著者名: | 池田良穂・古川芳孝・片山 徹・勝井辰博・村井基彦・山口 悟 共著 |
ISBN: | 978-4-425-71431-5 |
発行年月日: | 2012/3/30 |
サイズ/頁数: | B5判 184頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥3,960円(税込) |
船舶の基本設計や性能設計に関する定義や用語を丁寧に紹介し、基本的な計算方法を多くの例題と演習を交え解説。
【船舶海洋工学シリーズとは】
船舶海洋技術に関わる科目ごとに、技術者が基本的に学んでおく必要がある事柄を記した基本図書。
公益社団法人 日本船舶海洋工学会能力開発センター教科書編纂委員会 監修 全12巻発行予定。
【まえがき】より
船は巨大で複雑なシステムで、それを構成する部品点数は10万を下らないといわれている。自動車の約3万点に比べても、その多さが際立っている。こうした複雑なシステムが、海に浮き、たとえ大荒れになっても安全な航海を自力で行わなければならない。
このような船を計画・設計し、建造するためには、さまざまな科学技術を駆使する必要があることは論を待たない。かつて、船は、経験に基づく技能によって作られていた。造船が経験工学といわれる所以である。しかし、現代の船づくりは経験に基づく技能だけではとても完成できないレベルまでに昇華し、あらゆる科学技術の動員の場となっている。
本書は、教科書シリーズの第1冊目として、船づくりに携わる造船技術者であれば、必ず身につけておかなければならない船舶算法と復原性についてまとめたものである。
本論の船舶算法と復原性に入る前に、船舶の基礎知識として、船の種類と主要目、そして船独自のさまざまな定義についてまとめている。
さて、船舶算法とは、船舶の設計に必要な排水量をはじめとする重要な諸量を計算する方法である。かつては、計算テーブル(表)に基づいて算盤や計算尺を使って大勢の人々で計算したというが、いまではコンピュータによって短時間に計算ができる時代になっている。しかし、その諸量のもつ物理的な意味を正確に理解し、どのように計算されていて、どのように造船設計に有用なのかを知ることは、コンピュータ時代においてもたいへん大事なことであり、それを正しく理解していてこそ、一人前の造船技術者といえる。筆者が学生の頃、複雑な曲線からなる船の体積や復原力を、長年の造船技術の歴史の中でできあがった、きわめてよく考えられたテーブル(表)を使って計算ができることに感動したものだった。当時は、ようやくメモリー付きの電卓が現れた頃であるが、それを使うとかなり効率よく計算ができた。いまでは、コンピュータがわずか数秒で計算結果を出してくれる。
この船舶算法を使って計算して得られるのが「排水量等計算表」「同図」であり、船の設計のための基本図表である。そこの中には、船の復原力に関する数値もあり、それがメタセンター高さ、すなわちGMである。GMが正であれば安定、負であれば不安定で船は転覆する。学生時代に最初にこれを聞いたときには驚いた。このような簡単な計算で、船が転覆するかどうかを判定できるとは!
しかし、GMが計算できるだけで造船技術者とはいえない。その物理的な意味を理解しておかなくては、さまざまな問題に直面したときに、解決策が見出せないのだ。本書の復原性のパートでは、その原理的な成り立ちをわかりやすく理解できるようになっている。
さらに、船の復原性能を法律面から規定する復原性規則、衝突などで損傷したときの船の安全性を担保する区画・復原性に関する規則についてもその成り立ちから、物理的な背景までをわかりやすく説明している。
本書では、船舶算法や復原性計算に使われている計算手法については、あえて本文中には記載せず、第6章にまとめている。複雑な計算法が入って本文が長くなると、読む意欲が減退するのではないかということを危惧してのことだ。これで、本文はかなり読みやすくなったと思う。使われている詳細な計算法を勉強したいときには、随時、第6章に飛んで、その計算の本質にも触れて欲しい。原理からアプローチをすることは常に大事で、それが本当の実力を養うからだ。
ぜひ、本書を、船と船を造る技術の修得に役立てて欲しいと思う。
【目次】
第1章 船舶の基礎知識
1.1 船の種類
1.1.1 客船
1.1.2 貨物船
1.1.3 作業船
1.1.4 調査船
1.1.5 漁船
1.1.6 軍艦・巡視船艇
1.2 主要目
1.3 諸定義
1.3.1 船型にかかわる用語
1.3.2 船の寸法にかかわる定義
1.3.3 船の容積にかかわる定義
1.3.4 船の重さにかかわる定義
1.3.5 エンジンにかかわる定義
1.3.6 速力にかかわる定義
1.4 単位系
第2章 船型の表現
2.1 主要目比
2.2 肥瘠(せき)係数(Fineness coeffi cient)
2.2.1 方形係数 CB :block coeffi cient
2.2.2 中央横断面係数 CM :midship coeffi cient
2.2.3 柱形係数 CP :prismatic coeffi cient
2.2.4 水線面積係数 CWA :water plane coeffi cient
2.2.5 竪柱形係数 CVP :vertical prismatic coeffi cient
2.3 オフセット表(off set table)、線図(lines)
2.4 3次元曲面による船型表現
第3章 排水量等計算と曲線図
3.1 排水量曲線図の概要
3.2 水線面積と浮面心
3.2.1 水線面積
3.2.2 浮面心
3.3 中央横断面積
3.4 排水量
3.4.1 主部の排水量の計算
3.4.2 下方付加部の排水量の計算
3.5 浮力と浮心
3.5.1 流体中の物体に作用する浮力
3.5.2 浮心
3.5.3 主部の浮心位置
3.5.4 下方付加部の浮心位置
3.5.5 Morrish 式による浮心高さの近似計算
3.5.6 早瀬の近似式による浮心高さの近似計算
3.6 浸水表面積と外板の排水量
3.7 横メタセンター
3.8 縦メタセンター
3.9 毎センチ排水トン数
3.10 毎センチトリムモーメント
3.11 排水量曲線図を利用した諸計算
3.11.1 船首尾喫水から排水量を求める方法
3.11.2 船首尾喫水から重心前後位置を求める方法
3.11.3 重心前後位置から船首尾喫水を求める方法
第4章 復原力の基礎
4.1 船の釣り合いとその安定性
4.2 横復原力と縦復原力
4.2.1 横復原力
4.2.2 縦復原力
4.3 大横傾斜角時の復原力
4.4 上下方向の重心位置KG の求め方
4.5 復原力の変化を表す図表
4.5.1 復原力曲線(Stability curve)
4.5.2 復原力交叉曲線(Cross curves of stability)
4.6 復原性に影響を及ぼす因子
4.6.1 船体諸元・船型等の影響
4.6.2 周囲の環境の影響
4.6.3 積載貨物の移動の影響
4.6.4 貨物の積載の影響
4.6.5 遊動水(Free water)の影響
4.6.6 懸垂貨物(Suspended cargo)の影響
4.6.7 粒状貨物の影響
第5章 復原力の応用(船舶復原性)
5.1 動復原力(dynamical stability)
5.1.1 動復原力の考え方
5.1.2 具体的に横揺れについて動復原力を考える
5.1.3 非減衰自由振動系での力の釣り合いとエネルギー保存
5.1.4 非減衰自由振動系として扱う場合の釣り合い横傾斜角と最大横傾斜角
5.2 復原力計算結果を用いた転覆の判定(非損傷時波浪中復原性)
5.2.1 非損傷時復原性基準weather criteria の考え方について
5.2.2 非損傷時復原性基準weather criteria の詳細
5.3 損傷時確率論的復原性基準とは
5.3.1 浸水時復原力曲線
5.3.2 確率論的考え方
5.3.3 確率論的損傷時復原性(SOLAS CHAPTER II)の要点
5.3.4 浸水計算と生存確率si
5.3.5 区画への浸水発生率pi の考え方
5.3.6 一区画の浸水発生率pi の算出
5.3.7 隣接する複数区画浸水発生率pi の算出法と特性三角形
5.3.8 要求区画指数(Required subdivision index)R
第6章 関連する基礎理論と諸定理
6.1 幾何学的諸量の計算
6.1.1 面積(Area)の計算
6.1.2 面積の重心と面積1 次モーメント(Moment of area)
6.1.3 面積の2 次モーメント(Moment of inertia of area)
6.1.4 体積(volume)
6.1.5 体積の1 次モーメント(Moment of volume)
6.1.6 体積の重心(Center of gravity of volume)
6.1.7 体積の2 次モーメント(Moment of inertia of volume)
6.1.8 面積の移動(重量の移動)
6.1.9 面積の付加あるいは除去(重量の付加あるいは除去)
6.1.10 曲面積
6.2 数値積分法
6.2.1 補間法
6.2.2 近似積分法
6.3 Euler の定理
6.4 Leclert の定理
6.5 3 次元サーフェスの表現法
6.5.1 Coons Patch
6.5.2 NURBS
(海事図書)
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