著者名: | 独立行政法人 海技教育機構 編 |
ISBN: | 978-4-425-41432-1 |
発行年月日: | 2022/9/28 |
サイズ/頁数: | B5判 192頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥2,640円(税込) |
世界最大級の帆船、日本丸と海王丸の仕組みと運航技術を1冊に収録。マスト、帆、ロープの詳細な図解で複雑に見える帆船の構造を理解できる。帆走理論、航法などの専門知識を現役の航海士が丁寧に解説。
【はじめに】より
本書の基になった帆船操典の作成は昭和37年にまで遡ります。当時の日本丸船長であった千葉宗雄教授が主として執筆された原稿をもとに帆船操典の初版を発行し、その後「高所及び帆船作業指針」(昭和38年3月)、「帆船操典(追録)」(昭和41年3月)を加え、昭和42年2月、実習上の便宜を図るため本文と付図の2分冊として発行しました。昭和62年3月、日本丸二世の誕生や当所において運航士教育が開始されたのを機に、内容をより精選して付図を合冊としたものを作成し、これが現在ある帆船操典の原型となりました。
平成16年10月20日、富山沖で起きた海王丸座礁事故を反省するとともに、それを教訓に帆船操典の安全運航に係る項目を増補し、その構成を全面的に見直し、現在に至っています。
本書は練習船日本丸及び海王丸の安全かつ確実な運航を期するために最も適切と思われる帆走法や運用法を述べていますが、他の帆船にも利用できるよう基本的な内容を多く掲載しました。また、写真や図版を多く取り入れ、一般船舶の運用書として使用できるよう下記のような工夫をしました。
(1)帆走理論から始まり、帆船操船の実際へと展開する構成としました。
(2)第1章帆走理論及び第2章帆船操船法では、写真及び図版を大幅に増やし理解しにくい
帆走理論や操船法をできる限り容易に理解できるように工夫しました。
(3)第6章緊急操船法では、熱帯低気圧からの避航法を加えました。
(4)守錨基準を全面的に書き直し荒天避泊法とその限界を明示し、第8章荒天遭遇例には
日本丸走錨事例と海王丸座礁事故例を加え、それらを教訓とし、船長や航海士のため
の避泊指針としました。
(5)側注を設け、できる限り本文近くに関係する図面等を配置することによって、読み易さを
向上させました。
この度、広く一般に出版することで、より多くの皆様に本書を手に取って頂き、帆船の訓練や船員教育、さらには船員の活躍の場である海運について興味を持ち、ご理解頂けることを願うものです。
2013年3月
「帆船 日本丸・海王丸を知る」編集者、執筆者一同
【改訂版発行にあたって】
本書は初版発行から9 年が経過しました。この間、陸上作業現場においては高所作業における墜落制止用器具として「フルハーネス型」を使用することが原則となり、安全対策に関する規則が大きく変わりました。帆船における高所作業においても、これに準じ同様の安全対策を講じることとして、今般、「安全用具、安全対策」について全面的に見直しを行うとともに、収録内容の情報を更新し見直しを行いました。
本書が引き続き、帆船実習に取り組む学生・生徒の安全確保に役立つことはもちろん、帆船実習を担う全ての乗組員の知識と技量の向上のための大きな一助となること期待します。
2022年9月
「帆船日本丸・海王丸を知る」編集者、執筆者一同
【目次】
1 帆走理論
1.1 帆が生み出す力
1.1.1 帆の周囲の流れ
1.1.2 帆が生み出す力
1.2 帆の推進力
1.2.1 推進力と相対風向
1.2.2 帆が生み出す力と相対風速
2 帆船操船法
2.1 基本走法
2.1.1 風速と船速
2.1.2 速力率曲線
2.2 Yard の開き方
2.2.1 Full and By
2.2.2 Reaching
2.2.3 Running
2.2.4 最適なYard trim
2.3 操船法
2.3.1 Tack の選び方
2.3.2 上手回し(Tacking)
2.3.3 下手回し(Wearing)
2.3.4 下手小回し(Boxhauling)
2.3.5 踟ちゅう(Heave to)
2.4 帆走と大気現象のスケール
2.4.1 大気現象のスケール
2.4.2 帆走航海計画
3 日本丸及び海王丸の帆装艤装
3.1 船体構造
3.1.1 船体構造概略
3.2 帆及び動索
3.2.1 帆
3.2.2 動索の種類
3.2.3 横帆と動索との関係
3.2.4 縦帆と動索との関係
3.2.5 動索配列及び経路
4 帆船の高所作業
4.1 一般原則
4.1.1 安全の確保
4.1.2 注意力の維持
4.1.3 体重と握力
4.1.4 静索(standing rigging) と動索(running rigging)
4.1.5 足場の確認
4.1.6 他者への注意と配慮
4.1.7 共同作業
4.1.8 風上と風下
4.1.9 落下防止
4.1.10 号令と復唱
4.1.11 シップシェイプ(ship shape)
4.1.12 確実な艤装
4.2 安全用具
4.3 登檣の一般原則
5 帆の取付け及び取外し
5.1 一般的注意
5.2 用具の使用法
5.3 帆の点検
5.4 帆の引き上げ及び取付け
5.4.1 横帆の引き上げ及び取付け(Course 以外)
5.4.2 Course の引き上げ及び取付け
5.4.3 横帆取付け時の注意事項
5.4.4 縦帆の引き上げ及び取付け
5.4.5 縦帆取付け時の注意事項
5.4.6 擦れ止めの取付け
5.5 帆の取外し及び降下
5.5.1 横帆の取外し及び降下
5.5.2 縦帆の取外し及び降下
5.5.3 帆の取外し及び降下時の注意事項
5.6 Bending 及びUnbending sail 実施方案
5.6.1 Bending sail 実施方案例
5.6.2 Unbending sail 実施方案例
6 操帆作業
6.1 基本動作
6.1.1 号令及び用語
6.1.2 Gear 取扱いの基本動作
6.2 解帆・展帆・絞帆・畳帆
6.2.1 Coil down 及びCoil Up
6.2.2 横帆の作業
6.2.3 縦帆の作業
6.2.4 解帆及び畳帆の号令・操作
6.3 適帆
6.3.1 Yard のtrim
6.3.2 帆のtrim
6.3.3 全体のバランス
6.4 操帆の実際
6.4.1 Tacking
6.4.2 Wearing
6.4.3 Boxhauling
6.4.4 Heave to
7 航海当直
7.1 帆走航海当直の体制
7.2 当直員の定常業務
7.3 当番員の業務
7.4 当直交代
7.4.1 交代の準備
7.4.2 交代
8 緊急操船法
8.1 荒天の察知
8.1.1 Squall の予知とその対処
8.1.2 逆帆からの脱出
8.2 熱帯低気圧からの避航
8.2.1 右半円と左半円
8.2.2 避航操船( 北半球)
8.2.3 漂ちゅう Lying to
8.2.4 荒天順走 Scudding
8.2.5 減帆及び増帆時機の目安
9 荒天避泊及びその限界
9.1 荒天避泊
9.2 荒天避泊の判断
9.3 計算例
10 荒天遭遇例
10.1 荒天避泊例
10.1.1 岸壁係留状態による台風避泊例- 1989 年、内地接岸中-
10.1.2 日本丸走錨例- 2004 年、内地仮泊中-
10.1.3 海王丸座礁例- 2004 年、内地仮泊中-
10.2 荒天避航例
10.2.1 台風の中心に巻き込まれた例- 初代海王丸 、1940 年-
10.2.2 総帆逆帆となった例- 日本丸、1999 年度冬期航海-
10.2.3 連続して低気圧に遭遇した例- 海王丸、2002 年度冬期航海-
10.2.4 気圧降下が激しい低気圧の例- 日本丸、2003 年度夏期航海-
11 帆装艤装の保存手入れ
11.1 Mast, Yard 及び各Gear の点検・手入れ
11.1.1 点検の組織及びその実施
11.1.2 点検の要点
11.1.3 点検時期
11.2 具体的な整備
11.2.1 Mast, Yard の拭取り
11.2.2 Mast, Yard の塗装
11.2.3 静索のBlack down (Tarring)
11.2.4 高所作業の安全対策
11.3 実施要領
11.3.1 Mast,Yard 拭取り実施要領例
11.3.2 Mast, Yard 総塗装実施要領例
11.3.3 静索Black Down 実施要領例
12 付図
12.1 一般配置図
12.2 静索(Standing Riggings)
12.3 Mast
12.3.1 Mast
12.3.2 Bowsprit
12.4 Yards, Boom and Gaffs
12.4.1 Yards
12.4.2 Spanker boom and Gaffs
12.5 Belaying pins
12.5.1 Fore Mast Fife rail and Pin rail
12.5.2 Main Mast Fife rail and Pin rail
12.5.3 Mizzen Mast Fife rail and Pin rail
12.5.4 Jigger Mast Fife rail and Pin rail
12.6 Deck Links
12.7 Sailing Performance
12.7.1 Tacking
12.7.2 Wearing
12.7.3 Heave to
12.8 Track Chart
12.8.1 Winter
12.8.2 Summer
12.9 日本丸と海王丸の要目
13 その他
13.1 登檣礼実施要領
13.2 海王丸捨錨要領
13.3 Yard 開き及びBoom 振り出しの目安
書籍「航海訓練所シリーズ 帆船 日本丸・海王丸を知る(改訂版)」を購入する
カテゴリー: