・企画され、創設50年記念事業の一環として「海と空の港大事典」を公刊することが決定されました。それにともない、事典ワーキンググループが組織され、また、2009(平成21)年には編集委員会と改組され、事典の刊行に向け、委員会活動を行ってきました。
本学会の創設当時の50年前の1960年代といえば、わが国では港湾機能の不足から「船混み問題」が発生しておりました。これまでの多くの港湾の研究はハードな土木工学的視点が主力であったといえます。しかし、わが国の経済成長を支えるにあたり、とくに、地域開発をはじめ、地域格差の是正などの視点から経済学・社会学・法学などの研究が必要視されるようになったのです。このような事情からも、本学会は、高度成長の幕開けと時を同じく、その時代の要請を受け、また、創設当時の関係各位の情熱が反映され、創設されたことは自明の如くであります。
その創設以来、本学会の研究領域は海の港という単線を研究するだけでなく、空の港をも研究対象とする複線にもとづく学際的研究が続けられてきました。この50年間で蓄積された学会活動の成果、とくに、毎年開催されてきた全国大会、部会による研究発表・討論、また、年報の公刊の諸活動などは、極めて「大きな足跡」があると自負致しております。
ところで、わが国の海と空の港はその時代の要請やその地域のニーズおよび政策課題を受けながら変化・発展してきました。つまり、学会の創設当時と現在、海の港はもちろん、空の港の諸問題も様変わりし、変化しております。この変化には、端的に、わが国の産業構造は「重厚長大から軽薄短小化へ」、立地場所も「臨海工業地帯から臨空工業地帯へ」「港湾都市から空港としへ」、また、政策的課題でも、「貿易立国から観光立国への転換」などへと変貌致しております。さらに、海と空の双方の港では地球温暖化対策に関する環境問題も含まれ、近年、本学会の研究領域は拡大化してきております。たとえば、2011(平成23)年3月11日に東日本大震災が発生し、地震、津波、さらに原発事故で東北地方の沿岸域が壊滅的な打撃を受けましたが、被災地の復旧・復興に関するテーマは今後、本学会の最重要な研究分野になると考えられます。
たしかに、東北地方では大船渡港・釜石港(岩手県)、石巻港・仙台塩釜港・仙台空港(宮城県)、相馬港・小名浜港(福島県)などをはじめ、それら以外にも多数の漁港などが立地しております。今回の東日本大震災でそれらの港の機能が完全ストップし、その結果、地域経済や社会生活がことごとく寸断、麻痺するという異常事態が発生しました。陸海空の交通の要といえる港が機能しないことは現代経済・社会活動のあらゆる部門に大きな打撃を与えました。
このように海と空の港を取り巻く状況変化に対し、正しい知識や理解が必要なことを実感された方々も多かろうと存じます。そのような観点からも、海と空の港が経済・社会・環境・文化面などにおいて果たしている役割や影響力を再認識する必要性があります。本事典は、単にコトバの意味を羅列化し、記述するような「辞典」とは異なり、できるだけ事象・事柄を分析・解明するという「事典」となっております。とくに、本事典は、次のような点に留意し、編集致しました。
1)海と空の双方の港の歴史的な特性、各港内における物の流れ・人の流れに関する諸活動ができるだけ平易に簡潔にまとめてあります。また、各章において関連する口絵を挿入し、写真などからも用語が的確に把握できるように配慮してあります。
2)海上輸送や航空輸送の影響を受け、今日、海と空の双方の港は、一応に規制緩和、自由化が浸透し、また、激しく市場競争の波が押し寄せ、流動的な環境下にあります。最近の産業構造のダイナミックな変化をとらえ、海運・航空輸送の激しい競争状況、海と空の港の経営形態、都市機能の変化などという現代的な諸問題についても学べるように配慮してあります。
3)本事典は海と空の双方の港の「歴史、理論、政策」を踏まえ、港にかかわる総合的、学際的な用語・項目が網羅されております。さらに、国際事情をはじめ、行政、国際機関、各種の関連協会、さらに関連法などをも解説してあり、海と空の港に関する体系的な理解を深めることが可能となります。
以上、一般に港に関する用語や業務は複雑で難解と思われがちですが、本事典はできるだけ、やさしく、容易に理解できるよう、配慮されております。海と空の港の事業にかかわる方々をはじめ、また、港に関心のある学生諸君、さらに、多くの一般市民の方々に対しても、本事典はなにがしかの礎石を与えるものと確信致します。多くの読者から忌憚のなきご意見を頂戴できれば、まことに幸いです。
なお、本事典の刊行に際し、ご尽力賜った78名の執筆者各位には、編集委員会一同、心から感謝申し上げる次第です。編集委員会では、若干、用語の重複・類似している場合、削除や内容を加筆・修正させて頂きました。執筆者のご意向とは異にする部分もあろうかと存じますが、どうかご海容の程、宜しくお願い致します。また、編集委員会の委員各位には、ご多忙にもかかわらず、用語選定や校正の作業などで、会合をたびたび開き、刊行までの長い期間、ご協力を賜り、ここにあらためてお礼申し上げます。
最後に、本事典が発刊できましたのも、(株)成山堂書店会長・小川實氏、同社長・小川典子氏のご好意によるものであり、あらためて感謝を申し上げます。また、編集作業の労をはじめ、適宜なアドバイスを頂戴した同書店編集グループの板垣洋介氏、小野哲史氏に対しても、心から謝意を表する次第です。
2011年8月3日
「海と空の港大事典」編集委員会
委員長 山上 徹
【目次】
第1章 海と空の港の歴史と文化ー日本の海の港の歴史的意義ー
1.海の港の語源と歴史
1.1 みなとの語源
1.2 漁港と港町
1.3 海域と港勢
1.4 海の港の種類
1.5 海の港の歴史
1.6 港の築造と日本人
1.7 港の築造と外国人
2.空の港の航空の歴史
2.1 空の港の歴史
2.2 領空主義
2.3 空の港の種類
2.4 航空の歴史上の偉人
2.5 空の港の距離とアクセス
第2章 船舶と航空機の種類と事故事例ー海運業界の現状と課題、ハブ港の重要性ー
1.船舶の特性と基本構造
1.1 船舶輸送の特性
1.2 船舶の基本的構造
1.3 船舶トン数
1.4 船級
2.船舶の種類
2.1 歴史的な船舶
2.2 船舶一般
2.3 客船
2.4 貨物船
3.船舶の事故事例
3.1 海難
3.2 船舶事故・事件
4.航空機の種類と事故事例
4.1 航空輸送の特性
4.2 航空機の種類
5.航空機のリスク・マネジメントと事故事例
5.1 航空機事故の原因
5.2 航空機事故と着陸
5.3 航空機事故と操縦
5.4 航空機事故と気象・気候
5.5 ハイジャックとテロ対策
5.6 航空機の事故事例
第3章 海運競争と物流システムーアジア地域の経済成長とコンテナ港の競争時代の到来ー
1.海運業の競争
1.1 船舶航路
1.2 海運業の運航形態
1.3 海運業の競争
2.海運と貿易取引
2.1 船積書類
2.2 運賃・料金
2.3 貿易取引
2.4 国際貿易の形態
3.海運と物流システム
3.1 物流業務の基礎
3.2 物流システム
3.3 物流ビジネス
第4章 航空サービスと航空政策ー航空業界の現状と空港(ハブ)の重要性ー
1.航空機サービス
1.1 航空飛行
1.2 航空機の乗組員
1.3 旅客機機内のサービス施設
1.4 機内サービス
2.航空輸送料金と航空旅客運賃
2.1 航空運賃算定の基礎
2.2 航空輸送料金
2.3 航空旅客運賃
3.航空貨物サービスと貨物運賃
3.1 航空貨物サービス
3.2 航空貨物運賃の基礎
3.3 貨物運送関連業者
3.4 航空貨物運送約款
4.航空輸送形態と航空経営
4.1 航空輸送形態
4.2 航空経営
5.航空輸送の自由化と規制緩和
5.1 国際航空輸送の自由化
5.2 日本の航空政策
第5章 海の港の物流・運送事業とハブ港化ー国際物流の現状と日本の港湾への影響についてー
1.海の港の施設
1.1 海の港の基本的機能
1.2 海の港の基礎施設
1.3 海の港の上部構造
2.港の物流施設とビジネス
2.1 コンテナ貨物
2.2 物流基地と倉庫
2.3 中国の経済特区制度
2.4 海の港の情報
3.海の港の労働特性と運送事業
3.1 海の港の労働特性
3.2 海の港の運送事業
4.海の港の経営とオペレーター
4.1 海の港の経営
4.2 ターミナル・オペレーター
5.日本の海の港の整備とハブ港化
5.1 日本の海のハブ港化
5.2 海の港の整備
第6章 空の港の施設とハブ港化ー国際航空貨物輸送の史的発展と日本の空の港ー
1.空の港の施設
1.1 空の港の装置とコード
1.2 旅客ターミナル
1.3 着陸帯
1.4 航空機離着
1.5 旅客用
1.6 貨物用
1.7 対航空機サービス
1.8 空港管理運営用
2.空の港の旅客サービス
2.1 旅客サービス
2.2 搭乗手続き
2.3 到着手続き
3.空の港のスタッフとビジネス
3.1 空の港のスタッフ
3.2 空港内のビジネス活動
4.空の港の施設整備とハブ港間競争
4.1 空港アクセスと交通需要
4.2 空の港の施設整備
4.3 空の港のハブ港間競争
5.空の港の都市と産業立地
5.1 立地条件
5.2 空港都市の形成
5.3 文化施設立地
5.4 産業立地
第7章 海の港の都市開発と観光・集客ー都市の臨海部の再開発による観光・集客力ー
1.都市の観光資源とホスピタリティ
1.1 観光の定義
1.2 観光資源
1.3 観光とホスピタリティ
2.観光形態と集客の都市開発
2.1 観光形態
2.2 観光開発
2.3 空間
2.4 観光・集客の都市開発
2.5 集客施設
2.6 イベント
3.海の港の景観と海洋レクリエーション
3.1 景観
3.2 公園
3.3 海の観光とレクリエーション
3.4 マリン・スポーツ
3.5 クルージング
3.6 船酔いと放置艇
4.大都市のウォーターフロント開発事例
4.1 東京
4.2 横浜
4.3 名古屋
4.4 大阪
4.5 神戸
4.6 地方都市
第8章 海と空の港と環境?東日本大震災の想定外の被災と責任
1.地域規模から地球規模への環境問題
1.1 地域規模の公害
1.2 地球規模の環境破壊
2.環境問題への取組み
2.1 国際機関の取組み
2.2 わが国の取組み
3.海洋の環境問題
3.1 海洋の環境・生態
3.2 海の港の環境への取組み
4.エコ・ビジネスと物流
4.1 企業のエコ・ビジネス
4.2 物流と環境
4.3 観光と環境共生
5.空の港と環境
5.1 騒音
5.2 大気
5.3 空の港と航空業の環境への取組み
6.海と空の港と災害
6.1 海の港と災害
6.2 空の港と災害
第9章 海と空の港の国際事情?アジアのハブ空港競争の現状と課題
1.日本の海の港の事情
1.1 大都市の港
1.2 地方都市の港
1.3 地方港湾と地方の時代
2.アジアの海の港の事情
2.1 韓国の港
2.2 中国の港
2.3 台湾の港
2.4 東南アジアの主要港
3.世界の海の港の集客施設
3.1 北アメリカの集客施設
3.2 ヨーロッパの集客施設
4.世界の海の港の水族館
4.1 北アメリカの水族館
4.2 オーストラリアの水族館
5.空の港の国際事情
5.1 日本の空の港の事情
5.2 アジアの空の港の事情
5.3 北アメリカの空の港の事情
5.4 ヨーロッパの空の港の事情
第10章 海と空の港の行政と機関?21世紀、日本の観光立国と観光行政
1.海と空の行政機関
1.1 主な行政と機関
1.2 海の港の行政
1.3 空の港の行政
2.海と空の港の行政機関と関連協会
2.1 海の港の行政機関と関連協会
2.2 空の港の行政機関と関連協会
2.3 観光に関する行政機関と関連協会
3.海の港と海上輸送に関する条約と国際機関
3.1 国際条約一般
3.2 海の港と海上輸送の国際条約
3.3 貿易における地域協定
3.4 国際機関一般
3.5 海の港と海上輸送の国際機関
4.空の港と航空輸送に関する条約と国際機関
4.1 空の港と航空輸送の国際条約
4.2 空の港と航空輸送の国際機関
4.3 観光の国際機関
第11章 海と空の港に関する法律?海と空の港に関する法制度
1.海の港に関する法律
1.1 基本法
1.2 海難に関する法
1.3 海の港の整備法
1.4 特別措置法
2.物流に関する法律
2.1 外国貿易手続きの法
2.2 埠頭管理運営と物流運送業の法
3.空の港と航空運送に関する法律
3.1 空港にかかわる法
3.2 航空運送の法
4.観光に関する法律
4.1 観光地の整備の法
4.2 観光振興にかかわる法
5.環境に関する法律
5.1 環境保全と活用の法
5.2 環境評価と防止の法
(海事図書)
【読者からの声】
●Fさん
「写真が多く掲載されており、また港湾に関する用語の解説も丁寧でわかりやすい」
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