著者名: | 廣田道夫・白木正規・八木正允 編著 |
ISBN: | 978-4-425-51321-5 |
発行年月日: | 2013/4/16 |
サイズ/頁数: | A5判 250頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥3,960円(税込) |
異常気象など気象に起因する自然災害や、地球温暖化など地球環境問題に関連して、気象や大気に関する社会の関心が以前にも増して高まっている。このような状況に対応して関連する書物が多数出版されているが、対流圏と成層圏を対象とした高層大気の観測については、専門的な内部資料が多く、一般向けに詳しく解説したものは少ない。
本書は、高層大気の物理的・化学的な基礎に加えて、高層大気の観測にも重点を置いて、全体を大きく3部にわけて解説した。 第1部は高層大気の物理的な基礎のほか、高層天気図の見方、身近な気象現象のメカニズムなど応用的な分野についても解説。第2部では成層圏オゾンを中心とした大気化学の基礎について、第3部では高層大気の観測方法や観測網について解説。
【はじめに】より
近年多発する異常気象や気象災害などを通して、また地球温暖化やオゾン層破壊などの地球環境問題に関連して、気象や大気に対する社会の関心が極めて高まってきています。このような状況に対応して、最近、気象学や大気科学に関する様々の書物が多数出版されていますが、対流圏と成層圏を対象とした高層気象の観測については、個々の専門的な内部資料が多く、一般向けに比較的詳しく解説したものは少ないように思われます。
本書は、高層気象の物理学的・化学的な基礎に加えて、高層気象の観測にも重点を置いて、全体を大きく3部に分けて解説します。
第1部は第1章から第6章までで、大気の組成・鉛直構造、放射、熱力学、力学など高層気象の物理的な基礎について、さらに高層天気図の見方、身近な気象現象のメカニズムなど応用的な分野についてもわかりやすく解説します。第2部は第7章が対応し、成層圏オゾンを中心に据えて、大気化学の基礎について解説します。第3部は、この本の一つの重点とした高層気象の観測方法や観測網について、第8章と第9章で解説します。従来のラジオゾンデ観測が、国内ではGPS方式に切り替えられ、さらにゾンデによる現場観測から人工衛星やウィンドプロファイラーなどのリモートセンシング観測手法に移行しつつある最近の観測技術について、比較的詳しく解説します。なお、大気中の降水粒子の観測に関わる気象レーダー観測については、ページ数の関係から割愛しました。
本書は、気象学、大気の物理学および化学の関心を持つ学生、気象技術者、気象予報士あるいはそれらを目指す方々など、高層気象の科学的基礎と観測技術について学ぼうとされる方々を対象にしています。ただ、複数の著者による分担執筆のため、各項目で難易や精粗が生じているところもあります。また、本書の執筆を終えた現在でも、高層気象に関する観測技術やそれらの成果をもとにした応用的な分野はめまぐるしく進歩しています。これらの部分について、十分に解説できたどうか、大いに不安が残っていますが、本書が高層気象に関心をもつ読者のみなさまのお役に立つことを、著者一同、心から願っています。
平成25年3月
編著者 廣田道夫
白木正規
八木正允
【目次】
第1章 大気の組成
1.1 大気組成
1.2 大気組成の人為的変化
第2章 大気の鉛直構造
2.1 対流圏
2.2 成層圏
2.3 中間圏
2.4 熱圏
2.5 気温の高度・緯度分布
2.6 均質圏および非均質圏
2.7 オゾン層
2.8 電離圏(電離層)
2.9 標準大気
第3章 大気における放射
3.1 放射の物理法則
3.2 太陽放射と太陽定数
3.3 地表面で受ける太陽放射
3.4 放射の散乱
3.5 放射の吸収
3.6 太陽放射の反射
3.7 放射エネルギー収支
3.8 放射平衡温度と温室効果
第4章 高層大気の熱力学(雲の物理過程を含む)
4.1 大気熱力学の基礎式の概略
4.2 状態方程式
4.3 熱力学の第一法則
4.4 乾燥断熱変化と温位
4.5 湿潤断熱変化と相当温位
4.6 高層大気の安定度・潜在不安定・対流不安定
4.7 高層大気中での蒸発と凝結
4.8 雲と降水粒子の生成
第5章 高層大気の運動
5.1 質点の運動の法則
5.2 大気の運動の法則
5.3 大気大循環
5.4 低気圧と高気圧
5.5 成層圏大気の運動
第6章 高層気象の解析・監視と予報
6.1 天気図解析と高層気象観測の始まり
6.2 高層気象観測結果の表現と解釈
6.2.1 高層気象観測に現れる代表的大気現象
6.2.2 高層気象観測に現れる大気現象のメカニズム
6.3 高層気象観測資料の数値予報への利用と情報の改善
6.3.1 数値予報の方法と各種観測資料の高度利用
6.3.2 予想資料の加工と利用
6.3.3 航空気象への利用
6.3.4 情報の提供
第7章 大気化学−オゾンを中心として−
7.1 成層圏オゾン(オゾン層)の生成
7.1.1 純酸素機構
7.1.2 オゾン消滅触媒反応サイクル
7.1.3 地球大気成分の循環とバランス
7.2 観測されたオゾン分布と輸送効果
7.2.1 観測されたオゾン分布
7.2.2 子午面平均循環
7.2.3 輸送の効果
7.3 オゾン層破壊
7.3.1 オゾンホールと世界のオゾン減少
7.3.2 オゾン層破壊の予測と対策
7.3.3 オゾン層破壊のメカニズム
7.3.4 北極域のオゾン減少
7.3.5 極域以外のオゾン減少
7.4 対流圏オゾン
7.4.1 対流圏の化学過程
7.4.2 対流圏オゾンの観測
7.4.3 対流圏化学過程の気候・環境との関係
第8章 高層気象観測およびオゾン観測
8.1 気球を使用する高層気象観測
8.1.1 レーウィンゾンデ観測
8.1.2 レーウィン観測
8.1.3 その他の主なラジオゾンデ
8.1.4 パイボール観測
8.1.5 係留気球観測
8.2 新しい測位方式(GPS方式)を利用した高層気象観測
8.2.1 GPSゾンデ
8.2.2 GPS気象学
8.3 気象ロケット観測、航空機による観測
8.3.1 気象ロケット観測
8.3.2 航空機による観測
8.4 リモートセンシング
8.4.1 ウィンドプロファイラー観測
8.4.2 ライダー観測
8.4.3 ソーダ―観測
8.4.4 マイクロ波放射計観測
8.5 気象衛星観測
8.5.1 衛星の軌道
8.5.2 地球観測センサーの種類
8.5.3 大気の観測に用いられる主なセンサー
8.6 オゾン観測
8.6.1 ドブソン分光光度計によるオゾン観測(全量および反転)
8.6.2 ブリューワー分光光度計による観測
8.6.3 オゾンゾンデによる観測
8.6.4 オゾンライダー
8.6.5 ミリ波分光計
8.6.6 衛星観測
8.7 オゾン関連微量成分の観測
第9章 観測網(日本・世界)
9.1 高層気象観測網
9.1.1 ラジオゾンデによる高層気象観測網
9.1.2 ウィンドプロファイラー観測網
9.2 世界気象衛星観測網
9.2.1 各国の気象観測衛星
9.3 オゾン観測網
9.3.1 世界気象機関の全球大気監視
9.3.2 大気組成変化検出国際ネットワーク
9.3.3 衛星観測
9.4 オゾン関連微量成分の観測網
(気象図書)
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